生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1387.【ハル視点】可愛いと可愛い

 ああ、キースは本当にアキトを慕っているんだな。その笑顔を見ただけで、どれだけアキトに懐いているのかが手に取るように分かる。そんな表情だった。

 出迎えるアキトの方も、ニコニコと嬉しそうな笑顔だ。

 伴侶候補と弟の仲が良いのは、俺としてもうれしい事だ。

 それにしても、あんなに人見知りだったキースに、ここまで距離を詰める相手ができるとはな。

 感心している間にアキトを目指して一直線に駆け寄ってきたキースは、アキトの後ろに立っている俺に気付くと、パァァッとさらに嬉しそうな笑顔になった。

「あー、ハル兄もいる!」

 この表情の変化は、兄として嬉しいな。

「ああ、いるよ。…なんでだ?」

 いると思っていなかったのかと聞いてみれば、キースはごめんね変な意味じゃないんだよと慌てた様子で続けた。
 
「参加者さんたちはあっちの方に集まってるから、ここにいるのはアキトくんだけだと思ってたんだ」

 そう言われて周りを見てみれば、確かにこの辺りにいるのは軍服でも無ければ武器や防具も身につけていない人が多いな。

 この辺りにいるのは見送りに来た伴侶や伴侶候補、それに家族たちなんだろうな。何人か、知り合いの伴侶や親などが混ざっているから間違いないだろう。

「なるほど、そういう意味か。俺もあちらに行かないと駄目だが、アキトと一緒にたった今着いた所だからな」

 笑いながらそう説明すれば、キースはニコニコと笑顔を浮かべて答えた。

「そうなんだー!」

 その場でぴょんぴょんと何度も小さく飛び跳ねているのが、何とも可愛らしい。会えて嬉しいと、全身を使って伝えてくれているのが分かる。

 周りの人たちも微笑ましそうにキースを見ているな。領主一家の一員だと気づいている人もいれば、単に可愛らしいこどもだと見ている人もいそうな雰囲気だ。

 アキトはそんなキースにそっと手を伸ばすと、優しく頭を撫で始めた。キースは嫌がるでも照れるでも無く、ただ嬉しそうに目を細めてされるがままになっている。

 うん、今日もアキトとキースは可愛いな。

「そういえば、キースくんは行進は見ずに先に来てたんだね?」
「うん、そうなんだ。僕も…できれば行進は見たかったんだけどね」

 答えるキースは、少し悔しそうな表情だ。

 なんでも行進が始まると一気に人が増えるから、まだこどものキースには危険だと言われ止められたらしい。

 見られなかったキースは可愛そうだと思うんが、申し訳ないがそこは俺も同意見だな。出発前にキースが怪我でもしていたら、俺達だって遠征に身が入らないかもしれない。

「キースくんは我慢できてえらいね」
「え…?そ、そうかな?」

 優しく褒められたキースはびっくりした様子でアキトを見てから、照れくさそうに笑った。まさかそこを褒められるとは、思わなかったんだろうな。

「ウィル兄とジルさんと来たのか?」

 俺が横からそう尋ねてみれば、キースはううんと首を振った。

「二人は準備があるからって大急ぎで大門に向かったから一緒には来れなかったんだ」
「じゃあここまでは、誰と一緒に来たの?」

 アキトの質問に、キースはあっさりと答えた。

「えっとね、使用人のみんなと一緒に来たんだ」

 周りをぐるりと見回したアキトは、騎士たちが集まっている場所でぴたりと視線を止めた。

 ああ、たしかにそこに数人の使用人たちがいるな。その数人もわざと騎士に紛れるように振る舞っているようなんだが、しっかり顔を覚えているアキトはすぐに気づいたようだ。

「そうか、それなら安心だな」
「うん、みんなのお勧めのお店とか教えてもらったんだ」

 どうやら使用人たちに囲まれての移動も、楽しいものだったようだ。本屋さんとお菓子のお店、あと屋台も教えてもらったよと笑顔で報告してくれた。

 ああ、このままキースとアキトと話していたいんだが、近づいてくる存在感のある気配がそれを許してはくれない。

「くわしい話しを聞きたい所だけど、そろそろ行かないと駄目そうだな」

 俺がそう口にした瞬間、大門の方から爆発的な大歓声が聞こえてきた。父さんたちの行進が、徐々に大門に近づいてきている。

「遠征が終わったら話すね」
「ああ、そうしてくれ」

 ぜひ聞きたいと答えた俺が歩き出そうとした瞬間、アキトに呼び止められた。

「あ、ハル!出発式が終わってからも…少しぐらいは話せるの?」

 そうだ。それを言うのを忘れていたな。

「ああ、見送りの人たちに挨拶をするための時間があるから」
「そっか。それじゃあキースくんと一緒に待ってるね」
「そうしてくれ」
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