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1376.牽制
いやいや、待て待て。ちょっと落ち着こう。
俺はクリスさんとカーディの出身地とか家柄とか、そういう詳しい事は何も知らない。
知ってるのはただお互いを大事にしてる伴侶同士って事と、クリスさんが凄腕の魔道具技師で、カーディは元冒険者。今は二人で一緒にお店をしてるって事ぐらいだ。
だからもしかしたら、クリスさんとカーディが実はどこかの貴族家出身でーとか…?なのかもしれないよね???
うん、その可能性ならまだちょっとはあり得そうだ。
いや、でもさ。それはそれとして、貴族が貴族にそんな事を言ったら――もっと大問題になるよね。
「あ、あの…それって…えっと…大丈夫なんですか?大問題になるんじゃ…」
慌ててそう尋ねてみれば、マチルダさんは大丈夫だよとすぐに艶やかに笑って答えた。
「まあ他の家だったら、もしかしたら問題になったかもしれないが…領主様とファーグは手紙を読んで心から感心してたよ」
「え、感心…?」
「ああ、貴族相手に、しかもあの英雄ケイリー・ウェルマールのいる家を相手に、自分たちの作った製品を使った牽制を織り交ぜた手紙を送ってきたんだ。そのすごい度胸にな」
「あー…なるほど」
「私はその会話は聞いていませんが、想像はつきますね」
ジルさんはふわりと微笑みながら続けた。
「きっとウィルは大喜びで笑っていたんでしょう?」
「ああ。正解だ、ジル」
「ウィルは分かりやすいですからね」
微笑みながらさらりとそう答えたジルさんに、ウィリアムさん愛されてるなとしみじみ考えてしまったよね。
「船の中で私も少しだけお見かけしましたが、あのお二人は本当にハルさんとアキトさんの事を特別に思ってくれているんですね」
ああ、そっか。船の上でウィリアムさんと初めて会った日、ジルさんもそこにいたもんな。何かの仕事で来たって、ウィリアムさんを迎えに来てたのは覚えてる。
あの時にクリスとカーディの事も、ちゃんと見てたのか。
「でも、なんでわざわざそんな手紙を?」
だってハルが家族から大事にされてるのなんて、ハルを見てればすぐに分かるはずだ。あの船の上でのウィリアムさんとハルのやりとりを、俺と一緒に全部見てたんだから。
思わず首を傾げれば、ジルさんが不意にもしかして…と口を開いた。
「アキトさんの出身地について、そのお二人は知っているのではないですか…?」
あ、確かに。クリスさんには、みたらし団子の件がきっかけで俺が異世界人だってバレたんだよね。
他の人にはこの秘密は言わないって、ハルに約束してくれたって聞いてる。律儀なクリスさんの事だから、何ならカーディにすら話してなさそうな気がするな。
でもカーディも思わぬ所で勘が良いみたいだからな、何なら自分で気づいてそうな気もする。
懐かしく二人の事を思い出しながら、俺は答えた。
「はい、少なくとも一人は確実に知ってますね。もう一人はどうなのか…ちょっと分からないですけど…」
「それなら確実に、あの手紙は後ろ盾の無いアキトのためだろうな」
マチルダさんは嬉しそうに笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、私もそう思います。もしアキトさんが、ハルさんの伴侶候補であると認められなかった時のためでしょうね」
ジルさんもすぐにそう答えた。
「…俺の、ため…?」
「トライプールは、辺境領とはかなり距離がありますからね。領主一家が平民でも他国民でも気にせずに普通に家族として受け入れるような、そんなおおらかな気質だとは知らないんでしょう」
あーなるほど。初めてハルが貴族の一員だって聞いた時は、俺もそりゃあ驚いたもんな。素性の分からない男をいきなり伴侶候補にしたいなんて言ったら、家族から反対されるんじゃない?ってそう思ったのは覚えてる。
いや、思ったじゃなくてハルに直接聞いたな。そしたら俺の家族はそんな事は気にしないよって教えてくれたんだ。
「妙な気を起こしてアキトを監禁したり利用しないようにという牽制もあったんだろうが…その辺りはうまくぼかして曖昧に書かれていたな」
出身地を知らなければ気付けないような書き方だったと、マチルダさんはまた手紙を褒め始めた。
「えっと…その…クリスさんとカーディは…特に怒られたりとかは…しないですか?」
ドキドキしながら尋ねた俺に、マチルダさんとジルさんは笑顔で首を振った。
「しないしない」
「ええ、むしろハルさんとアキトさんのために動いてくれた、友人思いな人たちですから。お礼を言いたいぐらいですよ」
「きっとボルト経由でお土産が用意されるぞ」
楽し気な二人の言葉を聞きながら、俺は思いっきり息を吐いた。はー良かった。二人の気づかいは嬉しいけど、何か迷惑をかけるんじゃないかって気になってたからな。
「良いおともだちだね?」
「ああ、そうだね」
俺はクリスさんとカーディの出身地とか家柄とか、そういう詳しい事は何も知らない。
知ってるのはただお互いを大事にしてる伴侶同士って事と、クリスさんが凄腕の魔道具技師で、カーディは元冒険者。今は二人で一緒にお店をしてるって事ぐらいだ。
だからもしかしたら、クリスさんとカーディが実はどこかの貴族家出身でーとか…?なのかもしれないよね???
うん、その可能性ならまだちょっとはあり得そうだ。
いや、でもさ。それはそれとして、貴族が貴族にそんな事を言ったら――もっと大問題になるよね。
「あ、あの…それって…えっと…大丈夫なんですか?大問題になるんじゃ…」
慌ててそう尋ねてみれば、マチルダさんは大丈夫だよとすぐに艶やかに笑って答えた。
「まあ他の家だったら、もしかしたら問題になったかもしれないが…領主様とファーグは手紙を読んで心から感心してたよ」
「え、感心…?」
「ああ、貴族相手に、しかもあの英雄ケイリー・ウェルマールのいる家を相手に、自分たちの作った製品を使った牽制を織り交ぜた手紙を送ってきたんだ。そのすごい度胸にな」
「あー…なるほど」
「私はその会話は聞いていませんが、想像はつきますね」
ジルさんはふわりと微笑みながら続けた。
「きっとウィルは大喜びで笑っていたんでしょう?」
「ああ。正解だ、ジル」
「ウィルは分かりやすいですからね」
微笑みながらさらりとそう答えたジルさんに、ウィリアムさん愛されてるなとしみじみ考えてしまったよね。
「船の中で私も少しだけお見かけしましたが、あのお二人は本当にハルさんとアキトさんの事を特別に思ってくれているんですね」
ああ、そっか。船の上でウィリアムさんと初めて会った日、ジルさんもそこにいたもんな。何かの仕事で来たって、ウィリアムさんを迎えに来てたのは覚えてる。
あの時にクリスとカーディの事も、ちゃんと見てたのか。
「でも、なんでわざわざそんな手紙を?」
だってハルが家族から大事にされてるのなんて、ハルを見てればすぐに分かるはずだ。あの船の上でのウィリアムさんとハルのやりとりを、俺と一緒に全部見てたんだから。
思わず首を傾げれば、ジルさんが不意にもしかして…と口を開いた。
「アキトさんの出身地について、そのお二人は知っているのではないですか…?」
あ、確かに。クリスさんには、みたらし団子の件がきっかけで俺が異世界人だってバレたんだよね。
他の人にはこの秘密は言わないって、ハルに約束してくれたって聞いてる。律儀なクリスさんの事だから、何ならカーディにすら話してなさそうな気がするな。
でもカーディも思わぬ所で勘が良いみたいだからな、何なら自分で気づいてそうな気もする。
懐かしく二人の事を思い出しながら、俺は答えた。
「はい、少なくとも一人は確実に知ってますね。もう一人はどうなのか…ちょっと分からないですけど…」
「それなら確実に、あの手紙は後ろ盾の無いアキトのためだろうな」
マチルダさんは嬉しそうに笑みを浮かべて頷いた。
「ええ、私もそう思います。もしアキトさんが、ハルさんの伴侶候補であると認められなかった時のためでしょうね」
ジルさんもすぐにそう答えた。
「…俺の、ため…?」
「トライプールは、辺境領とはかなり距離がありますからね。領主一家が平民でも他国民でも気にせずに普通に家族として受け入れるような、そんなおおらかな気質だとは知らないんでしょう」
あーなるほど。初めてハルが貴族の一員だって聞いた時は、俺もそりゃあ驚いたもんな。素性の分からない男をいきなり伴侶候補にしたいなんて言ったら、家族から反対されるんじゃない?ってそう思ったのは覚えてる。
いや、思ったじゃなくてハルに直接聞いたな。そしたら俺の家族はそんな事は気にしないよって教えてくれたんだ。
「妙な気を起こしてアキトを監禁したり利用しないようにという牽制もあったんだろうが…その辺りはうまくぼかして曖昧に書かれていたな」
出身地を知らなければ気付けないような書き方だったと、マチルダさんはまた手紙を褒め始めた。
「えっと…その…クリスさんとカーディは…特に怒られたりとかは…しないですか?」
ドキドキしながら尋ねた俺に、マチルダさんとジルさんは笑顔で首を振った。
「しないしない」
「ええ、むしろハルさんとアキトさんのために動いてくれた、友人思いな人たちですから。お礼を言いたいぐらいですよ」
「きっとボルト経由でお土産が用意されるぞ」
楽し気な二人の言葉を聞きながら、俺は思いっきり息を吐いた。はー良かった。二人の気づかいは嬉しいけど、何か迷惑をかけるんじゃないかって気になってたからな。
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