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1400.【ハル視点】最初の魔法
参加者たち全員から注視されているこの状況下でも、ソフラは落ち着いていた。慌てた様子もなく、ぶつぶつと口内で呪文を唱えると即座に魔法を発動する。
ここで最初に攻撃魔法を選ばないのが、ソフラ隊長のすごい所だと俺は思う。
背後にはたくさんの人の目があり、集団の中で自分だけが先制攻撃が可能な好機だ。しかもその上、今回の指揮を執っている父さんからの許可もある。
そんな状況に置かれたら、普通の魔法使いなら迷いなく攻撃魔法を選択するだろう。
もし――ここにいるのが冒険者の魔法使いだったなら、自分の持つ魔法の中で一番攻撃力が高く、かつ一番派手な魔法を選んで放つだろうな。
一撃で仕留めてやるという意識と、目立ちちたいという気持ち。あとは周囲からの視線を気にしての、半分は見栄のようなものだな。
とはいえ、別に攻撃魔法を選ぶのが悪い手というわけでは無い。
本当に一撃で仕留められるなら、怪我の危険性だって減る。問題は仕留められなかった時…なんだよな。
特に今回のように大人数で移動している場合には、仕留め損なって整列している隊列に突っ込まれただけでも被害は甚大だ。
ソフラ隊長は自分の評判や周囲からの評価よりも、隊としての被害を減らす事を選べる人だ。
最初に使ったのは、ごく少量の魔力だけを使ったとても単純な水魔法だった。魔法を使えるようになったばかりの初心者が、魔法練習をする時によく使う水を使って作る丸い形だ。
背後からはここで水魔法?なんて驚きの声や、不思議そうな反応がうっすらと聞こえてくる。
反応が気になって思わず視線を向けてしまったんだが、父さんは無言のまま満足そうに頷いている。
なるほど、こうなるのも想定済みだったのか。
ソフラが放った水魔法の水の玉は、飛び出してきたワイルドボアがちょうど着地する地点の地面にピンポイントでぶつかった。
地面に触れた水の玉がパシャンと潰れた次の瞬間、ソフラはそこの地面を土魔法で一瞬にして柔らかくしてみせた。
あまりにも唐突にぬかるみになってしまった地面を、既に空中にいたワイルドボアが避ける術は無い。
そうして柔らかい地面に足を取られたワイルドボアがすこし姿勢を崩した所で、ソフラはすかさず二度目の土魔法を使い、いくつものトゲを作り上げた。
植物か何かのように地面から一気に生えたその鋭いトゲは、頑丈なワイルドボアの亜種の足にも何なく突き刺さる。
「久しぶりに見たが、やっぱりソフラ隊長は咄嗟の判断力がすごいな」
ファーガス兄さんは。口の端を少しだけ持ち上げながらぽつりとそう呟いた。確かにすごい判断力だな。
「ねー、すごいよねーあのままだと、こっちに突っ込んできたかもしれないし…俺達のために、足止めを優先してくれたんだねー」
うん。ウィル兄のこれは明らかに周囲に聞かせるための答えだな。一応ファーガス兄さんに話す振りはしているんだが、声が少し大き目だ。
基本的に魔法部隊と弓部隊の隊員たちは、騎士団本部で行われている誰でも参加可能なあの朝の特訓には一切参加していない。
さすがにぽんぽんと魔法や弓矢が飛び交う場所で訓練をするのは、あまりにも危険すぎるからな。
しかもこうして一緒に遠征に出るなんて機会も、本当に滅多に無い。
だから参加者の中には魔法部隊と弓部隊と一緒に行動した事の無い、彼らの腕前を知らない騎士や衛兵も普通に混ざっているんだよな。
そんな彼らにも、ソフラの実力を正しく理解してもらうための説明だな。
どうやらウィル兄さんは、かなりソフラ隊長を気に入っているらしい。今も目を輝かせて見つめているもんな。
あの顔は、ソフラ隊長はやっぱりおもしろーいとか考えてる顔だ。
ここで最初に攻撃魔法を選ばないのが、ソフラ隊長のすごい所だと俺は思う。
背後にはたくさんの人の目があり、集団の中で自分だけが先制攻撃が可能な好機だ。しかもその上、今回の指揮を執っている父さんからの許可もある。
そんな状況に置かれたら、普通の魔法使いなら迷いなく攻撃魔法を選択するだろう。
もし――ここにいるのが冒険者の魔法使いだったなら、自分の持つ魔法の中で一番攻撃力が高く、かつ一番派手な魔法を選んで放つだろうな。
一撃で仕留めてやるという意識と、目立ちちたいという気持ち。あとは周囲からの視線を気にしての、半分は見栄のようなものだな。
とはいえ、別に攻撃魔法を選ぶのが悪い手というわけでは無い。
本当に一撃で仕留められるなら、怪我の危険性だって減る。問題は仕留められなかった時…なんだよな。
特に今回のように大人数で移動している場合には、仕留め損なって整列している隊列に突っ込まれただけでも被害は甚大だ。
ソフラ隊長は自分の評判や周囲からの評価よりも、隊としての被害を減らす事を選べる人だ。
最初に使ったのは、ごく少量の魔力だけを使ったとても単純な水魔法だった。魔法を使えるようになったばかりの初心者が、魔法練習をする時によく使う水を使って作る丸い形だ。
背後からはここで水魔法?なんて驚きの声や、不思議そうな反応がうっすらと聞こえてくる。
反応が気になって思わず視線を向けてしまったんだが、父さんは無言のまま満足そうに頷いている。
なるほど、こうなるのも想定済みだったのか。
ソフラが放った水魔法の水の玉は、飛び出してきたワイルドボアがちょうど着地する地点の地面にピンポイントでぶつかった。
地面に触れた水の玉がパシャンと潰れた次の瞬間、ソフラはそこの地面を土魔法で一瞬にして柔らかくしてみせた。
あまりにも唐突にぬかるみになってしまった地面を、既に空中にいたワイルドボアが避ける術は無い。
そうして柔らかい地面に足を取られたワイルドボアがすこし姿勢を崩した所で、ソフラはすかさず二度目の土魔法を使い、いくつものトゲを作り上げた。
植物か何かのように地面から一気に生えたその鋭いトゲは、頑丈なワイルドボアの亜種の足にも何なく突き刺さる。
「久しぶりに見たが、やっぱりソフラ隊長は咄嗟の判断力がすごいな」
ファーガス兄さんは。口の端を少しだけ持ち上げながらぽつりとそう呟いた。確かにすごい判断力だな。
「ねー、すごいよねーあのままだと、こっちに突っ込んできたかもしれないし…俺達のために、足止めを優先してくれたんだねー」
うん。ウィル兄のこれは明らかに周囲に聞かせるための答えだな。一応ファーガス兄さんに話す振りはしているんだが、声が少し大き目だ。
基本的に魔法部隊と弓部隊の隊員たちは、騎士団本部で行われている誰でも参加可能なあの朝の特訓には一切参加していない。
さすがにぽんぽんと魔法や弓矢が飛び交う場所で訓練をするのは、あまりにも危険すぎるからな。
しかもこうして一緒に遠征に出るなんて機会も、本当に滅多に無い。
だから参加者の中には魔法部隊と弓部隊と一緒に行動した事の無い、彼らの腕前を知らない騎士や衛兵も普通に混ざっているんだよな。
そんな彼らにも、ソフラの実力を正しく理解してもらうための説明だな。
どうやらウィル兄さんは、かなりソフラ隊長を気に入っているらしい。今も目を輝かせて見つめているもんな。
あの顔は、ソフラ隊長はやっぱりおもしろーいとか考えてる顔だ。
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