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1395.【ハル視点】アキトとキース
ああ、駄目だな。
さっき何も考えずに『分かってるけど嫉妬した』とはっきり口にしたせいで、アキトが明らかな困り顔になってしまっている。
今の正解は、そうだったんだと納得して答えるべきだったな。
アキトの表情からして、俺に呆れてるというわけではなさそうなのが救いだ。おそらく単にその発言にどう答えれば良いのかが分からず、悩んでくれているみたいだ。
余裕の無い大人で、本当に申し訳無い。明らかにアキトを可愛がっているだけの家族にすら、妬くなんてね。
「ごめん、こんな事を言ってる場合じゃないよね」
俺は自分からそう謝ると、すぐに話題を変える事にした。出発までの時間も、もうあまり残っていないからね。
「あ、うん」
俺は腕の中のアキトと、しっかりと視線を合わせてから口を開いた。
「アキト、今回の遠征中も、できるだけ一人では出歩かないで欲しいんだ」
本当なら街に出ないで欲しいと言いたい所なんだけど、それはあまりにも可愛そうだろうと口にしなかった。マティさんやジルさん、いやボルト辺りが、護衛の手配をしてくれるだろうからな。
かなり一方的な押しつけがましい願いなんだが、アキトはというと何故と問うでもなく、堅苦しいと文句を言うでもなかった。
ただまっすぐに俺の目を見つめ返しながら、こくりと頷いてくれた。考える時間も無かったんじゃないかと思うぐらいの、即答だった。
「うん、そのつもりだよ」
俺が何の意味も無くそんな事を言うはずがないと、信じてくれているんだろうな。アキトからの信頼を噛み締めながら、俺はさらに説明を続ける。
信頼に応える意味でも、理由はきちんと伝えておきたいからな。
「もしあの隠し部屋が盗賊団のものだとしたら、全員があそこにいるとは思えないんだ。既に街中に潜入していて、騒ぎを起こそうとしている盗賊がいる可能性がある」
さすがにここでアキトに詳しい事まで説明することはできないんだが、領都に残る衛兵たちは密かに巡回を増やす事になっているし、街に残る騎士だちも戦闘への備えを強化しておく事に決まっている。
「…そっか。教えてくれてありがとう。ちゃんと一人では行動しないようにはするけど、どんな罠があるか分からない隠し部屋に行くハルの方が危険なんだからね」
分かってる?と心配そうに見上げられた俺は、すぐにこくりと頷いた。
「分かってる」
「絶対に生きて帰ってきてね?」
「もちろんだ」
俺の返事を聞いたアキトは、もう一度力を入れてぎゅーっと強く抱きしめてくれた。
ああこうされると、絶対にこの腕の中に帰ろうと思うな。
伴侶のためにとか伴侶候補のためにとか言う同僚や家族をどこか冷めた目で見てきた俺が、こんな事を思う日が来るなんて想像もしていなかったな。
抱き着いていたアキトの腕が解けてしまうのがすこし寂しいが、さすがにここでいつまでも抱き合っているわけにもいかない。
名残惜しいが自分からもそっと腕を解いた俺は、そこでアキトに向かって笑いかけた。
何も心配しなくて良いよ。絶対に帰ってくるから。
あまり言葉を重ねるよりも、こういう時は不思議と笑顔だけの方が伝わるような気がしたんだ。
「いってらっしゃい、ハル」
「ああ、いってきます、アキト」
マティさんやウィル兄から長かったなーなんて揶揄いの声をかけられたが、俺はそれを綺麗に聞き流しながら視線だけでキースを探した。
俺の視線に気づいたキースは、ウィル兄の隣からててっと小走りで俺の前に駆け寄ってきてくれた。片膝を床についてそっと抱きしめれば、キースはえへへと耳元で満足そうな笑い声をあげた。
「ハル兄、遠征気を付けていってきてね」
「ありがとう、キース。もちろん気を付けるよ」
「あのね、一人は寂しいから…ちゃんとアキトくんと一緒にお留守番してるからね!早く帰ってきてね!」
この言い方は自分が寂しいから…じゃなさそうだな。アキトが寂しいだろうから一緒にいるよという話しなんだろう。
誇らし気なキースの顔を見つめながら、俺は笑顔で頷いた。
「ああ、もちろんだ。アキトを頼むな」
「うんっ!」
最後になでなでと頭を撫でてから、キースの体を解放する。
普段ならこの後は伴侶や伴侶候補と過ごす時間なんだが…残念ながら今日はもう出発までの時間はほとんど残されていなかった。
「よし、行こう」
さっき何も考えずに『分かってるけど嫉妬した』とはっきり口にしたせいで、アキトが明らかな困り顔になってしまっている。
今の正解は、そうだったんだと納得して答えるべきだったな。
アキトの表情からして、俺に呆れてるというわけではなさそうなのが救いだ。おそらく単にその発言にどう答えれば良いのかが分からず、悩んでくれているみたいだ。
余裕の無い大人で、本当に申し訳無い。明らかにアキトを可愛がっているだけの家族にすら、妬くなんてね。
「ごめん、こんな事を言ってる場合じゃないよね」
俺は自分からそう謝ると、すぐに話題を変える事にした。出発までの時間も、もうあまり残っていないからね。
「あ、うん」
俺は腕の中のアキトと、しっかりと視線を合わせてから口を開いた。
「アキト、今回の遠征中も、できるだけ一人では出歩かないで欲しいんだ」
本当なら街に出ないで欲しいと言いたい所なんだけど、それはあまりにも可愛そうだろうと口にしなかった。マティさんやジルさん、いやボルト辺りが、護衛の手配をしてくれるだろうからな。
かなり一方的な押しつけがましい願いなんだが、アキトはというと何故と問うでもなく、堅苦しいと文句を言うでもなかった。
ただまっすぐに俺の目を見つめ返しながら、こくりと頷いてくれた。考える時間も無かったんじゃないかと思うぐらいの、即答だった。
「うん、そのつもりだよ」
俺が何の意味も無くそんな事を言うはずがないと、信じてくれているんだろうな。アキトからの信頼を噛み締めながら、俺はさらに説明を続ける。
信頼に応える意味でも、理由はきちんと伝えておきたいからな。
「もしあの隠し部屋が盗賊団のものだとしたら、全員があそこにいるとは思えないんだ。既に街中に潜入していて、騒ぎを起こそうとしている盗賊がいる可能性がある」
さすがにここでアキトに詳しい事まで説明することはできないんだが、領都に残る衛兵たちは密かに巡回を増やす事になっているし、街に残る騎士だちも戦闘への備えを強化しておく事に決まっている。
「…そっか。教えてくれてありがとう。ちゃんと一人では行動しないようにはするけど、どんな罠があるか分からない隠し部屋に行くハルの方が危険なんだからね」
分かってる?と心配そうに見上げられた俺は、すぐにこくりと頷いた。
「分かってる」
「絶対に生きて帰ってきてね?」
「もちろんだ」
俺の返事を聞いたアキトは、もう一度力を入れてぎゅーっと強く抱きしめてくれた。
ああこうされると、絶対にこの腕の中に帰ろうと思うな。
伴侶のためにとか伴侶候補のためにとか言う同僚や家族をどこか冷めた目で見てきた俺が、こんな事を思う日が来るなんて想像もしていなかったな。
抱き着いていたアキトの腕が解けてしまうのがすこし寂しいが、さすがにここでいつまでも抱き合っているわけにもいかない。
名残惜しいが自分からもそっと腕を解いた俺は、そこでアキトに向かって笑いかけた。
何も心配しなくて良いよ。絶対に帰ってくるから。
あまり言葉を重ねるよりも、こういう時は不思議と笑顔だけの方が伝わるような気がしたんだ。
「いってらっしゃい、ハル」
「ああ、いってきます、アキト」
マティさんやウィル兄から長かったなーなんて揶揄いの声をかけられたが、俺はそれを綺麗に聞き流しながら視線だけでキースを探した。
俺の視線に気づいたキースは、ウィル兄の隣からててっと小走りで俺の前に駆け寄ってきてくれた。片膝を床についてそっと抱きしめれば、キースはえへへと耳元で満足そうな笑い声をあげた。
「ハル兄、遠征気を付けていってきてね」
「ありがとう、キース。もちろん気を付けるよ」
「あのね、一人は寂しいから…ちゃんとアキトくんと一緒にお留守番してるからね!早く帰ってきてね!」
この言い方は自分が寂しいから…じゃなさそうだな。アキトが寂しいだろうから一緒にいるよという話しなんだろう。
誇らし気なキースの顔を見つめながら、俺は笑顔で頷いた。
「ああ、もちろんだ。アキトを頼むな」
「うんっ!」
最後になでなでと頭を撫でてから、キースの体を解放する。
普段ならこの後は伴侶や伴侶候補と過ごす時間なんだが…残念ながら今日はもう出発までの時間はほとんど残されていなかった。
「よし、行こう」
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