生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1443.【ハル視点】押し寄せる魔物

 ウィル兄のあまりにも見事な一撃に、周囲にいる参加者たちからはどよめきと歓声が湧き起こった。

「さすがは、私たちの頼れる隊長ウィリアム様ですね!」
「いやいや、今回は所属している隊は関係ないでしょう?」
「そうですよ。今回はある意味では同じ隊のはずです!」

 そんなどこまでものんきな会話まで聞こえてきているのには、正直すこしだけ笑いそうになってしまった。まあ萎縮したり動揺しているよりも、辺境領の騎士らしいとは思うんだが。

 ちなみに盗賊たちのいる方からはイハクのチッという舌打ちと、部下たちの嘘だろう?化け物かよ?と戸惑う声が聞こえてきてからは静かなものだ。

 もちろん油断はせずに、盗賊たちの動きと気配は探ったままだ。

「よし、俺達も続くぞ!」

 力強くそう叫んだのは、ベテランの衛兵だった。

「ああ!俺らも騎士様たちに負けていられねぇからな!」
「おうよ、衛兵隊も今回は本気で行くぞ!」

 そんな声があちこちで飛び交っていて、みんなやる気に満ち溢れている。

 どうやらウィル兄の一撃のおかげで、さらに士気が上がったようだな。

 いったいどんな魔物寄せの罠を使ったのか――いやもしかしたら、この効果は魔物寄せの香や薬草なども併用している可能性があるかもしれない。

 その辺りの詳細はまだ何も分かっていないが、あり得ないと思うぐらいに様々な種類の魔物がどんどん押し寄せてきている。

 ウルフ種、ボア種、ゴーレム種、トレント種、オーガ種…その他にもたくさんの魔物が次々にやってきている現状だが、参加者たちはきっちりと連携を取りながら数人ずつで着実に一頭ずつ倒し続けている。

 こんな事態だからな。対人なら一対一にこだわる騎士たちも、特に文句を言わずに連携しながら戦ってくれている。

「うわーこのオーガ。上位種じゃないか?レアものが出た!」
「さっき倒したトレントも、レアなドロップが出たぞ」
「こちらのオーガは火の魔石がでました」
「まじかよ、火の魔石良いなぁ」
「よっし、この調子で行くぞ!」

 手に入る素材が良いものだからと明らかにワクワクしだした参加者たちを、盗賊たちは大きく目を見開いて見つめている。

 怯えさせるつもりで仕組んだ罠にこんな嬉しそうな反応をされたら、そんな反応になるのも無理は無いか。

 これだけ戦い続けてくれているのに、驚くべき事にこちらへとやってくる魔物の勢いは今もまだ一切衰えてはいない。

 だがまあこれは魔物の暴走であるスタンピードではないからな。スタンピードの時は我を忘れて暴走する魔物が特に厄介なんだが、今回は暴走しているやつはいない。予想外の攻撃が無いという点では、かなり楽だろう。

 常に湧き続けているせいで魔物が減った感じは全然しないんだが、積み上げられている魔物の山はどんどん高くなっているな。

 魔導収納鞄の中にしまっていっても良いんだが、今は戦闘を優先しているようだ。

 現時点での怪我人は、すり傷程度の軽傷者しかいないな。その軽傷者にも、近くの者がポーションをかけて回っている。血の匂いで暴走する魔物がいないようにという配慮だろう。

 それにしても、最初はぎこちなかった騎士と衛兵の連携もどんどんうまくなっているな。これなら魔物については、無理に俺が出るまでもなさそうかと考えていると、不意にウィル兄が近くの者に声をかけた。

「ちょっと抜けるねー後はよろしく。頼りにしてるよー、みんな」
「おまかせ下さい」
「た、頼られたっ!」
「今全力を出さずにいつ出すんですか!」

 騎士も衛兵もそんな事を言いながらも、手は止めない。照れたり笑ったりしながら魔物を倒し続けている光景は、なかなかに怖いな。

「ただいまー」

 ウィル兄さんは、足取りも軽く俺達の所まで戻ってきた。

「おかえり」
「良い一撃だった」

 父さんとファーガス兄さんが、うっすらと微笑みながらそう声をかける。

「おかえり。久しぶりに暴れられて良かったな」

 続いて俺がそう声をかければ、ウィル兄はにっこりと笑って頷いた。

「うん、結構楽しかったよー」
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