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1413.【ハル視点】鎧の重さ
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先頭を歩いている冒険者たちは、索敵や調査、採取などをしながらでも一定の速度を保っている。余裕があるのは、やはり普段から森の中を歩くのに慣れているからだろうな。
街道の巡回の流れで森に足を踏み入れる事も多いからか、衛兵たちも比較的移動速度は速いな。さすがに冒険者たちほどの速度では無いが、特にベテラン衛兵たちは散歩でもしているかのような自然体だ。
「お、あそこの黄色い花の葉は、酒に浮かべるとうまいんだぞ」
「そうなのか?」
「それはちゃんと取っておかないとな」
冒険者が許可されてるなら俺達も大丈夫だろうと、ベテラン衛兵たちは楽し気に周囲のものを採取しながら進んでいる。
少し辛そうなのは、使用人たちだな。例外が数人いるが、基本的にこういう悪路に慣れてはいない人が多い。それでも衛兵や冒険者たちから遅れないようにと、気合を入れて歩いているのが分かる。
一番大変そうなのは、予想通り――騎士たちだな。
胸当てなどを装備している軽装の騎士はまだ良いんだが、問題なのはやはり重装備を身に着けている騎士だ。
さすがに重鎧に加えて大盾や大剣を装備していると、かなりの重量になる。こんな悪路が続く森の中では、どうしても動き難い。
そもそも鎧の重さのせいで土に足を取られる、なんて事も起こってくるからな。
森には不向きな装備だろう。そんな事を考えていると、一人の騎士が近くの騎士に声をかけているのが目に止まった。
「すまない、すこしだけ隊列を抜ける」
「ああ、分かった」
声かけをした騎士は、同僚の返事を聞くと隊列を抜けて木の下で立ち止まった。騎士は魔導収納鞄から装飾の少ない重鎧を取り出すと、すぐに装備を取り替え始めた。
ああ、なるほど。出発前の行進があったから、装飾のある見栄え重視の重鎧を身に着けていたのか。同じ重鎧であっても、装飾の少ないものの方が確実に軽くなるからな。
「あ、その手があったか」
「俺も着替えよう」
「あー、俺もいざという時のためにって胸当て入れてきてる!」
そうか着替えれば良いのかと大喜びで列を抜ける者もいれば、そんな周囲を寂しそうに見回している騎士もいるな。
武器の予備は持っている人も多いだろうが、鎧はよほど用意周到か用心深い人しか持っていないだろうからな。
そんな騎士たちの様子を見ながら歩いていると、隣を歩いていたウィル兄が小声で俺に話しかけてきた。
「ハル」
「ん?何?」
「俺とハルはさー比較的軽装でしょう?」
「ああ、そうだな」
「でもさ、父さんとファグ兄は…あの装備でしょー?」
ウィル兄の視線に釣られて見てみれば、前を歩く父さんとファーガス兄さんは今日も恐ろしく重そうな重鎧を着ている。
「…すごいな」
「ねーさっきから何であれであんなに身軽に動けるのかなーってずっと考えてたんだ」
「答えは出た?」
「二人ともムレングダンジョンによく潜ってるから、色んな地形に慣れてるのかなーって」
「ああ、なるほど。それはあり得るな」
「だよねー…騎士の訓練にダンジョンも取り入れた方が良いかなー」
まずは自分の部隊からかなと呟いている訓練好きなウィル兄に、俺は何も言えずそっと視線を反らした。
ここで変に止めると、絶対にやると言い出す可能性があるからな。もしジルさんが駄目だと判断したら止めてくれるだろうから、帰ったら忘れずにジルさんに報告しておこう。
ルティルーの森の中を、俺達は本拠地を目指してひたすら進み続けていた。
やけに魔物の気配が少ないのは、冒険者たちが魔物寄せを使って狩りをしていたからなんだろうか。それでも何が起きるかは分からないからと、警戒は絶やさずに突き進む。
リヤンが率いる二つの冒険者パーティーと、斥候役のコーデリア、そして魔道具技師のマルクとは、森の途中で別れる事になった。今は更に先へと進んでくれているはずだ。
冒険者ほど森に慣れていないマルクの移動はすこし心配だったが、サイクが背負い上げての移動となった。
最初は恥ずかしいですと言っていたマルクだったが、それが一番速いと言われるとあっさりとお願いしますとサイクに答えていた。
もしかしたら、そろそろ牙蛇盗賊団の本拠地に着くころかもな。
彼らが先行してくれたのは、あの魔道具の確認をするためだ。
俺達先行部隊が事前に調査をしているといえ、確認は必要だからな。もし盗賊団の残党が俺達の出入りに気づいていれば、あの魔道具を使えなくされている可能性もある。
その場合は、正攻法でダンジョンに挑む事になるだろう。
街道の巡回の流れで森に足を踏み入れる事も多いからか、衛兵たちも比較的移動速度は速いな。さすがに冒険者たちほどの速度では無いが、特にベテラン衛兵たちは散歩でもしているかのような自然体だ。
「お、あそこの黄色い花の葉は、酒に浮かべるとうまいんだぞ」
「そうなのか?」
「それはちゃんと取っておかないとな」
冒険者が許可されてるなら俺達も大丈夫だろうと、ベテラン衛兵たちは楽し気に周囲のものを採取しながら進んでいる。
少し辛そうなのは、使用人たちだな。例外が数人いるが、基本的にこういう悪路に慣れてはいない人が多い。それでも衛兵や冒険者たちから遅れないようにと、気合を入れて歩いているのが分かる。
一番大変そうなのは、予想通り――騎士たちだな。
胸当てなどを装備している軽装の騎士はまだ良いんだが、問題なのはやはり重装備を身に着けている騎士だ。
さすがに重鎧に加えて大盾や大剣を装備していると、かなりの重量になる。こんな悪路が続く森の中では、どうしても動き難い。
そもそも鎧の重さのせいで土に足を取られる、なんて事も起こってくるからな。
森には不向きな装備だろう。そんな事を考えていると、一人の騎士が近くの騎士に声をかけているのが目に止まった。
「すまない、すこしだけ隊列を抜ける」
「ああ、分かった」
声かけをした騎士は、同僚の返事を聞くと隊列を抜けて木の下で立ち止まった。騎士は魔導収納鞄から装飾の少ない重鎧を取り出すと、すぐに装備を取り替え始めた。
ああ、なるほど。出発前の行進があったから、装飾のある見栄え重視の重鎧を身に着けていたのか。同じ重鎧であっても、装飾の少ないものの方が確実に軽くなるからな。
「あ、その手があったか」
「俺も着替えよう」
「あー、俺もいざという時のためにって胸当て入れてきてる!」
そうか着替えれば良いのかと大喜びで列を抜ける者もいれば、そんな周囲を寂しそうに見回している騎士もいるな。
武器の予備は持っている人も多いだろうが、鎧はよほど用意周到か用心深い人しか持っていないだろうからな。
そんな騎士たちの様子を見ながら歩いていると、隣を歩いていたウィル兄が小声で俺に話しかけてきた。
「ハル」
「ん?何?」
「俺とハルはさー比較的軽装でしょう?」
「ああ、そうだな」
「でもさ、父さんとファグ兄は…あの装備でしょー?」
ウィル兄の視線に釣られて見てみれば、前を歩く父さんとファーガス兄さんは今日も恐ろしく重そうな重鎧を着ている。
「…すごいな」
「ねーさっきから何であれであんなに身軽に動けるのかなーってずっと考えてたんだ」
「答えは出た?」
「二人ともムレングダンジョンによく潜ってるから、色んな地形に慣れてるのかなーって」
「ああ、なるほど。それはあり得るな」
「だよねー…騎士の訓練にダンジョンも取り入れた方が良いかなー」
まずは自分の部隊からかなと呟いている訓練好きなウィル兄に、俺は何も言えずそっと視線を反らした。
ここで変に止めると、絶対にやると言い出す可能性があるからな。もしジルさんが駄目だと判断したら止めてくれるだろうから、帰ったら忘れずにジルさんに報告しておこう。
ルティルーの森の中を、俺達は本拠地を目指してひたすら進み続けていた。
やけに魔物の気配が少ないのは、冒険者たちが魔物寄せを使って狩りをしていたからなんだろうか。それでも何が起きるかは分からないからと、警戒は絶やさずに突き進む。
リヤンが率いる二つの冒険者パーティーと、斥候役のコーデリア、そして魔道具技師のマルクとは、森の途中で別れる事になった。今は更に先へと進んでくれているはずだ。
冒険者ほど森に慣れていないマルクの移動はすこし心配だったが、サイクが背負い上げての移動となった。
最初は恥ずかしいですと言っていたマルクだったが、それが一番速いと言われるとあっさりとお願いしますとサイクに答えていた。
もしかしたら、そろそろ牙蛇盗賊団の本拠地に着くころかもな。
彼らが先行してくれたのは、あの魔道具の確認をするためだ。
俺達先行部隊が事前に調査をしているといえ、確認は必要だからな。もし盗賊団の残党が俺達の出入りに気づいていれば、あの魔道具を使えなくされている可能性もある。
その場合は、正攻法でダンジョンに挑む事になるだろう。
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