生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1382.合流

 目的地の部屋の前でジフェさんにお礼を言っていると、遠くからパタパタと足音が聞こえてきた。

 パッと視線を向ければ、そこには駆けてくるキースくんの姿があった。

「アキトくん、今来た所?」
「うん、そうだよ」

 両脚にむぎゅっと抱き着いてくるキースくんの肩をぽんぽんと軽く叩いていると、後ろから案内役だろう侍従さんが歩いてきた。目が合うと目礼をしてくれたこの人は、キースくんの担当を主にしている人だ。

「今日はこの部屋って言われたけど、キースくんは中の事知ってる?」

 どんな部屋なのか気になってたからそう聞いてみたんだけど、キースくんはううんとあっさりと首を振った。

 俺よりも断然領主城に詳しいキースくんでも、知らない部屋があるのか。ちょっと衝撃を受けながらも、俺は話し出したキースくんに視線を向けた。

「知ってる部屋も改装したり、家具を入れ替えたりすると分からなくなるけど…ここは、本当に何も知らない部屋だよ」
「そうなんだ」

 うんうんと頷きながら聞いていると、キースくんはにっこりと笑って続けた。

「だから今ワクワクしてるんだ」
「うん、俺もワクワクしてるよ」

 ニコニコと二人で笑い合っていると、今度はキースくんが来た方向とは逆方向から足音が聞こえてきた。

「お二人とも、お待たせしました」

 普段からよく着ている仕事着を身につけたジルさんは、そう言いながら早足で近づいてきた。

「いえ、今さっき着いたばかりですから」
「僕もまだ到着してアキトくんと話してた所だよ」

 偶然にも気にしないでと声を重ねた俺達に、ジルさんはふふと笑ってくれた。

「息がぴったり合ってますね」
「キースくん、褒められちゃったね?」
「うん、アキトくんと息がぴったりって言われるのは嬉しいなー」

 そう言ったキースくんは、嬉しそうに笑って俺をみあげてきた。可愛い反応をしてくれる今日も可愛いキースくんの頭を、俺はそっと撫でさせてもらった。

「マチルダさんはまだのようですが…どうしましょうか?」
「折角なら待ちませんか?」
「うん、そうだね。待ちたいな」

 実はマチルダさんが、四人の中では一番自室までの距離が遠いんだよね。ファーガスさんとマチルダさんは次期領主夫妻だからって、領主様たちの部屋に近い場所に部屋があるらしい。

 それに俺達が着てたのは、礼服と軍服の違いはあったけどどちらも至って普通の服だ。対してマチルダさんは、そのままパーティーにも出れそうなドレスを着てた。

 だから時間はかかるだろうな。

 そう思ってたんだけど、マチルダさんは数分もしないうちに服を着替えてやってきた。

 は、早くないですか?

「おや、みんな部屋には入らずに待っていてくれたのか?」

 すまないありがとうと口にしたマチルダさんは、いつも通りの楽そうな私服に変わっていた。まあ服が変わっても、やっぱり驚くほど綺麗な人なんだけどね。

「随分早かったですね?」

 もうすこし待つと思っていましたと、俺も気になっていた事をジルさんが尋ねてくれた。

「ああ、私がすぐに服を着替えると言い出すのは、ファーグも予想してたらしくてな。出発前に、メイドたちに準備を頼んでくれていたんだ」

 そのおかげで着替えもばっちり用意されていたし、お化粧担当のメイドさんも準備万端で待ってくれていたらしい。さらにその上、浄化魔法が得意なメイドさんまで待機してくれていたって教えてくれたんだ。

 ああ、そっか。お風呂に入ったりするのが数秒で終わるから、こんなに早いのか。

「せっかく全員が揃うのを待ってくれていたんだ、全員で入ろうか」
「うんっ」

 嬉しそうなキースくんを、ジルさんがそっと前へと押し出す。うんうんと頷いて見守っていると、何故か俺もマチルダさんにそっと前に押されてしまった。

 ジルさんもマチルダさんも確かに俺よりも年上なんだけど、こうして年下扱いされるとちょっと照れくさいな。

 いや、すごく嬉しいんだけどね。
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