1,387 / 1,561
1386.【ハル視点】大門を抜けて
衛兵というのは、どうしても領民と接する機会がとても多い職業だ。
大門での見張りはもちろん、常に街中の巡回をしているし、何かもめ事があれば通報を受けて捕縛にも動く。
身近で触れ合う機会が多ければ、その分親しみを持たれやすくなるのは当然だろう。
一方、騎士はというと、これが想像以上に領民と触れ合う機会が少ないんだよな。
騎士も巡回はしているんだが、街中を巡回する時は警戒されないために私服で回っているから除外だ。あれは騎士だとバレないようにしているからな。
街道の巡回や魔物の討伐といった任務中は、残念ながら領民とゆっくりと交流している時間は無い。逆に任務がない時は、基本的に騎士団本部にこもって鍛えたり、仕事をしている事が多い。
だからこそ、こういう時の態度が非常に大事になってくるんだ。
もしここで領民を冷たくあしらったり、不愛想な態度を取ってしまうと、それだけで騎士全体のイメージが悪くなるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。
だから俺は周りからの声かけに一々反応を返しながら、人混みの中を進んで行く事になる。
「騎士様ー」
そう声をかけられれば、心の中では今はトライプールの騎士団所属だけどなと考えつつふわりと手を振る。
「せーのっ!がんばってねー!!」
「がんばーれー!」
こどもたちが声を揃えた可愛らしい声かけに、にっこりと意識して笑顔を返す。
そんな事を繰り返しているうちに、大きく開かれた大門とその前に壁のようにずらりと並ぶ衛兵たちの姿がようやく見えてきた。あともう少しだな。
「行くよ、アキト」
「…うん」
ある程度の距離まで近づくと、その場にいた全員がバッとこちらを見た。その反応に驚いたのか、アキトはビクリと体を揺らした。
大丈夫怖くないよと伝えるように手を握りなおすと、俺たちはゆっくりと衛兵たちのいる方へと歩き出した。
俺は衛兵たちのすこし手前で、ぴたりと立ち止まった。
俺が何かを言うよりも前にすっと一人だけ前に出てきた衛兵は、たしかどこかの衛兵隊長だったはずだ。
「出発式に参加するために来た。俺は遠征の参加者で、こちらは俺の伴侶候補だ」
俺の顔を知っているこの人なら、これぐらいの説明でも大丈夫だろうか?
そんな事を考えながらざっくりとしか説明しなかったんだが、衛兵は俺の予想以上に素早かった。
「お待ちしておりました」
そう答えるなり、すぐに道を開けてくれた。
「遠征頑張ってくれー!」
「気をつけてなー!」
「無事に帰ってきてくださーい!」
そんな背後からの歓声に背中を押される形で、俺達は二人揃って無事に大門を通り抜けた。
「何か…思ってたよりもあっさり通してくれたね」
「そうだね。まあ顔と名前を知られていない若手の騎士とかは、かなり丁寧に確認されるんだけどね」
あとはたぶんあそこで名前を確認したら、俺が領主一家の一員だとバレるから…というのもあるんだろうな。
これは別に、俺や領主一家への特別な配慮というわけではない。
むしろ周囲の領民たちが俺の名前を聞いて更に騒ぐのを防ぐために、わざと確認しなかったんだろうな。
そんな事を考えながら街の外へと出ていくと、そこには既にたくさんの人たちが集まっていた。
父さんたちの行進が始まるよりも前に大門に向けて出発していた騎士たちは、大門近くの右側に集まっているようだ。
視線を中央にずらせば、目に飛び込んでくるのは、たくさんのウマたちとその世話係たちの姿だ。
大門の左側に集まっているのは、揃いの制服の上に防具を重ねている衛兵たち。
衛兵には、待機中の決まりなんてものは無いからな。
話し込んでいる人もいれば、武器を構えて訓練をしている人、街道を行ったり来たりして走り込みをしている人もいるな。
こんな所で訓練をしているのと走り込みをしているのは、きっと新人だろうな。ベテランになるほど遠征前に体力を使おうとはしなくなるから。
「あ、ハルのお師匠さんもいるね」
「ああ、きっと師匠も参加するんだろうな」
まあいるとは思ってたよと続けた俺は、こちらに気づいた師匠に向けてゆるりと手を振った。アキトも一緒に手を振ってくれるとは思わなかったんだが、師匠も嬉しそうに手を振り返してきた。
「あ、アキトくんだー!」
不意に聞こえてきたそんな呼びかけに、アキトはハッと顔をあげた。
遠くから駆け寄ってくるのは、嬉しそうな笑顔のキースだった。
大門での見張りはもちろん、常に街中の巡回をしているし、何かもめ事があれば通報を受けて捕縛にも動く。
身近で触れ合う機会が多ければ、その分親しみを持たれやすくなるのは当然だろう。
一方、騎士はというと、これが想像以上に領民と触れ合う機会が少ないんだよな。
騎士も巡回はしているんだが、街中を巡回する時は警戒されないために私服で回っているから除外だ。あれは騎士だとバレないようにしているからな。
街道の巡回や魔物の討伐といった任務中は、残念ながら領民とゆっくりと交流している時間は無い。逆に任務がない時は、基本的に騎士団本部にこもって鍛えたり、仕事をしている事が多い。
だからこそ、こういう時の態度が非常に大事になってくるんだ。
もしここで領民を冷たくあしらったり、不愛想な態度を取ってしまうと、それだけで騎士全体のイメージが悪くなるかもしれない。それだけは絶対に避けたい。
だから俺は周りからの声かけに一々反応を返しながら、人混みの中を進んで行く事になる。
「騎士様ー」
そう声をかけられれば、心の中では今はトライプールの騎士団所属だけどなと考えつつふわりと手を振る。
「せーのっ!がんばってねー!!」
「がんばーれー!」
こどもたちが声を揃えた可愛らしい声かけに、にっこりと意識して笑顔を返す。
そんな事を繰り返しているうちに、大きく開かれた大門とその前に壁のようにずらりと並ぶ衛兵たちの姿がようやく見えてきた。あともう少しだな。
「行くよ、アキト」
「…うん」
ある程度の距離まで近づくと、その場にいた全員がバッとこちらを見た。その反応に驚いたのか、アキトはビクリと体を揺らした。
大丈夫怖くないよと伝えるように手を握りなおすと、俺たちはゆっくりと衛兵たちのいる方へと歩き出した。
俺は衛兵たちのすこし手前で、ぴたりと立ち止まった。
俺が何かを言うよりも前にすっと一人だけ前に出てきた衛兵は、たしかどこかの衛兵隊長だったはずだ。
「出発式に参加するために来た。俺は遠征の参加者で、こちらは俺の伴侶候補だ」
俺の顔を知っているこの人なら、これぐらいの説明でも大丈夫だろうか?
そんな事を考えながらざっくりとしか説明しなかったんだが、衛兵は俺の予想以上に素早かった。
「お待ちしておりました」
そう答えるなり、すぐに道を開けてくれた。
「遠征頑張ってくれー!」
「気をつけてなー!」
「無事に帰ってきてくださーい!」
そんな背後からの歓声に背中を押される形で、俺達は二人揃って無事に大門を通り抜けた。
「何か…思ってたよりもあっさり通してくれたね」
「そうだね。まあ顔と名前を知られていない若手の騎士とかは、かなり丁寧に確認されるんだけどね」
あとはたぶんあそこで名前を確認したら、俺が領主一家の一員だとバレるから…というのもあるんだろうな。
これは別に、俺や領主一家への特別な配慮というわけではない。
むしろ周囲の領民たちが俺の名前を聞いて更に騒ぐのを防ぐために、わざと確認しなかったんだろうな。
そんな事を考えながら街の外へと出ていくと、そこには既にたくさんの人たちが集まっていた。
父さんたちの行進が始まるよりも前に大門に向けて出発していた騎士たちは、大門近くの右側に集まっているようだ。
視線を中央にずらせば、目に飛び込んでくるのは、たくさんのウマたちとその世話係たちの姿だ。
大門の左側に集まっているのは、揃いの制服の上に防具を重ねている衛兵たち。
衛兵には、待機中の決まりなんてものは無いからな。
話し込んでいる人もいれば、武器を構えて訓練をしている人、街道を行ったり来たりして走り込みをしている人もいるな。
こんな所で訓練をしているのと走り込みをしているのは、きっと新人だろうな。ベテランになるほど遠征前に体力を使おうとはしなくなるから。
「あ、ハルのお師匠さんもいるね」
「ああ、きっと師匠も参加するんだろうな」
まあいるとは思ってたよと続けた俺は、こちらに気づいた師匠に向けてゆるりと手を振った。アキトも一緒に手を振ってくれるとは思わなかったんだが、師匠も嬉しそうに手を振り返してきた。
「あ、アキトくんだー!」
不意に聞こえてきたそんな呼びかけに、アキトはハッと顔をあげた。
遠くから駆け寄ってくるのは、嬉しそうな笑顔のキースだった。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。