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1409.【ハル視点】自己紹介
領主である父さんと、冒険者ギルドのギルドマスターであるリヤン。
どちらも組織のトップに立つ立場なんだが、二人の間には明らかな態度の差がつけられている。
まあ当のリヤンはそんな扱いをされても、特に気にした様子もない。むしろ面白そうに笑いながら、敬語で喋るシタルなんて珍しいものを見たと揶揄っている。
「うるさいわよ、バカマスター!」
シタルさんはおそらく反射的にそう叫び返してから、今は領主様の前だったと焦っているな。
心配しなくても大丈夫なんだが…慣れていないの分からないか。
キリリとして見えるけど、今の父さんは真面目そうな顔を必死で取り繕っているだけだ。あれはバカマスターって呼ばれてるのかー?とリヤンを揶揄いたいのを、ぐっと我慢している顔だ。気を抜けばにやけてしまうと思っているんだろうな。
そんな父さんをもの言いたげにちらりと横目で見てから、リヤンはおもむろに口を開いた。あれは父さんの取り繕った表情にきちんと気づいているぞという、牽制だろうな。
領主とギルマスの仲が良いというのは珍しいが、こういう時に足並みが揃うのは良い事だろう。
「よーし、それじゃあギルドから今回の遠征に参加する二組の冒険者パーティーのリーダーを紹介するぞ!」
そう声を張り上げたリヤンに、さわさわと背後から聞こえていた囁き声がぴたりと止まった。全員が耳を澄ます中、リヤンはさらりと続けた。
「どちらもダンジョン内での活動が主な攻略組の冒険者だから、もしかしたら知っているやつらもいるかも知れないな。まずこっちの四人組パーティーのリーダーがルピカだ」
紹介されたルピカは、ニコリと穏やかに笑みを浮かべて一礼した。背後にいるサイクとミルゴ、エンリケは知り合いに向けてかにこやかに手を振っている。
こんな状況でも自然体なんだな。ファーガス兄さんは手を振り返したそうにしていたが、何とか我慢したようだ。
「それでこっちの五人組のパーティーのリーダーが、エーリカだ」
どちらも腕前と人柄は保証するから、もし何かダンジョン内で困った事や分からない事があれば気軽に相談してくれと、リヤンは人懐こい笑顔でそう続けた。
「それじゃあ、ルピカ、エーリカ、それぞれのパーティーメンバーの紹介を頼む」
「そこは私たちにまかせるんだ?」
「俺がやるよりも分かりやすいだろ?」
「まあ確かにね」
笑って頷いたエーリカさんは、ちらりと一瞬だけルピカに視線を向けた。ルピカは視線の意味にすぐに気付くと、お先にどうぞと手で促す。
ありがとと薄っすらと笑ったエーリカさんは、一瞬で真面目な表情に戻ると遠征部隊に向かって口を開いた。
「いま紹介された通り、パーティーのリーダーをやっている弓使いのエーリカよ。うちのパーティーは前衛が三人、後衛が二人なの。まず前衛、盾使いのラシーヌ、斧使いのソール、そして短剣使いのシタル。後衛は魔法使いのグミと私よ」
紹介された冒険者たちは、ぺこりと頭を下げたり手をあげたりと自分の事だと分かりやすくしてくれている。
「まあ別に名前は覚えなくて良いから、何かあれば何でも聞いて」
ニッと悪戯っぽく笑って答えたエーリカさんは、どうやら面倒見の良い人のようだ。
「ルピカ、どうぞ」
「ありがとう。俺のパーティーは四人組なんだが、前衛二人、後衛二人の構成だ。前衛は盾使いのミルゴ、斧使いのサイク、後衛は弓使いのエンリケと、魔法使いの俺だな」
ルピカは楽し気に笑いながら、特にミルゴとサイクは早朝訓練に参加している事も多いから知っている人も多いだろうと続けた。
騎士からも衛兵からも、そして使用人からも、うんうんと頷きがかえっている。
「俺達は今はそれぞれのできる事を増やそうとしている時期なんだ。だからそれぞれ自分の職とは違う事をするかもしれないんだが…驚かないで欲しい」
ルピカのその言葉には、戸惑いの表情を浮かべた人が多いな。まあ知らなければ、どういう意味だとなる言葉か。
「例えば魔法使いの俺は盾使いの練習中だし、盾使いのミルゴは弓の、斧使いのサイクと弓使いのエンリケは魔法の練習中なんだ」
驚きに目を見開いている参加者たちをぐるりと見回して、ルピカは苦笑を浮かべた。
「ダンジョン内ではできる事が多ければ多いほど、生存率が上がるからな。もちろん練習ができるような状況でしかしないんだが、驚かせないためにも先に言っておくべきだと思ったんだ」
それはそうだろうな。例えば弓使いのエンリケさんがいきなり攻撃魔法を打ちながら弓を放っていたら、予想外の状況に驚いてしまったせいでこちらに隙ができるかもしれない。
「気づかいをありがとう、ルピカ殿」
「いえ、どうぞルピカとお呼びください、領主様。ご一緒できて光栄です」
あー…これはおそらくわざとでは無いんだろうが、今の父さんとのやりとりだけで使用人と騎士からの見る目がすこし変わったな。
父さんを尊敬している仲間かと、思われているようだ。
どちらも組織のトップに立つ立場なんだが、二人の間には明らかな態度の差がつけられている。
まあ当のリヤンはそんな扱いをされても、特に気にした様子もない。むしろ面白そうに笑いながら、敬語で喋るシタルなんて珍しいものを見たと揶揄っている。
「うるさいわよ、バカマスター!」
シタルさんはおそらく反射的にそう叫び返してから、今は領主様の前だったと焦っているな。
心配しなくても大丈夫なんだが…慣れていないの分からないか。
キリリとして見えるけど、今の父さんは真面目そうな顔を必死で取り繕っているだけだ。あれはバカマスターって呼ばれてるのかー?とリヤンを揶揄いたいのを、ぐっと我慢している顔だ。気を抜けばにやけてしまうと思っているんだろうな。
そんな父さんをもの言いたげにちらりと横目で見てから、リヤンはおもむろに口を開いた。あれは父さんの取り繕った表情にきちんと気づいているぞという、牽制だろうな。
領主とギルマスの仲が良いというのは珍しいが、こういう時に足並みが揃うのは良い事だろう。
「よーし、それじゃあギルドから今回の遠征に参加する二組の冒険者パーティーのリーダーを紹介するぞ!」
そう声を張り上げたリヤンに、さわさわと背後から聞こえていた囁き声がぴたりと止まった。全員が耳を澄ます中、リヤンはさらりと続けた。
「どちらもダンジョン内での活動が主な攻略組の冒険者だから、もしかしたら知っているやつらもいるかも知れないな。まずこっちの四人組パーティーのリーダーがルピカだ」
紹介されたルピカは、ニコリと穏やかに笑みを浮かべて一礼した。背後にいるサイクとミルゴ、エンリケは知り合いに向けてかにこやかに手を振っている。
こんな状況でも自然体なんだな。ファーガス兄さんは手を振り返したそうにしていたが、何とか我慢したようだ。
「それでこっちの五人組のパーティーのリーダーが、エーリカだ」
どちらも腕前と人柄は保証するから、もし何かダンジョン内で困った事や分からない事があれば気軽に相談してくれと、リヤンは人懐こい笑顔でそう続けた。
「それじゃあ、ルピカ、エーリカ、それぞれのパーティーメンバーの紹介を頼む」
「そこは私たちにまかせるんだ?」
「俺がやるよりも分かりやすいだろ?」
「まあ確かにね」
笑って頷いたエーリカさんは、ちらりと一瞬だけルピカに視線を向けた。ルピカは視線の意味にすぐに気付くと、お先にどうぞと手で促す。
ありがとと薄っすらと笑ったエーリカさんは、一瞬で真面目な表情に戻ると遠征部隊に向かって口を開いた。
「いま紹介された通り、パーティーのリーダーをやっている弓使いのエーリカよ。うちのパーティーは前衛が三人、後衛が二人なの。まず前衛、盾使いのラシーヌ、斧使いのソール、そして短剣使いのシタル。後衛は魔法使いのグミと私よ」
紹介された冒険者たちは、ぺこりと頭を下げたり手をあげたりと自分の事だと分かりやすくしてくれている。
「まあ別に名前は覚えなくて良いから、何かあれば何でも聞いて」
ニッと悪戯っぽく笑って答えたエーリカさんは、どうやら面倒見の良い人のようだ。
「ルピカ、どうぞ」
「ありがとう。俺のパーティーは四人組なんだが、前衛二人、後衛二人の構成だ。前衛は盾使いのミルゴ、斧使いのサイク、後衛は弓使いのエンリケと、魔法使いの俺だな」
ルピカは楽し気に笑いながら、特にミルゴとサイクは早朝訓練に参加している事も多いから知っている人も多いだろうと続けた。
騎士からも衛兵からも、そして使用人からも、うんうんと頷きがかえっている。
「俺達は今はそれぞれのできる事を増やそうとしている時期なんだ。だからそれぞれ自分の職とは違う事をするかもしれないんだが…驚かないで欲しい」
ルピカのその言葉には、戸惑いの表情を浮かべた人が多いな。まあ知らなければ、どういう意味だとなる言葉か。
「例えば魔法使いの俺は盾使いの練習中だし、盾使いのミルゴは弓の、斧使いのサイクと弓使いのエンリケは魔法の練習中なんだ」
驚きに目を見開いている参加者たちをぐるりと見回して、ルピカは苦笑を浮かべた。
「ダンジョン内ではできる事が多ければ多いほど、生存率が上がるからな。もちろん練習ができるような状況でしかしないんだが、驚かせないためにも先に言っておくべきだと思ったんだ」
それはそうだろうな。例えば弓使いのエンリケさんがいきなり攻撃魔法を打ちながら弓を放っていたら、予想外の状況に驚いてしまったせいでこちらに隙ができるかもしれない。
「気づかいをありがとう、ルピカ殿」
「いえ、どうぞルピカとお呼びください、領主様。ご一緒できて光栄です」
あー…これはおそらくわざとでは無いんだろうが、今の父さんとのやりとりだけで使用人と騎士からの見る目がすこし変わったな。
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