生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1368.お守りの花は

 ケイリーさんは何の説明もなく差し出されたハルの持つお守りを、まじまじと見つめてから尋ねた。

「ハル、見事な細工だが…これは?」
「これは縁があって父さんに渡そうと預かってきた、こどもたちが想いを込めて作ってくれた手作りのお守りなんだ」

 そう前置きをしたハルは、市場を通過中にたまたま声をかけてきた屋台の店主がいた事、そこの店主のこどもたちが遠征の参加者にお守りを渡せなくてがっかりしていた事を話し始めた。

 時間があまり無いから、もちろん話してる内容は色んな所をかなり端折ったものなんだけどね。

 だってさすがにそこの屋台の店主が娘とお揃いのひらひらのエプロンを着ていた事とか、そこの屋台で売ってた乾燥果物が美味しかった事とか、お兄ちゃんが渡しに行ってて妹ちゃんは最初からそこにいた事とかは、話し出すと絶対に長くなるもんね。

 もし俺が説明する役なら、ウルちゃんの可愛らしさとネスくんの優しさについても、たっぷり時間を取って話したいぐらいだけど。

「そのこどもたちが、これほど繊細なものを…?すごいな…」

 驚いた顔でそう呟いたケイリーさんの言葉に興味をそそられたのか、ファーガスさんとマチルダさんはひょいっとハルの手の中を覗き込んだ。

「なるほど、これはたしかに見事な出来栄えだな」
「想いが込められているっていうのは、こういう意味か」

 マチルダさんの何かに納得したような反応に、俺はゆるりと首を傾げた。ウルちゃんとネスくんの想いが込められたお守りだっていうのは俺も同意見なんだけど、こういう意味って見ただけで分かるの?

 不思議に思った俺が口を開くよりも前に、キースくんがはいっと元気に声をあげた。

「ハル兄、僕も見たーい!」
「ああ、キースからは見えなかったな。悪かった」

 ハルはそう言うなり、すっとその場にしゃがみ込んだ。キースくんに向かって片膝をついたその姿に、周囲から感嘆の息が漏れた。

 うん、分かってたけど、ハルもやっぱり注目される側なんだな。

「あ、これって…チャノレオの花だよね?」

 そう尋ねたキースくんに、ハルはすぐにこくりと頷いた。あの花はチャノレオっていうのか。綺麗な花だなとしか思ってなかったよ。

「さすがキース、よく知ってるなー俺は花の見た目だけだと、チャノレオって分からないよ」

 苦笑しながらそう言って笑っているウィリアムさんの隣では、ジルさんがたしかにこれはチャノレオの花ですねと納得顔で頷いている。

「ううん、すごいのはこれを作った子たちだよ!見たら分かるぐらいに、図鑑の絵に似てるからね!」

 キースくんはそう言いながらも、さらにお守りに顔を近づけて真剣な目で見つめている。よっぽど気に入ったのかな。

 それにしても――不思議に思ってすぐに聞かなくて、良かったのかもしれない。

 ウィリアムさんは花の見た目だけでは分からないって言ってたけど、すくなくともそのチャレオって花の事は知ってるみたいだった。

 ケイリーさんもファーガスさんも、知らない人の反応じゃなかったもんね。

 という事は、これはこの世界の一般常識ってやつなのかもしれない。

 もしうかつに聞いてたら、近くにいる人たちからなんでそんな事も知らないんだって思われてたかもしれないって事だよね。

 気にはなるけど後で聞こうかなと思っていたんだけど、ハルはパッと一瞬だけ俺を見てから口を開いた。

「キース、見た目だけじゃなくて、図鑑に載ってた詳しい説明もしっかり覚えてる?」
「うん、もちろんだよ」

 にっこりと笑ったキースくんは、何なら確認する?とさらりと続けてから答えを待たずに口を開いた。

「花の名前はチャノレオ。現在も採取する事が可能な薬草の中では、最上級の効果があるとされている。これがあれば、瀕死の者でも簡単に治す事ができる」

 え、そんなすごい薬草があるの?初耳なんだけどと驚いたけど、今は反応しちゃ駄目だよね。

 俺は表情を変えないように気を付けながら、じっとキースくんを見つめた。

「この薬草の面白い所はねー見た目はかなり広く知られているのに、幻に近いぐらい採取する事が難しい素材って所なんだよね」
「ああ、完璧だな」
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