生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
1,403 / 1,561

1402.【ハル視点】弓部隊

 ソフラ隊長の前でどんな事をすれば良いかと衛兵たちが相談している間に、ワイルドボアは音を立てて地面へと倒れこんだ。

「完了しました」
「ああ、見事な連携だな」

 短いが心からの賛辞のこもった父さんの言葉に、魔法部隊は全員揃ってバッとウマの背で姿勢を正した。ソフラ隊長は誇らし気に笑いながら、光栄ですと返している。

「ウィリアム隊長、後続まで何の問題もなく停止しました」
「わかった、ありがとー」
「ハッ」

 報告が終わるなりスルスル後ろへと下がって行ったのは、おそらくウィル兄の隊の隊員なんだろうな。

 これだけの大人数で移動している場合は、突然先頭が止まってしまえば後続が対応しきれず問題が起こる事がある。怪我で済めばまだ良いが、下手をすれば命にも関わる。

 今回は魔法部隊がある程度の距離をしっかりと稼いでから攻撃してくれたおかげで、ウマ同士の接触も起こらず、人と人がぶつかりあうような事もなかったようだ。

 報告を受けたウィル兄はすぐに父さんとファーガス兄さんへと視線を向けたが、二人から聞こえていたと視線だけで告げられた。そのまま何も言わずに、視線をワイルドボアへと向けた。

 次はこの魔物を解体するために、担当の部隊にも連絡をいれる必要があるな。

 今回は後続の部隊に、解体が特に得意な者を多く配置していると聞いている。

 もしこのままここに放置すれば他の魔物を呼んでしまうだけだし、食料はいくらあっても良い。素材だってきちんと回収すれば、遠征の費用の足しになるだろう。

 まあこれだけ大きいと解体するのも大変だろうな。あ、いや解体が得意な者たちなら、やりがいがあると張り切る可能性もあるな。

 そんな事を考えていると、指示を受けた数人の騎士がウマから下りワイルドボアの方へと歩き出した。後続部隊が来るまでの見張り役だろう。

「警戒っ!上空から鳥型の魔物の気配が近づいてきます!」

 唐突にそう叫んだのは、弓部隊の一人の隊員だった。驚いて気配探知を上空へと向ければ、確かに遠くから近づいてくる気配を感じる。俺とほぼ同時に上を向いた人たちも、みんなが驚き目を大きくしている。

「魔物の種類は不明ですが、大きさからしてB級以上と思われます!」

 他の隊員がそう叫んだ。

「領主様、今度は私が…」

 弓部隊のロア隊長の落ち着いた声に、父さんはこくりと頷いた。

「ああ、ロアに頼もう」
「ハッ、おまかせあれ!」

 嬉しそうに叫んだロア隊長は、巨大な弓と鋭く尖った矢尻のついた矢を一息で取り出した。ほぼ真上を向いて弓を引き絞るロア隊長の姿に、周囲にいた全員が息を飲んだ。

 さすがにあれは当てるのは難しいだろうな。眩しい太陽が真上にあるせいで、鳥の姿はかなり見え難い。

 大勢の人とウマがいるとは思えないほど静まりかえったなか、ひゅんっと風を切る音が響いた。

 命中したかどうかは、鳥型の魔物のけたたましい叫び声が教えてくれた。

「片目に命中しました!」

 目を細めて確認していた弓部隊の隊員が、そう叫ぶ。

 この距離から、しかもあんな不自然な体勢での攻撃なのに、それでも片目に当てられるのか。

 一撃で片目を失う事になった鳥型の魔物は、ギャアギャアとひとしきり鳴いてから、ロアをギロリと睨みつけた。誰がさっきの攻撃をしたのかを、しっかり把握しているようだ。これはある程度の知恵がある魔物みたいだな。

 可能性のある魔物は何だろうと考えていると、視線の先で鳥型の魔物が動いた。どうやら一気に降下して、ロアを倒すつもりのようだ。

 ロア隊長は特に慌てた様子もなくウマを走らせると、集団から少しだけ離れる。周りを巻き込まないための距離を確保してから、また上を見上げて弓を構えている。

「A級、ケセルです!」

 そんな声がどこかから聞こえてきた。これも多分弓部隊の誰か…なんだろうな。

 それにしても、ケセルだったのか。

 ケセルという鳥型の魔物は、他の魔物や人が倒した魔物を横から奪っていくという厄介な性質のある魔物だ。

 苦労して倒した魔物をかっさらっていくと、冒険者からはものすごく嫌われている魔物だ。

 ある程度近づいてくるのをしばらく待ってから、ロア隊長はまた弓矢を放った。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。