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1415.【ハル視点】調査報告
「領主様、いま戻ったぞ」
リヤンのそんな声かけに、休憩中だった全員の視線が自然とそちらを向いた。
冒険者たちが先行して調査に向かったのは、みんなが知っているからな。おそらくその結果が気になったんだろう。
俺も同じく建物の入口の方へと視線は向けたが、俺が一番気になっていたのは魔道具技師のマルクの事だ。
友人であるクリスの弟だからというのも、もちろんある。あるんだが、戦闘に慣れていない魔道具技師だからどうしても気になっていた――というのもある。
いや、むしろそちらの方が大きいかもしれないな。
今回の遠征に参加している冒険者たちの心配は、あまりしていない。
サイクとミルゴの凄さは知っているし、彼らが信頼してパーティーを組んでいるルピカとエンリケさんもきっと同じぐらい強いだろう。
エーリカさんのパーティーとパーティーメンバーについては何も知らないが、彼女たちにはどうしても危険の多い辺境領で今まで無事に冒険者活動を続けてきたという実績がある。
つまり全員が一定以上の強さを持っているはずだし、魔物との戦闘や対人戦闘にも慣れているはずだ。
それは特定のパーティーには参加していないコーデリアも例外では無い。ダンジョンに潜っているのにここまで生きて冒険者を続けられているだけで、弱いはずが無いんだよな。
だからマルクの事だけを、密かに心配していたんだ。
ミルゴの背後にちらりと見えたマルクの姿を、俺はじっと見つめた。
うん。ぱっと見た感じでは、特に怪我も無さそうだな。それに着ている服にも何も傷ややぶれは無さそうだ。これなら怪我をしたがポーションで回復しただけ、というわけでも無さそうだ。
「ああ、ご苦労だった。全員無事か?」
「もちろんだ。特に戦闘も無かったからな」
戦闘が無かったという事は、盗賊に待ち伏せをされたりはしなかったんだな。
「肝心のアレはどうだった?」
「問題なく作動したぞ」
「そうか。それは良かった」
しみじみと呟いた父さんに、俺たち兄弟も思わず揃って頷いてしまった。少なくとも、これで正攻法でのムレングダンジョン攻略をする必要は無くなったな。
「調査を頼んでいた移動できる人数は…どうだった?」
ファーガス兄さんがそう尋ねれば、ミルゴさんの後ろからマルクがひょこっと顔を出した。
「少なくともここにいる全員が一度に移動する事はできましたから、12人は確実に移動が可能ですね。あのタイプのものなら、おそらく最大で30人が限度だと思われます」
ハキハキと説明するマルクに、ファーガス兄さんはそうなのかと興味深そうに尋ねた。
「連続使用が可能かも確認しましたが、これは問題なく作動しました」
「ねー、マルク。俺も気になってる事があるんだー。もし分かれば…で良いんだけど、ちょっと聞いても良い?」
ウィル兄が明るくそう声をかければ、マルクはすぐにウィル兄の方に顔を向けた。
「もちろんです。何でしょうか?」
「もしさー移動先に既に人がいる場合、あの魔道具がどうなるかって分かる?」
ああ、そうか。それは俺達もきちんと確認はしていなかったな。もし30人ずつ一気に移動するなら、転移先が重なる事もあるだろう。その時に事故が起きるなら、きちんと対処しないと駄目だからな。
「はい、分かります」
あっさりとそう答えたマルクは、分かる質問で良かったと言いたげなニコニコ笑顔で続けた。
「あの魔道具は、向こう側に人がいる間は使用ができないようになっているようでした。これはルピカさんのパーティーと、エーリカさんのパーティーに協力して頂いてきちんと確認しましたので確実です」
おお、俺達が頼んでなかった事まで、きちんと確認してくれたのか。それでこの短時間で戻ってきてるんだから、すごいな。
黙って報告を聞いていた父さんは、不意に口を開いた。
「ハル、周囲に人と魔物の気配は?」
俺は目を閉じて集中して気配を探ってみたが、参加者以外の人の気配は無さそうだし魔物の気配は遠い。
「無いね」
「よし、ファーガス、ウィリアム。二人で手分けして防音結界を発動してくれるか?」
「ああ、まかせろ」
「分かったーいってくるねー」
指名されたファーガス兄さんとウィル兄は、すぐにあちこちへと散っていった。
リヤンのそんな声かけに、休憩中だった全員の視線が自然とそちらを向いた。
冒険者たちが先行して調査に向かったのは、みんなが知っているからな。おそらくその結果が気になったんだろう。
俺も同じく建物の入口の方へと視線は向けたが、俺が一番気になっていたのは魔道具技師のマルクの事だ。
友人であるクリスの弟だからというのも、もちろんある。あるんだが、戦闘に慣れていない魔道具技師だからどうしても気になっていた――というのもある。
いや、むしろそちらの方が大きいかもしれないな。
今回の遠征に参加している冒険者たちの心配は、あまりしていない。
サイクとミルゴの凄さは知っているし、彼らが信頼してパーティーを組んでいるルピカとエンリケさんもきっと同じぐらい強いだろう。
エーリカさんのパーティーとパーティーメンバーについては何も知らないが、彼女たちにはどうしても危険の多い辺境領で今まで無事に冒険者活動を続けてきたという実績がある。
つまり全員が一定以上の強さを持っているはずだし、魔物との戦闘や対人戦闘にも慣れているはずだ。
それは特定のパーティーには参加していないコーデリアも例外では無い。ダンジョンに潜っているのにここまで生きて冒険者を続けられているだけで、弱いはずが無いんだよな。
だからマルクの事だけを、密かに心配していたんだ。
ミルゴの背後にちらりと見えたマルクの姿を、俺はじっと見つめた。
うん。ぱっと見た感じでは、特に怪我も無さそうだな。それに着ている服にも何も傷ややぶれは無さそうだ。これなら怪我をしたがポーションで回復しただけ、というわけでも無さそうだ。
「ああ、ご苦労だった。全員無事か?」
「もちろんだ。特に戦闘も無かったからな」
戦闘が無かったという事は、盗賊に待ち伏せをされたりはしなかったんだな。
「肝心のアレはどうだった?」
「問題なく作動したぞ」
「そうか。それは良かった」
しみじみと呟いた父さんに、俺たち兄弟も思わず揃って頷いてしまった。少なくとも、これで正攻法でのムレングダンジョン攻略をする必要は無くなったな。
「調査を頼んでいた移動できる人数は…どうだった?」
ファーガス兄さんがそう尋ねれば、ミルゴさんの後ろからマルクがひょこっと顔を出した。
「少なくともここにいる全員が一度に移動する事はできましたから、12人は確実に移動が可能ですね。あのタイプのものなら、おそらく最大で30人が限度だと思われます」
ハキハキと説明するマルクに、ファーガス兄さんはそうなのかと興味深そうに尋ねた。
「連続使用が可能かも確認しましたが、これは問題なく作動しました」
「ねー、マルク。俺も気になってる事があるんだー。もし分かれば…で良いんだけど、ちょっと聞いても良い?」
ウィル兄が明るくそう声をかければ、マルクはすぐにウィル兄の方に顔を向けた。
「もちろんです。何でしょうか?」
「もしさー移動先に既に人がいる場合、あの魔道具がどうなるかって分かる?」
ああ、そうか。それは俺達もきちんと確認はしていなかったな。もし30人ずつ一気に移動するなら、転移先が重なる事もあるだろう。その時に事故が起きるなら、きちんと対処しないと駄目だからな。
「はい、分かります」
あっさりとそう答えたマルクは、分かる質問で良かったと言いたげなニコニコ笑顔で続けた。
「あの魔道具は、向こう側に人がいる間は使用ができないようになっているようでした。これはルピカさんのパーティーと、エーリカさんのパーティーに協力して頂いてきちんと確認しましたので確実です」
おお、俺達が頼んでなかった事まで、きちんと確認してくれたのか。それでこの短時間で戻ってきてるんだから、すごいな。
黙って報告を聞いていた父さんは、不意に口を開いた。
「ハル、周囲に人と魔物の気配は?」
俺は目を閉じて集中して気配を探ってみたが、参加者以外の人の気配は無さそうだし魔物の気配は遠い。
「無いね」
「よし、ファーガス、ウィリアム。二人で手分けして防音結界を発動してくれるか?」
「ああ、まかせろ」
「分かったーいってくるねー」
指名されたファーガス兄さんとウィル兄は、すぐにあちこちへと散っていった。
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