生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1396.【ハル視点】集合

 呼びかけに揃って頷いた俺達三人は、前を歩く父さんの背中を追って歩き出した。

 当然だが名残惜しい気持ちはある。だがそれでも父さんも、ファーガス兄さんも、ウィル兄も、そして俺も一切振り返らなかった。

 次に大切な人に会えるのは、無事にここに帰って来た時だ。そう自分に言い聞かせながら、まっすぐに前を見て進んで行く。

 連なって歩いている俺達四人を見て、まだ周囲に残っていた参加者たちも自然と後ろに合流し始めた。

 気づけばかなりの人数を後ろに引きつれて歩いているという状況だが、先頭を歩く父さんは動じた様子も慌てた様子も無く自分の速度でゆっくりと歩いて行く。



 既に整列して待機していた人たちの所へと辿り着けば、背後に並んでいた参加者たちもすぐにそれぞれの場所へと散っていった。

 俺もさっきの出発式の時にいた辺りに移動しようかと思っていたんだが、ウィル兄にそっと肩を押さえて止められてしまった。優しく押さえているように見えるが、実は結構な力が込められている。

「ウィル兄?」

 思わずそう名前を呼べば、ウィル兄は大丈夫だよと口を開いた。

「ちゃんとハルのウマもこっちにお願いねって、ギュームには頼んであるからねー安心してここで待っててー」

 周囲には聞こえないぐらいの小さな声で、ウィル兄は笑いながら俺にそう囁いた。なんだ、既に手配してあったのか。

「出発式はともかく、移動中は近くにいてくれた方が安心だしな」

 ファーガス兄さんにまでそう言われれば、俺も別に無理に離れようとは思わない。どうせ遠征参加者には、俺の顔や肩書を知っている人も多いからな。

「分かった。ここにいる」
「素直だねー」
「俺はいつでも素直だろう?」

 周囲を気にして小声のままでそんな会話をしていると、すぐにギュームが俺達の方へと近づいてきた。後ろには、器用にも四頭ものウマたちを引きつれている。

 四頭ものウマを連れて歩いているギュームには、異様な迫力がある。近くに並んでいる遠征参加者たちの視線も、ギュームとウマたちに釘付けだ。

「みなさま、お待たせしました」
「いや、それほど待ってはいない。ウマの案内、ご苦労だった」

 労いの言葉を口にした父さんに、ギュームは笑顔を返す。

「それなら良かったです」

 あまりにもいつも通りの声のトーンで、ギュームはさらりとそう答えた。

 周囲に並んでいた参加者たちは、えっ?と驚いた表情でギュームを凝視している。他のウマを連れて移動していたウマの世話係たちは、少しだけ心配そうにこちらのやり取りを伺っている。

 この辺りの反応の違いは、ギュームの事を知っているかいないかだろうな。

 父さんから直接労いの声をかけられた時の反応というのは、使用人も騎士も衛兵も大半は数種類に分類できる。

 誇らし気にする者、突然の事に慌ててしまう者、思いっきり赤面する者、驚いて硬直する者なんてのもいるか。

 ここまで普通に答える人は、かなり少ない。

 ギュームも父さんを敬っていないというわけでは無いんだが、何より優先するのがウマだから特に父さんの前でも緊張しないらしいんだよな。

 ちなみに父さんの方は、緊張するでも無く怖がるでも無く、いつでも自然体で接してくれるギュームを気に入っているらしい。

 ギュームが領主一家のためにと熱心に仕事をしているのは周りにも知られているから、使用人仲間からも態度が悪いと怒られる事は無いらしい。

「さあ、みんな」

 ギュームが穏やかにそう声をかけると、ウマたちは同時に動き出した。

 別に紐を引かれているわけでも追いたてられているわけでも無いのに、それぞれの乗り手の前へと歩いて来るとぴたりとそこで立ち止まる。

 ギュームは誇らし気にニコニコと笑っている。こうして見るとウマの賢さが、よく分かるんだよな。

 もしここにいるのがアキトなら、すごい!賢い!偉い!綺麗!と言いながら、目をキラキラさせて大喜びするだろうな。

 想像だけでふっと笑った俺を、目の前に立ったタユは明らかに呆れた様子で見つめてくる。

「タユ、今日はよろしく頼む」

 そう声をかければ、小さな嘶きが返ってきた。シュリのようにはっきりとした意味までは分からないんだが、仕方ないから乗せてやるとか言ってそうな雰囲気だ。
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