生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1373.馬車の中

 いそいそと馬車をめざして歩き出したマチルダさんの後を追って、苦笑しているジルさん、楽しそうなキースくんと一緒に歩いて行く。

 馬車の前へと辿り着くと、マチルダさんは周りの人たちを見渡して口を開いた。

「それではみなさま、私たちはお先に失礼しますね」

 にっこりと笑ってそう言うと、マチルダさんは御者の手によって開かれた扉の方へとそっとキースくんの背中を押した。

「え…僕が最初に入って良いの?」

 わざわざ振り返ってそう確認したキースくんに、マチルダさんは微笑ましそうに笑って答えた。

「ええ、もちろん良いですよ。キースが最初に乗ってください」
「じゃあ…おじゃましまーす」

 御者さんに対しての言葉なのか、それとも馬に対しての言葉なのか。分からないけど可愛いなと見守っていると、弾んだキースくんの声が聞こえてきた。

「わっ…すごい!アキトくん、この馬車すっっっごいよっ!」

 キースくんは大興奮の様子で、早く乗ってきて!アキトくん!と元気に叫んでいる声だけが馬車の中から聞こえてきている。

 思わずマチルダさんとジルさんを見てみれば、二人はどうぞと手で合図を送ってきた。

「おじゃましまーす」

 キースくんと同じ言葉を御者さんと馬にかけながら、俺も開かれた扉をくぐる。

 自動販売機サイズの馬車の扉は少し小さ目に作られていて、俺でも腰を曲げないと通れないぐらいの大きさだ。

 腰を曲げながら馬車の中へと足を踏み入れると、そこには予想外の光景が広がっていた。

 外から見た感じは自動販売機サイズなのに、部屋の中に入ってみればカラオケの部屋ぐらいの大きさがあった。

「えっ!…広い!すごい!」

 思わずそう言いながら上を見てみれば、当たり前のように天井も高かった。これが本当にあの馬車の中?と聞きたくなる広さだ。

「ね、すごいよね!」

 ワクワクした様子のキースくんは、部屋の中に設置されている座り心地の良さそうなボックスソファに片手で触れている所だった。

 このボックスソファとテーブルのせいで、余計にカラオケみたいに見えたんだろうな。

「うん、これはすごい馬車だね」

 答えながら、俺もそっとソファに手を触れてみた。

 おお、思ってたよりはちょっと固めの触感だ。手の平がすこしだけ沈む感じ。ちなみに布の手触りは、ものすごく良い。きっと良い素材を使ってるんだろうなと、ついつい考えてしまった。

 もしここにハルがいたら、この布は何々の素材を使ってるねとか教えてくれたんだろうな。

 そんな考えが一瞬だけ頭の中を過った。

「これは…予想通りではありますが、すごいですね」

 俺の後からやってきたジルさんも、興味深そうに馬車の中を見回している。

「どうだ、キース、アキト、驚いたか?」

 マチルダさんは、普段の口調で俺たちに声をかけてきた。

 あれ?と思って扉の方を見てみれば、しっかりと閉められた後だったよ。人目が無くなったから普通に話してるんだな。

「うん、すっごく驚いたよ!」
「俺も驚きました!すごい広さですね!」

 俺達の答えを聞いて、マチルダさんは楽しそうに笑って答えた。

「良い反応をしてくれて、私は満足だよ。これは魔導収納の魔道具の応用らしい。まあ、まだ試作品らしいけどな」

 なるほど、異世界の不思議技術の応用なのか。だから中だけはこんなに広いんだな。

「試作品…ですか?ですが、今も普通に使えていますよね?」
「もちろんだ。普通に使えないものを、ファーグが私に使わせるわけがないだろう?」
「ああ、たしかにそうですね」

 あっさりと頷いたジルさんの隣で、俺とキースくんも確かにと何度も頷いてしまったよね。


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 いつも読んでいただきありがとうございます。
 返信はできていませんが、コメントはいつも嬉しい気持ちで読ませて頂いています。
 誤字修正のご連絡も、いつも助かっています。

 私事ですが、土曜日から数日間、国内旅行に行きます。準備や移動で忙しくなると思いますので、明日の更新より一週間お休みをいただきます。

 一週間後からは、また更新再開予定です。引き続きお付き合い頂けると幸いです。


 (こちらの文章は、再開後削除させていただきます)
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