生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1383.絵画

 俺とキースくんが並んで前の列に、その後ろにはマチルダさんとジルさんが並ぶ。

「よし、準備はできた。開けてくれ」

 楽し気なマチルダさんの声かけに、待機してくれていたメイドのジフェさんとキースくんの担当の侍従さんが、両側からドアノブに手をかける。

 二人は視線で合図を出し合いながら、息ぴったりでドアを開いてくれた。

 ジフェさんとメイドさんが素早くドアを開けてくれた瞬間、最初に視界に飛び込んできたのはあまりにも巨大な窓と、その向こう側に見えている美しい庭だった。

「うわーっ!すごいね!」
「うん、すごいね…」
「…これは…驚きましたね」
「ああ、見事だな」

 四人ともその場に立ち止まって、部屋に入るのも忘れて見入ってしまった。

 一目みただけで圧倒されてしまうような、そんなすごい景色だ。

 領主城の窓から見える庭の景色に感動させられた事は、俺も今までにも何度か経験がある。

 窓から見える景色をあれこれ考えて、計算しながら庭に植物を植えてくれる。そんな凄腕の庭師さんたちがいるからね。

 でも今日のこれは、その中でも特に素晴らしい出来栄えだった。

 まずこの部屋、一番奥の一面が全部窓なんだよね。あまりにも巨大な窓だ。

 しかもその窓の周りには、何かの動物が遊んでいるような繊細な模様が彫り込まれた巨大な木枠が設置されていた。

 たぶんあれは、額縁をイメージしたものなんだろうな。

 だからなのかは分からないけど、これは綺麗に見えるようにとかそういうのじゃなくて、絵を描くような感覚で色んな花や木を配置してるんじゃないかな。

 普段よりもさらに細かく、植えられている木々や花の背の高さや、窓からの距離、枝ぶりまできっちり考えられてる気がする。

 これは生きた植物を使って描かれた絵画だ。



 俺達が我に返って部屋に足を踏み入れるまでの数分間、使用人さんたちは誰も何も言わずにただじっと待ってくれた。

「…本当にすごいな」

 不意にぽつりと呟いたのは、マチルダさんだった。

「ええ、ここまでこだわった庭作りは、初めて見ましたね」

 こくりと頷いたジルさんは、それにしても…と不思議そうに口を開いた。

「私の記憶が正しければ、ここはこれほど大きな窓のある部屋では無かったと思うんですが…?」
「そうだったか?そもそも私はこの部屋は覚えてないな」

 困り顔のマチルダさんと不思議そうなジルさんの視線を受けて、キースくんの専属侍従さんが口を開いた。

「ジル様のおっしゃる通り、以前はこの部屋に窓はありませんでした」

 侍従さんによると、最近になって庭師さん達がどんどん庭を改良してくれている事を知ったケイリーさんが、いくつかの部屋を好きに使って良いという許可をくれたらしい。

 しかもその言葉と一緒に、いくつかの部屋の鍵まで届いたんだって。

「ふふ…養父様らしいな」
「ええ、領主様がそう言う所が簡単に想像できました」
「言いそうだね」

 マチルダさんもジルさんも、そしてキースくんも、なるほどと笑って頷き合っている。

 俺も庭師さんたちの事はすごいと思うんだけど――でも頑張りへのご褒美に、領主城の部屋を自由に使って良いよってぽんっと鍵まであげちゃうの?

 庶民の俺からすると、あまりにもスケールが大きすぎる気がするんだけど…三人は普通に納得できちゃうような事なのか。

「もちろん鍵を渡された最初は、庭仕事の拠点に使って良いという話しだったそうです。ですが…部屋の位置を知った庭師たちが、これはもしかしてと大騒ぎになりまして…」
「なるほど、ここに窓を作れば素晴らしい景観を作れるんじゃないかと言い出したんだな?」

 ニッと笑って続けたマチルダさんに、侍従さんはすぐに頷いた。

「はい。そこからは本当に素早かったですね。領主様と交渉して許可を得て、信頼できる建築関係の知り合いを端から当たっていき、まずは図面を作ってもらい上に確認をしてもらい、実際に工事を始め…それが全て終わってから庭に手を入れて、今に至ります」

 呆れ顔でそう教えてくれた侍従さんは、まあ出来栄えは素晴らしいですがとぽつりと呟いた。
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