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1381.メイドのジフェさん
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「お待たせしましたっ!」
そう声をかけると、ドアの外で待ってくれていた案内役のメイドさんは、控え目な笑顔を浮かべながらゆっくりと振り返った。
ゆったりとした動作は、もしかしたら俺を驚かせないようにっていう配慮かもしれない。
「いえ、それほど待っておりませんので、どうぞお気になさらず」
背筋をぴんと伸ばした長身のそのメイドさんは、何度か見かけた事はあるんだけど話すのは初めてだ。
俺が慌てて着替えてた理由の一つが、このメイドさんなんだよね。
普段から家族そろって食事をしてる部屋とか、たまにお茶会で使う部屋とかなら、俺一人でちゃんと辿り着ける。ハルの案内が無くても、迷子になったりはしないと思う。
もう領主城の中にある廊下とか建物の構造とかも、だいぶ覚えてきたからね。さすがに裏の廊下は全然覚えれてないけど。
でも今日は、いつもとは違う部屋にお茶会の用意をしてくれてるらしいんだよね。
執事長のボルトさんと料理長のラスさんが相談して、二人でそう決めたんだって。
「普段とはすこし趣向を変えてみました」
ボルトさんは悪戯っぽく微笑みながら、そう教えてくれた。
いったいどこの部屋でやるんだ?ってマチルダさんは直球でボルトさんに聞いてたけど、部屋の詳細については到着してからのお楽しみって言われてたよ。
詳細は一切話してくれなかった代わりに、今日はそれぞれに案内の人がつく事になったんだ。それで俺にはこのメイドさんがついてくれてるってわけだ。
「それでは参りましょうか?」
「はい、案内お願いします」
「かしこまりました」
移動中は別に無言のままでも良いんだけど、どちらかと言うと使用人さんたちと話しながら歩くのが好きだ。でも俺から声をかけたら、仕事中のメイドさんの邪魔になるかもしれない。
どうしようかと考えていると、メイドさんの方から声をかけてくれた。
「アキト様は、移動中に会話を楽しまれると聞いたのですが…本当でしょうか?」
おお、前に話した事のあるメイドさんから、ちゃんと情報が伝達されてたみたいだ。どの人か分からないけど、ありがとうメイドさん。
「はい、本当です」
「そうでしたか。だからアキト様の担当になりたいという使用人が多いのですね」
「え…?そうなんですか?」
「そうなんですよ。私は当たりの玉を引く事ができたので、ここにいます」
運は良い方なのでと笑って続けたメイドさんは、無理をしている様子もない。思ったよりも軽く会話をしてくれるタイプの人みたいだ。
「嫌がられていないなら、嬉しいです」
「嫌がるどころか、くじ引きでしたよ」
ちなみにこのメイドさんは、ジフェさんという名前らしい。
ジフェさんっていうのか。ちょっと聞き慣れない名前だなと思っていると、祖父が異国出身でそこの国の言葉で名前を付けてくれたんですと教えてくれた。
「ジフェはその国では有名な花の名前らしいです」
「そうなんですか、綺麗な花なんでしょうね」
「ええ、オレンジの花が咲くそうで――きっと、私の髪色から連想したんでしょうね」
安易な名づけですよねと口では言いながらも、ジフェさんは嬉しそうに笑っている。
「良い名前ですね」
「ありがとうございます。私も気に入っています」
にっこりと笑ったジフェさんと一緒に、あれこれと色んな事を話しながらのんびりと廊下を進んで行く。この辺りはまだ知ってる廊下だな。
そう考えていると、いつもは曲がらない所で不意にジフェさんが立ち止まった。
「アキト様、こちらです」
「はい」
しばらく進めば、おそらく初めて通るだろう廊下へと出た。結構領主城の中には詳しくなったと思ってたんだけど、まだまだ知らない場所があるんだな。
周りが気になってキョロキョロする俺に、ジフェさんは近くの部屋を説明しながらゆっくりと歩いてくれた。
いくつかの角を曲がり、階段を降りた所で、ジフェさんは足を止めた。ちょうどひとつのドアの前だ。
「こちらでございます」
「ジフェさん、案内ありがとうございました」
そう声をかけると、ドアの外で待ってくれていた案内役のメイドさんは、控え目な笑顔を浮かべながらゆっくりと振り返った。
ゆったりとした動作は、もしかしたら俺を驚かせないようにっていう配慮かもしれない。
「いえ、それほど待っておりませんので、どうぞお気になさらず」
背筋をぴんと伸ばした長身のそのメイドさんは、何度か見かけた事はあるんだけど話すのは初めてだ。
俺が慌てて着替えてた理由の一つが、このメイドさんなんだよね。
普段から家族そろって食事をしてる部屋とか、たまにお茶会で使う部屋とかなら、俺一人でちゃんと辿り着ける。ハルの案内が無くても、迷子になったりはしないと思う。
もう領主城の中にある廊下とか建物の構造とかも、だいぶ覚えてきたからね。さすがに裏の廊下は全然覚えれてないけど。
でも今日は、いつもとは違う部屋にお茶会の用意をしてくれてるらしいんだよね。
執事長のボルトさんと料理長のラスさんが相談して、二人でそう決めたんだって。
「普段とはすこし趣向を変えてみました」
ボルトさんは悪戯っぽく微笑みながら、そう教えてくれた。
いったいどこの部屋でやるんだ?ってマチルダさんは直球でボルトさんに聞いてたけど、部屋の詳細については到着してからのお楽しみって言われてたよ。
詳細は一切話してくれなかった代わりに、今日はそれぞれに案内の人がつく事になったんだ。それで俺にはこのメイドさんがついてくれてるってわけだ。
「それでは参りましょうか?」
「はい、案内お願いします」
「かしこまりました」
移動中は別に無言のままでも良いんだけど、どちらかと言うと使用人さんたちと話しながら歩くのが好きだ。でも俺から声をかけたら、仕事中のメイドさんの邪魔になるかもしれない。
どうしようかと考えていると、メイドさんの方から声をかけてくれた。
「アキト様は、移動中に会話を楽しまれると聞いたのですが…本当でしょうか?」
おお、前に話した事のあるメイドさんから、ちゃんと情報が伝達されてたみたいだ。どの人か分からないけど、ありがとうメイドさん。
「はい、本当です」
「そうでしたか。だからアキト様の担当になりたいという使用人が多いのですね」
「え…?そうなんですか?」
「そうなんですよ。私は当たりの玉を引く事ができたので、ここにいます」
運は良い方なのでと笑って続けたメイドさんは、無理をしている様子もない。思ったよりも軽く会話をしてくれるタイプの人みたいだ。
「嫌がられていないなら、嬉しいです」
「嫌がるどころか、くじ引きでしたよ」
ちなみにこのメイドさんは、ジフェさんという名前らしい。
ジフェさんっていうのか。ちょっと聞き慣れない名前だなと思っていると、祖父が異国出身でそこの国の言葉で名前を付けてくれたんですと教えてくれた。
「ジフェはその国では有名な花の名前らしいです」
「そうなんですか、綺麗な花なんでしょうね」
「ええ、オレンジの花が咲くそうで――きっと、私の髪色から連想したんでしょうね」
安易な名づけですよねと口では言いながらも、ジフェさんは嬉しそうに笑っている。
「良い名前ですね」
「ありがとうございます。私も気に入っています」
にっこりと笑ったジフェさんと一緒に、あれこれと色んな事を話しながらのんびりと廊下を進んで行く。この辺りはまだ知ってる廊下だな。
そう考えていると、いつもは曲がらない所で不意にジフェさんが立ち止まった。
「アキト様、こちらです」
「はい」
しばらく進めば、おそらく初めて通るだろう廊下へと出た。結構領主城の中には詳しくなったと思ってたんだけど、まだまだ知らない場所があるんだな。
周りが気になってキョロキョロする俺に、ジフェさんは近くの部屋を説明しながらゆっくりと歩いてくれた。
いくつかの角を曲がり、階段を降りた所で、ジフェさんは足を止めた。ちょうどひとつのドアの前だ。
「こちらでございます」
「ジフェさん、案内ありがとうございました」
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