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1429.【ハル視点】コーデリアの番
ワクワクした様子で手の中の魔道具を見つめていたマルクは、ハッと顔をあげるといそいそとコーデリアの後ろへと戻った。
「魔道具の解除、ありがとう、マルク」
笑顔でそう声をかけたコーデリアに、マルクはにっこりと笑って答えた。
「ううん。こちらこそ、まかせてくれてありがとう」
ふはっと噴き出したコーデリアが尋ねる。
「なんでマルクがお礼を言うのよ」
「え、そのおかげでこの魔道具を解析できるし、いじれるからだよ」
ホクホクした満面の笑みでそう応えたマルクに、周囲の冒険者たちも笑いだした。
あの会議で出逢った時はそこまで仲良くは無かったと思うんだが、マルクと冒険者たちの仲は良好のようだな。遠征準備やここまでの移動、それにさっきの先行して調査に向かってくれた間に仲良くなったんだろう。
「マルク、さすがだな」
「あそこまで一瞬で魔道具を見つけるなんて、俺らも初めて見たわ」
「ね、手早かったねー」
「すごい」
周囲の冒険者たちから口々に褒められたマルクは、照れくさそうにしながらも手にした魔道具を慎重に鞄の中にしまい込んだ。
「さて、それじゃあ次は私の番ねー」
つい先ほどまでマルクが立っていた場所に進んだコーデリアは、その場でしゃがみこんだ。ようやく見えるようになった出入り口の床を、いまはまじまじと観察中だ。
そもそもダンジョンや採取地などに仕掛けられた罠に気付くためには、罠探知の技術が必要となる。
これは現在アキトとキースも練習中の、あの気配探知に近い技だ。気配探知が人や魔物の気配を感じるのに対して、罠探知は罠の存在を感じるというものだ。
罠探知はもちろん便利な技術だが、いざ覚えようとしてもなかなか身につかないんだよな。
気配探知は魔物と人の気配を感じられる場所なら、どこでも練習が可能だ。
例えば街中でも、人の気配を使った練習ならできる。魔物の気配に関しては、さすがに街中では無理だが安全な街道沿いで練習すれば良い。
探知できる範囲が広がっていけば、街道から森の中の魔物の気配を探ってみるなんて事もできるようになってくる。
だが罠探知は、そもそもその練習をするのがかなり困難だ。
もちろん誰かが設置した罠を解除する程度なら、やろうと思えばおそらく冒険者ギルドの訓練場などでやる事はできる。だがそれだけで罠探知のスキルまで身に着くかと言うと、難しいだろうな。
悪意のこもった罠を感知できるようになるためには、やはりダンジョン内にある面倒な罠にたくさん触れるしか無い。
つまりコーデリアのようにダンジョンに潜り続けるしか、技術を磨くすべが無いのが現状だ。
それにしてもこれだけの人数に見守られながら――いや、凝視されながらの罠解除は、やりにくいだろうな。邪魔をしないためにとしんと静まり返ってはいるが、これはかなりの視線の圧力だろう。
そう考えていると、コーデリアはよしっと軽く声をあげて腰に着けていた小さな袋を開いた。中から取り出したのは、二本の細い棒状の何かだ。
まるで細い杖のようなそれを両手に持って、コーデリアはぶつぶつと呟き始めた。
「えーっと、まずこれが、音の鳴るトラップでしょー?」
一瞬で魔力を練り上げてみせたコーデリアは、手にした杖を使って地面の一点をそっと押さえた。
あそこに罠があるのか?杖の先をまじまじと見つめてみても、俺にはほんの少しの違和感程度しか感じられないな。
「えいっ」
そんな気の抜ける声と共に、コーデリアはもう片手の杖に魔力を込めながら罠に触れた。途端にバチッと光と音が走った。
「これでここの解除は終わりーそれで、一歩目を踏み出した場所に、魔物を呼び寄せる香りが吹き出る罠かー…性格悪ーい」
ぶつぶつと文句を言いながら、コーデリアはその罠も二本の杖を使ってあっさりと解除してみせた。
さきほど同行を願いでた斥候たちは、驚きすぎて大きく目を見開いて固まってしまっている。
「魔道具の解除、ありがとう、マルク」
笑顔でそう声をかけたコーデリアに、マルクはにっこりと笑って答えた。
「ううん。こちらこそ、まかせてくれてありがとう」
ふはっと噴き出したコーデリアが尋ねる。
「なんでマルクがお礼を言うのよ」
「え、そのおかげでこの魔道具を解析できるし、いじれるからだよ」
ホクホクした満面の笑みでそう応えたマルクに、周囲の冒険者たちも笑いだした。
あの会議で出逢った時はそこまで仲良くは無かったと思うんだが、マルクと冒険者たちの仲は良好のようだな。遠征準備やここまでの移動、それにさっきの先行して調査に向かってくれた間に仲良くなったんだろう。
「マルク、さすがだな」
「あそこまで一瞬で魔道具を見つけるなんて、俺らも初めて見たわ」
「ね、手早かったねー」
「すごい」
周囲の冒険者たちから口々に褒められたマルクは、照れくさそうにしながらも手にした魔道具を慎重に鞄の中にしまい込んだ。
「さて、それじゃあ次は私の番ねー」
つい先ほどまでマルクが立っていた場所に進んだコーデリアは、その場でしゃがみこんだ。ようやく見えるようになった出入り口の床を、いまはまじまじと観察中だ。
そもそもダンジョンや採取地などに仕掛けられた罠に気付くためには、罠探知の技術が必要となる。
これは現在アキトとキースも練習中の、あの気配探知に近い技だ。気配探知が人や魔物の気配を感じるのに対して、罠探知は罠の存在を感じるというものだ。
罠探知はもちろん便利な技術だが、いざ覚えようとしてもなかなか身につかないんだよな。
気配探知は魔物と人の気配を感じられる場所なら、どこでも練習が可能だ。
例えば街中でも、人の気配を使った練習ならできる。魔物の気配に関しては、さすがに街中では無理だが安全な街道沿いで練習すれば良い。
探知できる範囲が広がっていけば、街道から森の中の魔物の気配を探ってみるなんて事もできるようになってくる。
だが罠探知は、そもそもその練習をするのがかなり困難だ。
もちろん誰かが設置した罠を解除する程度なら、やろうと思えばおそらく冒険者ギルドの訓練場などでやる事はできる。だがそれだけで罠探知のスキルまで身に着くかと言うと、難しいだろうな。
悪意のこもった罠を感知できるようになるためには、やはりダンジョン内にある面倒な罠にたくさん触れるしか無い。
つまりコーデリアのようにダンジョンに潜り続けるしか、技術を磨くすべが無いのが現状だ。
それにしてもこれだけの人数に見守られながら――いや、凝視されながらの罠解除は、やりにくいだろうな。邪魔をしないためにとしんと静まり返ってはいるが、これはかなりの視線の圧力だろう。
そう考えていると、コーデリアはよしっと軽く声をあげて腰に着けていた小さな袋を開いた。中から取り出したのは、二本の細い棒状の何かだ。
まるで細い杖のようなそれを両手に持って、コーデリアはぶつぶつと呟き始めた。
「えーっと、まずこれが、音の鳴るトラップでしょー?」
一瞬で魔力を練り上げてみせたコーデリアは、手にした杖を使って地面の一点をそっと押さえた。
あそこに罠があるのか?杖の先をまじまじと見つめてみても、俺にはほんの少しの違和感程度しか感じられないな。
「えいっ」
そんな気の抜ける声と共に、コーデリアはもう片手の杖に魔力を込めながら罠に触れた。途端にバチッと光と音が走った。
「これでここの解除は終わりーそれで、一歩目を踏み出した場所に、魔物を呼び寄せる香りが吹き出る罠かー…性格悪ーい」
ぶつぶつと文句を言いながら、コーデリアはその罠も二本の杖を使ってあっさりと解除してみせた。
さきほど同行を願いでた斥候たちは、驚きすぎて大きく目を見開いて固まってしまっている。
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