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1377.キースくんのお願い
「アキト、もし良ければハルにもその手紙の事を話しておいてくれるか?」
マチルダさんからの言葉に、俺は少しだけ驚いてしまった。
「それはもちろん良いんですけど…」
ハルもまだ知らないって事?
「えっと、この手紙の事も、魔道具の馬車の事も、クリスさんとカーディの気づかいについても、ハルはまだ知らないんですか?」
「ああ、報告会でストファー魔道具店にハルとアキトの友人がいると聞いたファーグが、もしかしてと言い出すまではあの贈り物の事すら忘れてたからな」
言い訳ってわけじゃないんだが、今は贈り物に構っていられるほど時間に余裕が無くてなと、マチルダさんは申し訳なさそうにそう続けた。
一応危険が無いかだけささっと鑑定魔法で確認してもらって、後は保管室に押し込むだけで精一杯だったらしい。
そりゃあそうだよね。遠征の用意で大忙しだったんだから。気にしないでくださいと言おうとしたけど、それよりも前にジルさんが口を開いた。
「本来ならそういう贈り物の詳細確認については、うちの隊の隊員たちが調べるんですが…最近は盗賊や遠征関係の調査ばかりしていましたからね…」
あ、ジルさんもしょんぼりと肩を落としている。これは!このままだと二人から謝罪の言葉が出ちゃうやつだ。
「すみ…」
「すま…」
「っ!いえっ!気にしないでください!みなさんが忙しいのは知ってますから!」
大慌てで叫んだ俺の反応に、マチルダさんとジルさんは顔を見合わせてからへにゃりと笑った。なんだかこの二人のこういう笑顔は、ちょっと珍しい気がするな。
ファーガスさんとウィリアムさんにも見せてあげたいと思ってしまうぐらい、無防備な笑顔だった。他の人の目が無いからってのもあるのかもしれないけど。
「手紙の宛先は領主様とそのご家族様となっていたからこちらで開封したんだが、その時はそこにハルはいなかったんだ」
そこで言葉を切ったマチルダさんは、ニヤリと笑ってみせた。
「手紙を回収した私が会議室に辿り着いた頃には、ハルはアキトに会いたいって既に部屋を飛び出していった後だったからな」
「…な、なるほど」
用件が終わるなりすごい素早さで部屋を出てきてくれるハルの姿が、あっさり想像できちゃったよ。正直に言えばすぐに帰ってきてくれるのは俺も嬉しいんだけど…なんだかごめんなさい。
それにしても今さっきのマチルダさんの笑顔は、ちょっとハルに似てたかもしれない。
ハルとマチルダさんの間に血の繋がりが無いのは知ってるんだけど、そういう悪戯っぽいニヤリ笑顔をすると似てるんだね。
まあどっちも驚くほど美形なんだけど。家族は似てくるとかそういう話なんだろうか。
「馬車についての説明はこれで終わりで良いかな?」
「はい、その手紙は、ハルと一緒に読ませてもらっても良いですか?」
「ああ、もちろんだ。後で届けさせるよ」
よし、帰ってきたハルと話す話題がひとつ増えたな。
「お話が終わったなら…みんなに、ひとつお願いしても良い?」
そうキースくんが言い出した時には、マチルダさんもジルさんも、そして俺も、思わずぴたりと動きを止めてしまった。
だって、普段あまり自己主張をしないキースくんからの、俺達へのお願い事なんだよ。
俺達は三人で視線を交わしてから、こくりと頷き合った。何が何でも叶えてみせるぞ。そんな会話を視線だけで一瞬でしてから、キースくんに視線を向ける。
「もちろんだ、キース」
「何でしょうか?」
「俺でできる事なら頑張るよ!」
キースくんは俺達の答えを聞いて、にっこりと嬉しそうに笑ってから口を開いた。
「あのね、みんなが帰ってくるまで、毎日朝ごはんを一緒に食べたい!」
おお、それは良いかも。
それなら寂しがり屋のマチルダさんと過ごして欲しいってファーガスさんのお願いも、ジルさんが無理をしていないか気にして欲しいってウィリアムさんのお願いも叶えられる。
「それは、良い案だね!俺は賛成だよ!」
勢いこんでそう答えた俺だけど、マチルダさんとジルさんは顔を見合わせてからふっと笑った。
「ファーグに何か言われたな?」
「ウィルもですね」
「…何の事?」
「とぼけなくて良いんだ。ファーグが言いそうな事は分かってる」
「ええ、私もです」
うん、思いっきりバレてるね。別に隠して欲しいとは言われてないけど、これって言って良いのか?キースくんとどうしようと顔を見合わせていると、マチルダさんが楽し気に笑い出した。
「分かった。追及はしないよ。朝食を一緒に取れるのは私もうれしい」
「そうですね。詳しい事はウィルに聞きます。私もぜひ参加させてください」
こうして、みんなが遠征に行ってる間は、四人一緒に朝食を食べる事が決まった。楽しみが一つ増えたな。
マチルダさんからの言葉に、俺は少しだけ驚いてしまった。
「それはもちろん良いんですけど…」
ハルもまだ知らないって事?
「えっと、この手紙の事も、魔道具の馬車の事も、クリスさんとカーディの気づかいについても、ハルはまだ知らないんですか?」
「ああ、報告会でストファー魔道具店にハルとアキトの友人がいると聞いたファーグが、もしかしてと言い出すまではあの贈り物の事すら忘れてたからな」
言い訳ってわけじゃないんだが、今は贈り物に構っていられるほど時間に余裕が無くてなと、マチルダさんは申し訳なさそうにそう続けた。
一応危険が無いかだけささっと鑑定魔法で確認してもらって、後は保管室に押し込むだけで精一杯だったらしい。
そりゃあそうだよね。遠征の用意で大忙しだったんだから。気にしないでくださいと言おうとしたけど、それよりも前にジルさんが口を開いた。
「本来ならそういう贈り物の詳細確認については、うちの隊の隊員たちが調べるんですが…最近は盗賊や遠征関係の調査ばかりしていましたからね…」
あ、ジルさんもしょんぼりと肩を落としている。これは!このままだと二人から謝罪の言葉が出ちゃうやつだ。
「すみ…」
「すま…」
「っ!いえっ!気にしないでください!みなさんが忙しいのは知ってますから!」
大慌てで叫んだ俺の反応に、マチルダさんとジルさんは顔を見合わせてからへにゃりと笑った。なんだかこの二人のこういう笑顔は、ちょっと珍しい気がするな。
ファーガスさんとウィリアムさんにも見せてあげたいと思ってしまうぐらい、無防備な笑顔だった。他の人の目が無いからってのもあるのかもしれないけど。
「手紙の宛先は領主様とそのご家族様となっていたからこちらで開封したんだが、その時はそこにハルはいなかったんだ」
そこで言葉を切ったマチルダさんは、ニヤリと笑ってみせた。
「手紙を回収した私が会議室に辿り着いた頃には、ハルはアキトに会いたいって既に部屋を飛び出していった後だったからな」
「…な、なるほど」
用件が終わるなりすごい素早さで部屋を出てきてくれるハルの姿が、あっさり想像できちゃったよ。正直に言えばすぐに帰ってきてくれるのは俺も嬉しいんだけど…なんだかごめんなさい。
それにしても今さっきのマチルダさんの笑顔は、ちょっとハルに似てたかもしれない。
ハルとマチルダさんの間に血の繋がりが無いのは知ってるんだけど、そういう悪戯っぽいニヤリ笑顔をすると似てるんだね。
まあどっちも驚くほど美形なんだけど。家族は似てくるとかそういう話なんだろうか。
「馬車についての説明はこれで終わりで良いかな?」
「はい、その手紙は、ハルと一緒に読ませてもらっても良いですか?」
「ああ、もちろんだ。後で届けさせるよ」
よし、帰ってきたハルと話す話題がひとつ増えたな。
「お話が終わったなら…みんなに、ひとつお願いしても良い?」
そうキースくんが言い出した時には、マチルダさんもジルさんも、そして俺も、思わずぴたりと動きを止めてしまった。
だって、普段あまり自己主張をしないキースくんからの、俺達へのお願い事なんだよ。
俺達は三人で視線を交わしてから、こくりと頷き合った。何が何でも叶えてみせるぞ。そんな会話を視線だけで一瞬でしてから、キースくんに視線を向ける。
「もちろんだ、キース」
「何でしょうか?」
「俺でできる事なら頑張るよ!」
キースくんは俺達の答えを聞いて、にっこりと嬉しそうに笑ってから口を開いた。
「あのね、みんなが帰ってくるまで、毎日朝ごはんを一緒に食べたい!」
おお、それは良いかも。
それなら寂しがり屋のマチルダさんと過ごして欲しいってファーガスさんのお願いも、ジルさんが無理をしていないか気にして欲しいってウィリアムさんのお願いも叶えられる。
「それは、良い案だね!俺は賛成だよ!」
勢いこんでそう答えた俺だけど、マチルダさんとジルさんは顔を見合わせてからふっと笑った。
「ファーグに何か言われたな?」
「ウィルもですね」
「…何の事?」
「とぼけなくて良いんだ。ファーグが言いそうな事は分かってる」
「ええ、私もです」
うん、思いっきりバレてるね。別に隠して欲しいとは言われてないけど、これって言って良いのか?キースくんとどうしようと顔を見合わせていると、マチルダさんが楽し気に笑い出した。
「分かった。追及はしないよ。朝食を一緒に取れるのは私もうれしい」
「そうですね。詳しい事はウィルに聞きます。私もぜひ参加させてください」
こうして、みんなが遠征に行ってる間は、四人一緒に朝食を食べる事が決まった。楽しみが一つ増えたな。
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