1,384 / 1,561
1383.絵画
俺とキースくんが並んで前の列に、その後ろにはマチルダさんとジルさんが並ぶ。
「よし、準備はできた。開けてくれ」
楽し気なマチルダさんの声かけに、待機してくれていたメイドのジフェさんとキースくんの担当の侍従さんが、両側からドアノブに手をかける。
二人は視線で合図を出し合いながら、息ぴったりでドアを開いてくれた。
ジフェさんとメイドさんが素早くドアを開けてくれた瞬間、最初に視界に飛び込んできたのはあまりにも巨大な窓と、その向こう側に見えている美しい庭だった。
「うわーっ!すごいね!」
「うん、すごいね…」
「…これは…驚きましたね」
「ああ、見事だな」
四人ともその場に立ち止まって、部屋に入るのも忘れて見入ってしまった。
一目みただけで圧倒されてしまうような、そんなすごい景色だ。
領主城の窓から見える庭の景色に感動させられた事は、俺も今までにも何度か経験がある。
窓から見える景色をあれこれ考えて、計算しながら庭に植物を植えてくれる。そんな凄腕の庭師さんたちがいるからね。
でも今日のこれは、その中でも特に素晴らしい出来栄えだった。
まずこの部屋、一番奥の一面が全部窓なんだよね。あまりにも巨大な窓だ。
しかもその窓の周りには、何かの動物が遊んでいるような繊細な模様が彫り込まれた巨大な木枠が設置されていた。
たぶんあれは、額縁をイメージしたものなんだろうな。
だからなのかは分からないけど、これは綺麗に見えるようにとかそういうのじゃなくて、絵を描くような感覚で色んな花や木を配置してるんじゃないかな。
普段よりもさらに細かく、植えられている木々や花の背の高さや、窓からの距離、枝ぶりまできっちり考えられてる気がする。
これは生きた植物を使って描かれた絵画だ。
俺達が我に返って部屋に足を踏み入れるまでの数分間、使用人さんたちは誰も何も言わずにただじっと待ってくれた。
「…本当にすごいな」
不意にぽつりと呟いたのは、マチルダさんだった。
「ええ、ここまでこだわった庭作りは、初めて見ましたね」
こくりと頷いたジルさんは、それにしても…と不思議そうに口を開いた。
「私の記憶が正しければ、ここはこれほど大きな窓のある部屋では無かったと思うんですが…?」
「そうだったか?そもそも私はこの部屋は覚えてないな」
困り顔のマチルダさんと不思議そうなジルさんの視線を受けて、キースくんの専属侍従さんが口を開いた。
「ジル様のおっしゃる通り、以前はこの部屋に窓はありませんでした」
侍従さんによると、最近になって庭師さん達がどんどん庭を改良してくれている事を知ったケイリーさんが、いくつかの部屋を好きに使って良いという許可をくれたらしい。
しかもその言葉と一緒に、いくつかの部屋の鍵まで届いたんだって。
「ふふ…養父様らしいな」
「ええ、領主様がそう言う所が簡単に想像できました」
「言いそうだね」
マチルダさんもジルさんも、そしてキースくんも、なるほどと笑って頷き合っている。
俺も庭師さんたちの事はすごいと思うんだけど――でも頑張りへのご褒美に、領主城の部屋を自由に使って良いよってぽんっと鍵まであげちゃうの?
庶民の俺からすると、あまりにもスケールが大きすぎる気がするんだけど…三人は普通に納得できちゃうような事なのか。
「もちろん鍵を渡された最初は、庭仕事の拠点に使って良いという話しだったそうです。ですが…部屋の位置を知った庭師たちが、これはもしかしてと大騒ぎになりまして…」
「なるほど、ここに窓を作れば素晴らしい景観を作れるんじゃないかと言い出したんだな?」
ニッと笑って続けたマチルダさんに、侍従さんはすぐに頷いた。
「はい。そこからは本当に素早かったですね。領主様と交渉して許可を得て、信頼できる建築関係の知り合いを端から当たっていき、まずは図面を作ってもらい上に確認をしてもらい、実際に工事を始め…それが全て終わってから庭に手を入れて、今に至ります」
呆れ顔でそう教えてくれた侍従さんは、まあ出来栄えは素晴らしいですがとぽつりと呟いた。
「よし、準備はできた。開けてくれ」
楽し気なマチルダさんの声かけに、待機してくれていたメイドのジフェさんとキースくんの担当の侍従さんが、両側からドアノブに手をかける。
二人は視線で合図を出し合いながら、息ぴったりでドアを開いてくれた。
ジフェさんとメイドさんが素早くドアを開けてくれた瞬間、最初に視界に飛び込んできたのはあまりにも巨大な窓と、その向こう側に見えている美しい庭だった。
「うわーっ!すごいね!」
「うん、すごいね…」
「…これは…驚きましたね」
「ああ、見事だな」
四人ともその場に立ち止まって、部屋に入るのも忘れて見入ってしまった。
一目みただけで圧倒されてしまうような、そんなすごい景色だ。
領主城の窓から見える庭の景色に感動させられた事は、俺も今までにも何度か経験がある。
窓から見える景色をあれこれ考えて、計算しながら庭に植物を植えてくれる。そんな凄腕の庭師さんたちがいるからね。
でも今日のこれは、その中でも特に素晴らしい出来栄えだった。
まずこの部屋、一番奥の一面が全部窓なんだよね。あまりにも巨大な窓だ。
しかもその窓の周りには、何かの動物が遊んでいるような繊細な模様が彫り込まれた巨大な木枠が設置されていた。
たぶんあれは、額縁をイメージしたものなんだろうな。
だからなのかは分からないけど、これは綺麗に見えるようにとかそういうのじゃなくて、絵を描くような感覚で色んな花や木を配置してるんじゃないかな。
普段よりもさらに細かく、植えられている木々や花の背の高さや、窓からの距離、枝ぶりまできっちり考えられてる気がする。
これは生きた植物を使って描かれた絵画だ。
俺達が我に返って部屋に足を踏み入れるまでの数分間、使用人さんたちは誰も何も言わずにただじっと待ってくれた。
「…本当にすごいな」
不意にぽつりと呟いたのは、マチルダさんだった。
「ええ、ここまでこだわった庭作りは、初めて見ましたね」
こくりと頷いたジルさんは、それにしても…と不思議そうに口を開いた。
「私の記憶が正しければ、ここはこれほど大きな窓のある部屋では無かったと思うんですが…?」
「そうだったか?そもそも私はこの部屋は覚えてないな」
困り顔のマチルダさんと不思議そうなジルさんの視線を受けて、キースくんの専属侍従さんが口を開いた。
「ジル様のおっしゃる通り、以前はこの部屋に窓はありませんでした」
侍従さんによると、最近になって庭師さん達がどんどん庭を改良してくれている事を知ったケイリーさんが、いくつかの部屋を好きに使って良いという許可をくれたらしい。
しかもその言葉と一緒に、いくつかの部屋の鍵まで届いたんだって。
「ふふ…養父様らしいな」
「ええ、領主様がそう言う所が簡単に想像できました」
「言いそうだね」
マチルダさんもジルさんも、そしてキースくんも、なるほどと笑って頷き合っている。
俺も庭師さんたちの事はすごいと思うんだけど――でも頑張りへのご褒美に、領主城の部屋を自由に使って良いよってぽんっと鍵まであげちゃうの?
庶民の俺からすると、あまりにもスケールが大きすぎる気がするんだけど…三人は普通に納得できちゃうような事なのか。
「もちろん鍵を渡された最初は、庭仕事の拠点に使って良いという話しだったそうです。ですが…部屋の位置を知った庭師たちが、これはもしかしてと大騒ぎになりまして…」
「なるほど、ここに窓を作れば素晴らしい景観を作れるんじゃないかと言い出したんだな?」
ニッと笑って続けたマチルダさんに、侍従さんはすぐに頷いた。
「はい。そこからは本当に素早かったですね。領主様と交渉して許可を得て、信頼できる建築関係の知り合いを端から当たっていき、まずは図面を作ってもらい上に確認をしてもらい、実際に工事を始め…それが全て終わってから庭に手を入れて、今に至ります」
呆れ顔でそう教えてくれた侍従さんは、まあ出来栄えは素晴らしいですがとぽつりと呟いた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。