生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1403.【ハル視点】ロア隊長とロイ師匠

 矢が風を切る音が聞こえたと思った次の瞬間、ロア隊長が放った矢はケセルの羽根の付け根を見事に射抜いていた。

 魔鳥ルダリオンと戦った時にアキトにも伝えた、飛行する魔物の弱点である魔力を集める器官のある場所だ。

 この距離だと、羽ばたいた瞬間の一瞬の光も見えないと思うんだが…すごい腕だな。

 こうなってくると最初に片目を狙ったのすら、ロア隊長の張った罠だったのかもしれないと思えてくるな。

 片目が残っていれば、怒ったケセルは攻撃してきた相手をまず最初に狙うはずだ。地上にいるロア隊長を攻撃するためには、高度を下げるしかない。

 そんな罫線をしているような気がするな。

 もしかしたら一番高い高度にいた時でも、ロア隊長なら弱点である魔力を集める器官を狙う事ができたのかもしれないな。これだけの目と腕があるんだから。

 おそらくそれをしなかったのは、あの高度から落ちてくるとなるとどこに落下するかが読めないせいだろう。もし隊列の真上に落ちてしまえば、あの巨体だ。下手な攻撃よりも恐ろしい結果になるからな。

 けたたましい悲鳴を上げながら墜落してくるケセルを、弓部隊の隊員たちが放つ矢が次々に捕らえていく。

 どの隊員も矢をつがえる速度が早くて、しかも狙いも正確だ。

 周りで見ていると、標的になった魔物が哀れに思えてくるほどの攻撃だな。もちろんこちらを攻撃しにくる魔物に同情なんてしないが。

 ずしんと音を立てて地面に落ちたケセルは、もう瀕死の状態だった。

「どなたかとどめをお願いできますか?」

 ちらりと背後にいる遠征部隊の方を見て、ロア隊長はそう口を開いた。

「わしが」

 誰よりも早くウマの背から飛び降りて駆け出したのは、俺の剣の師匠ロイだった。

 さっき衛兵たちとあれこれ相談していた時から、周囲を警戒して常に剣に手を触れていたからな。動き出すのは誰よりも早かった。

「あっ!ロイ!ずるいぞ!」
「おい、独り占めするな!」
「止まれっ!ロイ!俺がやるっ!」
「抜け駆けだっ!ロイが抜け駆けしたぞっ!」

 そんな非難めいた声がベテラン衛兵たちから一斉に飛んだが、師匠は当然足を止めたりはしなかった。

 他の衛兵たちが駆け出すよりも早く、師匠の持つ大剣はケセルの首をすぱりと切り落としていた。相変わらず年齢を感じさせない動きだな。

 そのあまりにも見事な断面をまじまじと見つめたロア隊長は、師匠に向かって声をかけた。

「ありがとうございます。見事な腕前ですね」
「動かない魔物相手ですからな。そちらの腕前も素晴らしかった。弓部隊のすごさは知っているつもりだったが、想像以上でしたよ」
「お誉め頂きありがとうございます。ベテラン衛兵様」
「ああ、わしはロイと言います」
「私はロアと申します」

 この二人、ロイとロアで名前も似ているんだよな。たしか師匠の本名はもう少し長かったはずだが、最近はロイとしか名乗らない。何か理由があるんだろう。

 そんな事を考えていると、不意に師匠が尋ねた。

「最初の一撃は、わざと目を狙われたのでしょうかな?」
「はい、ああすれば高度を下げるだろうと。読み通りになって良かったです」

 ああ、俺の予想通り、あれはわざとだったのか。

「ロア殿のあれは素晴らしい作戦でしたな」
「いえ。ロイ殿の初動も、すばらしく早かったですね」
「何があるか分からない状況ですからな」

 ロア隊長と師匠は、お互いの腕前に何らかの感銘を受けたらしい。分野こそ違うがそれぞれが達人の域だからか、何か通じるものでもあったようだ。

 ベテラン衛兵たちが悔しそうに見つめるなか、ロア隊長と師匠は朗らかにお互いの作戦や行動を褒め合っている。

 ここまで楽しそうに誰かと話し込んでいる師匠は、久しぶりに見たな。

 父さんはそんな二人の姿を微笑まし気に見つめていたが、話がひと段落した所でおもむろに口を開いた。

「ロア隊長と弓部隊の腕前には、私も感心させられたよ」
「ハッ、光栄であります!」

 ビシッと背筋を伸ばしたロア隊長は、笑顔でそう答えた。

「それにロイ殿のあの素晴らしい技には、衛兵の持つ力強さを感じさせられた」
「光栄です」

 師匠は片手を胸にあてながら、少しだけ頭を下げた。
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