生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1398.【ハル視点】二人の隊長

「これより、出発する!」

 声高くそう叫んだ父さんに、周囲の人たちから一斉にハッと声が返る。俺達兄弟も、もちろん一緒になって答えた。

 返答に満足そうに頷いた父さんは、すぐに移動を開始した。

 今回の遠征部隊の隊列は、こうだ。

 まずは隊を率いる父さんが行列の一番前を進み、そのすぐ後ろには背中を守るかのようにファーガス兄さんが続く。

 ウィル兄と俺は、その後ろを二人で隣に並んで進んで行く。

 ウィル兄と俺の後ろには騎馬に乗った参加者たちの一団が続き、さらにその後ろには徒歩で移動する参加者達が続いているはずだ。

 集団の速度は徐々に上がってきてはいるが、それでも今はまだ軽く流すように駆けているぐらいの速さだ。

 さすがにこれだけの集団全員に、最初から全力で駆けさせるのは危険だからな。その辺りは、父さんがうまく調整してくれているんだろう。

 俺達はひたすらに、街道にそって進み続ける。

 しばらく進んでそろそろ街からは俺達の姿が見えなくなったかというくらいの距離の所で、二つの集団が背後から一気に速度を上げて駆け寄って来た。

 これは事前に決められていた、計画通りの行動だ。だから俺達兄弟も何も言わずに、父さんを目指しているその集団を通り抜けさせる。

「領主様!」

 そう叫んだのは、騎士団では珍しい弓が得意な者だけを集めた部隊を率いているロア隊長だ。

 このロア隊長、パッと見た感じでは騎士らしいとは言い難い体型をしている。どちらかと言うと細めの体つきで、申し訳ないがお世辞にも強そうだとは言えない雰囲気を持つ男だ。

 実際に彼は無口な事もあり、初対面では侮られやすいらしい。だが、その全身はしなやかな筋肉に覆われていて、弓を引かせればたやすく他を圧倒する。

 俺の知る中でも、おそらく三本の指に入るぐらいの弓の腕前の持ち主だ。ここにアキトがいたら、紹介してやりたいぐらいだな。

「お待たせいたしました!」

 続いて父さんの横に並んでそう叫んだのは、魔法が得意な部隊を率いているソフラ隊長だ。

 こちらは逆に一見して分かるぐらいのかなりの筋肉質で、ある意味一番騎士らしい体型をしている男と言える。

 ちなみに魔法で戦うのに筋肉は必要無いんじゃないか?と不思議そうに尋ねた人に、私はただ自分の体を鍛えるのが楽しいだけだと答えたという逸話もある。

 彼はその見た目からは想像もできないほど、繊細な魔力操作が得意な人でもある。今もウマを全力で駆けさせながら、片手では魔力を練り上げているという器用さを見せている。

 こうしておけば、いつでも魔法を放てるからと聞いた事がある。 

 父さんはロア隊長とソフラ隊長を見ると、ふっと笑みを浮かべた。

「良いタイミングだ、二人とも。頼んだ」
「ハッ、おまかせください!」
「光栄でございますっ!」

 ウマの背に乗ったまま片手で敬礼をしてみせた二人の隊長は、父さんの前に躍り出た。

 出発時には父さんが一番前を行く事で士気を高めているんだが、さすがに一番危険な先頭をいつまでも領主様に走らせるわけにはいかない。

 そんな騎士達の総意で選ばれたのが、遠距離攻撃の得意なこの二人の隊長と隊員たちだ。



 ロア隊長とソフラ隊長は、先頭に立つとさらに速度をあげた。もちろんこの速度に対応できないような参加者はここにはいない。

 ぐんぐんと速度が上がっていく中、不意に強い魔物が一直線にこちらに向かって近づいてくる気配を感じた。

 これだけの人数とウマの集団に向かってわざわざ向かってくるなんて、よほど強いか、既に判断力が無いか、それとも何かに追われているかの三択だろうな。

 俺がパッと武器に手をやって身構えるのとほぼ同じぐらいに、父さんとファーガス兄さん、ウィル兄、そして数人の騎士や衛兵たちも身構えた。

 近づいてくる魔物を変に刺激をしないために、既に近づいてくる気配に気づいた者たちも声を張り上げたりはしない。

 ただウマを走らせたまま、視線だけをそちらへ向けて警戒する。
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