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1372.自動販売機のような
周囲を見渡してみれば、こちらを気にしている人は多かった。
マチルダさんに見惚れている人たちもいれば、そわそわと話しかけたそうにジルさんを見つめている人たちもいる。二人とも人気者だな。
そうそう、キースくんをちらちら見ながら、『大きくなられましたな』『本当に』なんて会話をしている人たちもいたな。まるで孫の成長を喜ぶ、お爺ちゃんみたいな反応だ。まあキースくんは見た目も中身も可愛いから、そうなるのも仕方ないとは思うけどね。
周りを領主一家のみんなに囲まれてるから、俺の事を見ている人もいたんだけど――もしかしてあの方がハロルド様の伴侶候補なんだろうかって話しが多かったよ。
まだ解散しようとしない周囲の人たちを何となく眺めていると、マチルダさんが」不意に口を開いた。
「さて、ジル、キース、アキト。あなたたち三人に一つ提案があるのですが…」
うん、まだ違和感はあるけど、丁寧な口調のマチルダさんにもだいぶ慣れてきた気がする。いや、これは俺たちにしか見えない目だけは、悪戯っぽく笑ってるからかもしれないな。
「はい」
「はーい!」
「なんでしょう?」
ジルさん、キースくん、俺が三人揃って答えれば、マチルダさんはにっこりと艶やかに笑いながら続けた。
「ファーグから、ここから領主城までの帰り道はウマでは無く、あそこの馬車を使って欲しいと言われているのですが…みなさんも、ご一緒にどうでしょう?」
え、馬車?馬が一台通るのも精一杯なぐらい、あんなにたくさんの人が集まってるのに?
驚きつつもマチルダさんが指差した方を向いてみれば、そこには確かに自動販売機ぐらいの大きさの箱とそれを引くための馬の姿があった。
「え…?」
自動販売機サイズの箱の底には、大きな車輪が四つ並んでいるのが見える。あれが馬車?いや、馬車と言えば…馬車…なのかな?
「んー?変わった形、だね?」
キースくんは戸惑いつつも、好奇心が疼いたらしい。今は興味深そうに、まじまじと馬車を観察している。
「…これは…?」
ジルさんはそう尋ねながらも、不思議な形の馬車から少しも目を離さずにいる。いや離せずにいる――かもしれないな。
マチルダさんは戸惑いを隠せなかった俺達三人の反応に、楽し気に声をあげて笑い出した。あ、もちろんあくまでも品は良く、貴族のお姫様っぽい笑い方で…だけどね。
それにしても、人目があるからってちゃんと笑い方まで変えられるなんて、マチルダさんってすごく器用だと思う。
「みなさん、戸惑い過ぎですよ」
笑いまじりにマチルダさんはそう言うけど、これはどう考えても戸惑うよね。
だってあの細長い自動販売機みたいな馬車の形は、どう考えても人が一人乗るのが精一杯だと思うんだよね。
いや、でももしかしたらマチルダさんと体の小さいキースくんなら、二人一緒に乗れる可能性も――ちょっとぐらいはあるかもしれない。限りなくゼロに近いけど。
「急にそんな事を言われれば、戸惑いますよ」
苦笑しながらそう返したジルさんは、もう一度まじまじと馬車を見つめた。
「まさか…あの馬車は…?」
ジルさんには、思い当るような何かがあるらしい。
「ジル、まだ話さないでくださいね?」
「話しませんが…ああ、見て驚いて欲しいんですね?」
「ええ、せっかくの馬車ですから」
マチルダさんとジルさんがそんな会話をしている隣で、俺とキースくんはまだ馬車を見つめていた。
だってあんな細長い形の馬車なんて見た事が無いからね。気になって仕方ないんだ。
たぶんあの馬車の形だと、ほぼ立ってる姿勢で乗る事になると思うんだ。
その予想が当たっているとしたら、揺れる馬車の中でずっと立った姿勢でい続けるのは、かなり大変なんじゃないかな。
もしかしたらこれは普通の馬車だとあの人がいっぱいの狭い道を進めないからって、今日のために特注でファーガスさんが作らせたものとかなのかもしれないな。
その理由はきっと、マチルダさんをこれ以上他の人に見せないためなんだろうな。
マチルダさんに見惚れている人たちもいれば、そわそわと話しかけたそうにジルさんを見つめている人たちもいる。二人とも人気者だな。
そうそう、キースくんをちらちら見ながら、『大きくなられましたな』『本当に』なんて会話をしている人たちもいたな。まるで孫の成長を喜ぶ、お爺ちゃんみたいな反応だ。まあキースくんは見た目も中身も可愛いから、そうなるのも仕方ないとは思うけどね。
周りを領主一家のみんなに囲まれてるから、俺の事を見ている人もいたんだけど――もしかしてあの方がハロルド様の伴侶候補なんだろうかって話しが多かったよ。
まだ解散しようとしない周囲の人たちを何となく眺めていると、マチルダさんが」不意に口を開いた。
「さて、ジル、キース、アキト。あなたたち三人に一つ提案があるのですが…」
うん、まだ違和感はあるけど、丁寧な口調のマチルダさんにもだいぶ慣れてきた気がする。いや、これは俺たちにしか見えない目だけは、悪戯っぽく笑ってるからかもしれないな。
「はい」
「はーい!」
「なんでしょう?」
ジルさん、キースくん、俺が三人揃って答えれば、マチルダさんはにっこりと艶やかに笑いながら続けた。
「ファーグから、ここから領主城までの帰り道はウマでは無く、あそこの馬車を使って欲しいと言われているのですが…みなさんも、ご一緒にどうでしょう?」
え、馬車?馬が一台通るのも精一杯なぐらい、あんなにたくさんの人が集まってるのに?
驚きつつもマチルダさんが指差した方を向いてみれば、そこには確かに自動販売機ぐらいの大きさの箱とそれを引くための馬の姿があった。
「え…?」
自動販売機サイズの箱の底には、大きな車輪が四つ並んでいるのが見える。あれが馬車?いや、馬車と言えば…馬車…なのかな?
「んー?変わった形、だね?」
キースくんは戸惑いつつも、好奇心が疼いたらしい。今は興味深そうに、まじまじと馬車を観察している。
「…これは…?」
ジルさんはそう尋ねながらも、不思議な形の馬車から少しも目を離さずにいる。いや離せずにいる――かもしれないな。
マチルダさんは戸惑いを隠せなかった俺達三人の反応に、楽し気に声をあげて笑い出した。あ、もちろんあくまでも品は良く、貴族のお姫様っぽい笑い方で…だけどね。
それにしても、人目があるからってちゃんと笑い方まで変えられるなんて、マチルダさんってすごく器用だと思う。
「みなさん、戸惑い過ぎですよ」
笑いまじりにマチルダさんはそう言うけど、これはどう考えても戸惑うよね。
だってあの細長い自動販売機みたいな馬車の形は、どう考えても人が一人乗るのが精一杯だと思うんだよね。
いや、でももしかしたらマチルダさんと体の小さいキースくんなら、二人一緒に乗れる可能性も――ちょっとぐらいはあるかもしれない。限りなくゼロに近いけど。
「急にそんな事を言われれば、戸惑いますよ」
苦笑しながらそう返したジルさんは、もう一度まじまじと馬車を見つめた。
「まさか…あの馬車は…?」
ジルさんには、思い当るような何かがあるらしい。
「ジル、まだ話さないでくださいね?」
「話しませんが…ああ、見て驚いて欲しいんですね?」
「ええ、せっかくの馬車ですから」
マチルダさんとジルさんがそんな会話をしている隣で、俺とキースくんはまだ馬車を見つめていた。
だってあんな細長い形の馬車なんて見た事が無いからね。気になって仕方ないんだ。
たぶんあの馬車の形だと、ほぼ立ってる姿勢で乗る事になると思うんだ。
その予想が当たっているとしたら、揺れる馬車の中でずっと立った姿勢でい続けるのは、かなり大変なんじゃないかな。
もしかしたらこれは普通の馬車だとあの人がいっぱいの狭い道を進めないからって、今日のために特注でファーガスさんが作らせたものとかなのかもしれないな。
その理由はきっと、マチルダさんをこれ以上他の人に見せないためなんだろうな。
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