生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1411.【ハル視点】冒険者のやり方

 ギルマスのリヤンは今もまだコーデリアからジロッと睨まれているんだが、自業自得だから自分で何とかして欲しい。

「よし、分かった!この遠征が終わったら、知り合いがやってる店の美味い飯をおごってやるから許してくれ」

 そんな謝罪の仕方があるかと呆れてしまったが、コーデリアは意外にも乗り気のようだ。

「…ねぇ、そのお店って…お酒は飲めるの?」
「ああ、知り合いには先にコーデリアの事を説明しておくし、周囲からは見えなくなる個室もある。だからコーデリアも普通に飲めると思うぞ」
「分かった。それで良いけど…条件が一つ」
「何だ?」
「ここにいる冒険者全員と、それにマルクにもおごって頂戴?」

 よく言ったとはしゃいでいる冒険者たちの声と、何故私まで?と焦っているマルクの声が聞こえてくる。

「ああ、良いだろう」
「よっし、じゃあそういう事で!みんな、打ち上げはギルマスのおごりだよー!」

 やったーと満面の笑みで叫んでいる冒険者たちは、今日も自由だな。

 リヤンはそんな周囲の反応を見て楽しそうに笑うと、口を開いた。

「お前らの活躍次第では、酒と料理の質を上げてやるぞ?」

 たったそれだけの言葉で、冒険者たちのやる気がぐんっと増したのが分かった。

 やる気を出させるために言葉を尽くすよりも、こういう鼓舞の方が冒険者にとっては分かりやすいから好まれるんだよな。

 リヤンはその辺りをよく分かっているし、こういう時の報酬には決して出し惜しみをしない。だから口ではバカマスターなんて言われていても、実際に慕われていないってわけじゃないんだよな。

 もし冒険者の前で誰かがリヤンの事を貶したりすれば、喧嘩を吹っ掛けられるだろうなと思うぐらいには慕われている。

 それにしても、これでようやく今回の遠征の参加予定者が全員揃ったな。

 騎士と衛兵、使用人に、ギルマスが率いる冒険者、更には魔道具技師までいるというなかなかに面白い編成だ。

 参加者たちの中にも、面白そうに周りを見回している人が多い。まあこんなに多種多様な職種の人が集まっているのは、遠征でも滅多にないから無理も無い。

 このあとはルティルーの森に入って、そのまま盗賊団の本拠地を目指す事になるんだが――その前にウマとはここでお別れになる。

 ここから先のルティルーの森の中は、遠征参加者の全員が徒歩で移動すると決められているからな。

 ルティルーの森は、至る所で木の根が露出していたり地面の凹凸が多かったりとかなり面倒な地形だ。しかも今回はこの大人数だからな。ウマに乗って密集したままの状態でこの悪路を行くのは、あまりにも無謀だ。

 前回の調査の時のような少人数なら、ある程度の距離を確保する事ができるから不可能では無いんだが…無理に移動して怪我をするのも馬鹿らしい。

 そう考えた父さんの判断だ。

「ここから先は徒歩での移動となる!今のうちにウマを労ってやってくれ」

 そんなファーガス兄さんの声かけに、俺はすぐにタユの背中から飛び降りた。
 
「タユ、ここまでありがとう」

 そう声をかけながら、俺はマルックスの肉のかたまりを魔導収納鞄から取り出した。

 タユはちらりとその肉を見ると、分かってるじゃないかと言いたげにふんと軽く鼻を鳴らしてからおもむろに齧りついた。

 ああ、以前ギュームから教えられたタユの好物を、きちんと覚えておいて良かったな。もしこれで好みに合わない肉を差し出していたら、きっとまたタユに冷たい目で見られていただろう。

 アキトとシュリ、キースのお願いがあるから乗せてはくれると思うんだが、こんな事で不機嫌になられても困るからな。

 食事が終わったタユのたてがみを優しくそっと撫でてやれば、タユはひひんっと小さく一鳴きした。

 俺にはシュリと違ってウマの言葉は分からないが、それでも頑張って来いと言われた気がした。

「頑張ってくるよ」

 そう応えれば、タユはまた分かってるじゃないかと言いたげにこちらを見つめてきた。どうやら俺の予想は、そう外れてはいなかったみたいだな。

「ハロルド様、タユをこちらへ」

 そう声をかけてきたのは、すっかり顔なじみになったウマの世話係たちだ。

「ああ、頼む」

 つい最近保護をしたあのウマたちの事が、どうしても気になるから。そう言ってギュームは城に残ったが、かなりの数の世話係がここに来てくれている。

 いつもの世話係に世話をされて、ウマたちもどこか嬉しそうに見えた。
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