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1427.【ハル視点】説得成功
「他の領は、それほど…ひどいのか…?」
苦しそうに顔を歪めながらもそう尋ねた父さんに、俺は思わず口を開いた。
「いや、その辺りは領によって違う。ひどい領もあれば、良い領だってある」
黙っていられずについつい口を出してしまったが、もしかしたら迷惑だったか。そう思って視線を向ければ、エーリカはうっすらと笑みを浮かべながらこくりと頷いた。なるほど、続けて良いって事だな。
「少なくともトライプール領では、冒険者と騎士の立場は対等だ。ギルマスと騎士団長の仲も良好だし、冒険者と騎士で友人になっている者たちも多い。騎士の遠征にも、普通に戦力として冒険者が参加する事もあるよ」
対等な関係を築いている領が他にもいくつか知ってはいるんだが、俺が話すなら一番説得力があるのはやはりトライプール領だろう。
良かったと呟く声やそうだよなと囁き合う声が、騎士たちのいる方から聞こえてくる。それもそうだと納得したのか、父さんも少しだけ表情が和らいだな。
ありがとうと小声で俺に伝えてから、エーリカは父さんへと視線を戻した。
「領によって対応に違いがあるのはもちろんですが、その中でもこの領は別格なんです」
指を折り曲げながら、エーリカは続ける。
「まず、誰も女ばかりのパーティーだからと侮ってかからない。こちらが何か質問をすれば、きちんと答えてくれる。さらにはこちらの腕前を認め、真正面からコツを教えてくれないかと聞いてくれる人までいるんですよ」
いやそれぐらいは当然だろうと思ってしまうんだが、エーリカの後ろにいるパーティーメンバーたちはコクコクと頷いて同意している。
その反応をみた父さんと騎士たちの顔が、また少しだけ暗くなったな。
「これほどきちんと扱ってくれる場所で、先頭をまかされたのを囮にされたなんていう冒険者はいません」
「…そうか、信頼をありがとう」
「いえ、私たちこそ居心地の良い領をありがとうございます」
丁寧に礼をしながらのエーリカの言葉に、部下である騎士や使用人たちは誇らし気に胸を張った。
「ほら、みんなの意見がこれだ。領主様は本人が思ってるよりも冒険者たちからも慕われてるんだよ」
まっすぐに目を見つめながらそう告げたリヤンの言葉に、父さんは恥ずかしそうにそっと目を反らした。
「改めまして…領主様、私が先頭でよろしいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
「承りました」
コーデリアが答えた瞬間、リヤンが冒険者たちに声をかけた。
「それじゃあコーデリアの防御は、ミルゴにまかせる」
「はーい、全力でコーデリアを守るからね」
「ええ、よろしく」
盾を構えたミルゴに、コーデリアは笑顔を浮かべながら答える。
「ソールには負担をかけるが、ルピカのパーティーのやつらも一緒に守ってくれるか」
エーリカのパーティーの盾使いソールは、あっさりと頷いた。
「了解。あー、ただ人数が多いからさ。不意打ちとやばそうな攻撃は防ぐけど、小さいのは自分で対処して」
「もちろんだ」
「ああ、いざとなればルピカも防御できるからな」
「この階層ならまだいけるか」
軽快な会話が飛び交い、それぞれの役割と隊列の組み方があっという間に決まっていく。こういう所を見ると、リヤンはギルマスらしく采配もうまいんだなと思うな。
俺はただ感心して聞いていたんだが、父さんは明らかに困り顔でリヤンに声をかけた。
「ちょっと待て。リヤン、他の冒険者も全員一緒に行くのか?」
「ああ、もちろん。当然だろ?」
「…あー…そうか。分かった。それで良い」
ため息交じりの少し投げやりな返事だったが、リヤンはさすが我らが領主様は話が分かるなーと嬉しそうに笑っている。あれは分かった上でごまかそうとしてるな。
「じゃあちょっと失礼しますね」
一歩前に出たコーデリアに、数名の騎士が近づいて行く。
「コーデリア殿、私たちは騎士の中でも斥候役を務めている者です。近くで罠の解除を拝見しても…よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです」
気になる所があれば後ほど質問してくださいねと笑って答えたコーデリアに、騎士たちはホッした様子で笑みを浮かべた。
苦しそうに顔を歪めながらもそう尋ねた父さんに、俺は思わず口を開いた。
「いや、その辺りは領によって違う。ひどい領もあれば、良い領だってある」
黙っていられずについつい口を出してしまったが、もしかしたら迷惑だったか。そう思って視線を向ければ、エーリカはうっすらと笑みを浮かべながらこくりと頷いた。なるほど、続けて良いって事だな。
「少なくともトライプール領では、冒険者と騎士の立場は対等だ。ギルマスと騎士団長の仲も良好だし、冒険者と騎士で友人になっている者たちも多い。騎士の遠征にも、普通に戦力として冒険者が参加する事もあるよ」
対等な関係を築いている領が他にもいくつか知ってはいるんだが、俺が話すなら一番説得力があるのはやはりトライプール領だろう。
良かったと呟く声やそうだよなと囁き合う声が、騎士たちのいる方から聞こえてくる。それもそうだと納得したのか、父さんも少しだけ表情が和らいだな。
ありがとうと小声で俺に伝えてから、エーリカは父さんへと視線を戻した。
「領によって対応に違いがあるのはもちろんですが、その中でもこの領は別格なんです」
指を折り曲げながら、エーリカは続ける。
「まず、誰も女ばかりのパーティーだからと侮ってかからない。こちらが何か質問をすれば、きちんと答えてくれる。さらにはこちらの腕前を認め、真正面からコツを教えてくれないかと聞いてくれる人までいるんですよ」
いやそれぐらいは当然だろうと思ってしまうんだが、エーリカの後ろにいるパーティーメンバーたちはコクコクと頷いて同意している。
その反応をみた父さんと騎士たちの顔が、また少しだけ暗くなったな。
「これほどきちんと扱ってくれる場所で、先頭をまかされたのを囮にされたなんていう冒険者はいません」
「…そうか、信頼をありがとう」
「いえ、私たちこそ居心地の良い領をありがとうございます」
丁寧に礼をしながらのエーリカの言葉に、部下である騎士や使用人たちは誇らし気に胸を張った。
「ほら、みんなの意見がこれだ。領主様は本人が思ってるよりも冒険者たちからも慕われてるんだよ」
まっすぐに目を見つめながらそう告げたリヤンの言葉に、父さんは恥ずかしそうにそっと目を反らした。
「改めまして…領主様、私が先頭でよろしいでしょうか?」
「ああ、よろしく頼む」
「承りました」
コーデリアが答えた瞬間、リヤンが冒険者たちに声をかけた。
「それじゃあコーデリアの防御は、ミルゴにまかせる」
「はーい、全力でコーデリアを守るからね」
「ええ、よろしく」
盾を構えたミルゴに、コーデリアは笑顔を浮かべながら答える。
「ソールには負担をかけるが、ルピカのパーティーのやつらも一緒に守ってくれるか」
エーリカのパーティーの盾使いソールは、あっさりと頷いた。
「了解。あー、ただ人数が多いからさ。不意打ちとやばそうな攻撃は防ぐけど、小さいのは自分で対処して」
「もちろんだ」
「ああ、いざとなればルピカも防御できるからな」
「この階層ならまだいけるか」
軽快な会話が飛び交い、それぞれの役割と隊列の組み方があっという間に決まっていく。こういう所を見ると、リヤンはギルマスらしく采配もうまいんだなと思うな。
俺はただ感心して聞いていたんだが、父さんは明らかに困り顔でリヤンに声をかけた。
「ちょっと待て。リヤン、他の冒険者も全員一緒に行くのか?」
「ああ、もちろん。当然だろ?」
「…あー…そうか。分かった。それで良い」
ため息交じりの少し投げやりな返事だったが、リヤンはさすが我らが領主様は話が分かるなーと嬉しそうに笑っている。あれは分かった上でごまかそうとしてるな。
「じゃあちょっと失礼しますね」
一歩前に出たコーデリアに、数名の騎士が近づいて行く。
「コーデリア殿、私たちは騎士の中でも斥候役を務めている者です。近くで罠の解除を拝見しても…よろしいでしょうか?」
「ええ、もちろんです」
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