生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1386.【ハル視点】大門を抜けて

 衛兵というのは、どうしても領民と接する機会がとても多い職業だ。

 大門での見張りはもちろん、常に街中の巡回をしているし、何かもめ事があれば通報を受けて捕縛にも動く。

 身近で触れ合う機会が多ければ、その分親しみを持たれやすくなるのは当然だろう。

 一方、騎士はというと、これが想像以上に領民と触れ合う機会が少ないんだよな。

 騎士も巡回はしているんだが、街中を巡回する時は警戒されないために私服で回っているから除外だ。あれは騎士だとバレないようにしているからな。

 街道の巡回や魔物の討伐といった任務中は、残念ながら領民とゆっくりと交流している時間は無い。逆に任務がない時は、基本的に騎士団本部にこもって鍛えたり、仕事をしている事が多い。

 だからこそ、こういう時の態度が非常に大事になってくるんだ。

 もしここで領民を冷たくあしらったり、不愛想な態度を取ってしまうと、それだけで騎士全体のイメージが悪くなるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。

 だから俺は周りからの声かけに一々反応を返しながら、人混みの中を進んで行く事になる。

「騎士様ー」

 そう声をかけられれば、心の中では今はトライプールの騎士団所属だけどなと考えつつふわりと手を振る。

「せーのっ!がんばってねー!!」
「がんばーれー!」

 こどもたちが声を揃えた可愛らしい声かけに、にっこりと意識して笑顔を返す。

 そんな事を繰り返しているうちに、大きく開かれた大門とその前に壁のようにずらりと並ぶ衛兵たちの姿がようやく見えてきた。あともう少しだな。

「行くよ、アキト」
「…うん」

 ある程度の距離まで近づくと、その場にいた全員がバッとこちらを見た。その反応に驚いたのか、アキトはビクリと体を揺らした。

 大丈夫怖くないよと伝えるように手を握りなおすと、俺たちはゆっくりと衛兵たちのいる方へと歩き出した。

 俺は衛兵たちのすこし手前で、ぴたりと立ち止まった。

 俺が何かを言うよりも前にすっと一人だけ前に出てきた衛兵は、たしかどこかの衛兵隊長だったはずだ。

「出発式に参加するために来た。俺は遠征の参加者で、こちらは俺の伴侶候補だ」

 俺の顔を知っているこの人なら、これぐらいの説明でも大丈夫だろうか?

 そんな事を考えながらざっくりとしか説明しなかったんだが、衛兵は俺の予想以上に素早かった。

「お待ちしておりました」

 そう答えるなり、すぐに道を開けてくれた。

「遠征頑張ってくれー!」
「気をつけてなー!」
「無事に帰ってきてくださーい!」

 そんな背後からの歓声に背中を押される形で、俺達は二人揃って無事に大門を通り抜けた。

「何か…思ってたよりもあっさり通してくれたね」
「そうだね。まあ顔と名前を知られていない若手の騎士とかは、かなり丁寧に確認されるんだけどね」

 あとはたぶんあそこで名前を確認したら、俺が領主一家の一員だとバレるから…というのもあるんだろうな。

 これは別に、俺や領主一家への特別な配慮というわけではない。

 むしろ周囲の領民たちが俺の名前を聞いて更に騒ぐのを防ぐために、わざと確認しなかったんだろうな。

 そんな事を考えながら街の外へと出ていくと、そこには既にたくさんの人たちが集まっていた。

 父さんたちの行進が始まるよりも前に大門に向けて出発していた騎士たちは、大門近くの右側に集まっているようだ。

 視線を中央にずらせば、目に飛び込んでくるのは、たくさんのウマたちとその世話係たちの姿だ。

 大門の左側に集まっているのは、揃いの制服の上に防具を重ねている衛兵たち。

 衛兵には、待機中の決まりなんてものは無いからな。

 話し込んでいる人もいれば、武器を構えて訓練をしている人、街道を行ったり来たりして走り込みをしている人もいるな。

 こんな所で訓練をしているのと走り込みをしているのは、きっと新人だろうな。ベテランになるほど遠征前に体力を使おうとはしなくなるから。

「あ、ハルのお師匠さんもいるね」
「ああ、きっと師匠も参加するんだろうな」

 まあいるとは思ってたよと続けた俺は、こちらに気づいた師匠に向けてゆるりと手を振った。アキトも一緒に手を振ってくれるとは思わなかったんだが、師匠も嬉しそうに手を振り返してきた。

「あ、アキトくんだー!」

 不意に聞こえてきたそんな呼びかけに、アキトはハッと顔をあげた。

 遠くから駆け寄ってくるのは、嬉しそうな笑顔のキースだった。
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