生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1414.【ハル視点】調査

 牙蛇盗賊団が本拠地として使っていた建物――アキトとキースが捕まっていたあの忌々しい建物までは、特に大きな問題もなく全員揃って進む事ができた。

 ルティルーの森の移動中には、もちろん何度か魔物と遭遇はした。いくら冒険者たちのおかげで全体的な数が減っているといっても、全く会わないというわけじゃないからな。

 ただ、どの魔物も本当にあっという間に倒されてしまった。

 あまり強い魔物が出なかったというのも、もちろんある。あるんだが…魔法部隊と弓部隊が先制攻撃を行い、動きが止まった所に他の騎士や衛兵がとどめを刺す――そんなやり方が定番化したからだ。

 魔法部隊と弓部隊はとどめを刺してくれるから楽だと喜んでいるし、騎士や衛兵は魔法部隊と弓部隊のおかげで戦いやすいと喜んでいた。

 もっと強い魔物が出てこないかなーなんて呟いてしまって、周囲から思いっきり叱られている参加者もいたぐらいだ。

「ようやく着いたな」
「うん、無事に到着だねー」

 父さんとウィル兄さんの会話に、参加者たちも笑顔で頷いている。

「よし、ここでしばらくの間休憩とする。各自、食事や装備の点検をしてくれ」

 ファーガス兄さんの声かけで、参加者たちは建物の前の中庭のような場所でしばしの休憩を取る事になった。

 軽食や干し肉、それに果物などを取り出して食べ始める者。装備を並べてどれが一番軽いかを確かめだす者。とどめを刺していた参加者の中には剣の手入れを始めている者もいるな。

「ハルも、ちょっとは何か食べときなよー?」
「ああ、分かってる」

 ウィル兄に笑顔を返してから、俺は近くに転がっていた倒木に腰を下ろして果物を取り出した。これはアキトも好きなシャキシャキとした食感が特徴の果物だ。

「休憩時間がいつまでって言わないの、珍しいよな」

 偶然近くにいた騎士が、仲の良い衛兵にそう尋ねている声が聞こえてきた。

「あー、たしかに。ファーガス様ってはっきり時間を言ってくれるもんな?」
「でもファーガス様の事だ。きっと何か意味があるんだろう」
「そうだな。いつ出発になっても良いように急いで食べておこう」

 そんな会話を聞きながら、俺は無言のまま果物に齧りついた。

 まだ時間は決まっていないから、ファーガス兄さんも言えないんだよな。

 あの魔道具の調査に向かってくれた冒険者たちが帰って来るまでは、全員ここで待機する予定だからな。

 どうやらここの建物の存在を、知らなかった者も多いようだ。

「ルティルーの森の奥にこんな建物があったなんて…知らなかったな」
「俺もだよ。お前知ってたか?」
「いや、知らなかった」

 数人の騎士たちは、建物を眺めながらそんな事を言い合っている。

「薄汚れた建物に見えるようにしてあるが、これは偽装だろうな」
「盗賊団がわざと放棄された建物に見えるように手を入れたってことか」
「あいつら頭は悪いくせにそういう悪知恵は働くから、余計に腹が立つんだよな」
「そうだな。もっと早く気づいてたら…俺たちで倒しまくってやったのに」

 建物の偽装に気づいて怒りを貯めこんでいるのは、衛兵たちだ。特に衛兵は盗賊団と接する機会が多いからな。もしこの本拠地について衛兵が知っていたら…確実に乗り込んでいただろうな。

 探索したいなーと言いたげにワクワクした様子で建物を見ている者も何人かいるが、いまは誰も中へと入らせる事はできない。

 先行したリヤンと冒険者パーティー、マルク、コーデリアの一番の目的は、あの魔道具の確認だ。だが、盗賊団の残党がいないかもしっかり確認してもらっている。

 だから少なくとも、先行したみんなが帰ってくるまではここにいて貰わないと困る。

 幸いにも、建物への出入口は数カ所しか存在していない。他国の貴族の別荘だったと聞いているから、守りやすくするためにあえてそうしているんだろう。

 その数カ所の出入り口の近くでは、ウィル兄さんの部隊の隊員たちが休憩してくれている。これは偶然では無く、おそらくウィル兄からの指示があったんだろうな。

 ふらふらと建物に近づこうとした参加者に声をかけて、一緒に食事をしたり装備の話しをしたりして気を反らしてくれているみたいだ。

 相手には気づかせずに興味を反らすその手腕に感心していると、建物の中からリヤンたちの気配が近づいてきた。

 どうやら本日の先行部隊が戻ってきたようだな。
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