生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1401.【ハル視点】衛兵たちの対策会議?

 ソフラが選んだのは、自分が目立つ事でも、敵を仕留める事でも無かった。その場で魔物の足止めをする事、ただそれだけが目的だったんだろう。

 他の隊員への信頼があるからこそ、取れる戦法だな。

 暴れても暴れても全く抜けない土のトゲのせいで、叫び続けているワイルドボアはその場からは動けなくなっている。

 そこにすかさず周囲の隊員たちが放った攻撃魔法が、次々と襲い掛かって行く。

 炎の球体を飛ばす火魔法に、風の刃の塊をぶつける風魔法、土のつぶてで攻撃する土魔法などその種類も威力も様々だ。

 同じ火魔法でも炎の球体を飛ばす人もいれば、炎の矢を何本も作って飛ばしている人もいる。

 中には土魔法で作った土製の短剣を、風の魔法で飛ばすなんて器用な事をしている人もいるな。

 いったいあれは、どうやって発動しているんだろう?

 正直かなり気になるんだが、さすがに戦闘中の人を捕まえてのんびりとそんな事を聞いている暇は無い。

 もし機会があれば、後で聞くか。せめて顔だけでも覚えておこうと、その魔法を発動している人の顔だけはちらりと確認しておいた。

「魔法部隊ってここまで強いのか…」
「すごい…」

 ついついこぼれたと言った感じの感嘆の声が、背後からうっすらと聞こえてくる。黙ったままの騎士たちも、頼もしいと言いたげに笑っていたり、尊敬の目で見つめていたりとなかなかの好感触のようだ。

 一方でこそこそと小声で話し合っているのは、衛兵たちの一団だ。

「あれは見事だ。対人戦でも役立つ技だな」
「ああ、あれは相手にするのはだいぶ厄介だな」

 ベテランの衛兵たちは、ソフラの魔法の腕前よりも最初に見せられた足場を崩す技の方が気になっているらしい。

 たしかにもし今のあれを盗賊などにされてしまえば、一気に機動力を削られるからな。

「もし敵としてああやって魔法で足場を崩してくる相手が現れたら、うちならどう対処するのが一番良いと思う?」

 真剣な表情で視線を合わせた数人のベテラン衛兵たちは、ウマを歩かせながらもすぐに目の前の状況の対処法を考え始めたようだ。今見たものに対してすぐに策を考えるのは、衛兵ならではだな。

 騎士なら個人で対応して、成功したものを上に報告するというやり方だ。

「こちら側も、土魔法を使えるやつに地面を整えてもらうというのはどうだ?」
「毎回土魔法を使えるやつがいる保証が無いだろう」
「それもそうか…それじゃあ気合で脱出するってのは?」
「気合って何だよ。もっとちゃんとした対策を考えろ」

 横で聞いていた俺も、声をあげた衛兵と全く同じタイミングで、気合って何だよと思っていた。笑いそうになった口元を何とか堪えていると、衛兵たちは周囲に視線を向けた。

「お前はどう思う?」

 意見を求められたのは、衛兵の騎馬組に数人だけ混ざっているまだ若い衛兵だった。ここに連れて来られているという事は腕もたしかなんだろうが、実戦経験は少ないようだ。

「いやー、あんなの対処できないでしょう?」

 苦笑しながらそう答えた若い衛兵は、周囲の衛兵たち全員から睨まれて慌てて口を噤んだ。

「できないかどうか、じゃなくてするんだよ」
「はい、すみませんでした」

 移動するウマに乗ったまま背筋を伸ばして謝罪した衛兵に、周囲の目も少しだけ和らいだ。

「そうだな…魔導収納鞄から盾を取り出して、上向きに構えるというのはどうだ?」

 盾?思わず首を傾げた俺の疑問は、他の衛兵が代わりに尋ねてくれた。

「盾はまあ全員が持っているだろうが…上向きに?」
「ああ、全員を同時に足止めする事はできないだろうから、その盾を足場にして攻撃に転じるんだ」
「あー…なるほど」
「それは良いな。今度訓練でやってみよう」

 どの盾が良いかも実験したいと騒いでいる衛兵たちを、騎士たちは驚きの表情で見つめている。まさかこんな移動中の軽い会話で対策を考えているとは、思わなかったんだろうな。

「ソフラ隊長…訓練に付き合ってくれねぇかな」
「どうだろうな?きちんと領主城経由で申請すれば良さそうじゃないか?」
「わかったボルトにでも聞いてみるわ」
「後は俺達の今回の遠征の活躍によるだろう」

 師匠がぽつりとそう呟けば、衛兵たちの表情が一気に引き締まった。ああ、さすが師匠だな。
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