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1444.【ハル視点】計画
「あ、そうだ。あんた…えーっと、イハクって言ったっけ?さっきの俺の質問に答えてくれるー?…たかが魔物相手に俺達が怯むって、本当に思ってたの?」
顔に浮かんでいるのはたしかに笑顔なんだが、目が笑っていないからか妙な迫力があるな。名前を覚えていないような素振りを見せたのもわざとだろうし…これはだいぶ怒っていたみたいだ。
威圧感のあるウィル兄さんからのの質問に、部下の盗賊たちは気圧されたかのように一歩後ずさった。
そんな中でイハクだけは、その場から一歩も動かなかった。むしろウィル兄さんの眼をまっすぐに見つめながら、楽し気に笑って口を開いた。
「まさか!あんたらの戦力をそこまで甘くみつもったりしてねぇよ!」
「へー意外な答えだね」
「そうか?魔物寄せはただの時間稼ぎで、本命はあれだからな!」
イハクはそう言うと、魔物が押し寄せてきている入口の方へとすっと視線を向けた。次の瞬間、通路の方から盛大な爆発音が聞こえてきた。
「なっ…爆発っ?」
ウィル兄は慌ててバッと後ろを振り返ったが、戦っている参加者たちには被害が無さそうな事に気付くと肩の力を抜いた。
「…あんたらは転移の罠でここに来たから知らないかもしれないが…ムレングダンジョン内からこの部屋へと向かうためには、必ずあの通路を通る必要があるんだよ」
たしかにこの部屋に繋がっている通路は、盗賊が現れた…今は魔物が湧いてきているあそこだけに見える。
だがいくらそう見えていたとしても、盗賊の首領であるイハクの言葉を無条件で信じるわけにはいかない。
俺はちらりと冒険者の方へと視線を向けたが、目があったサイクはこくりと頷いた。
ムレングダンジョンに詳しいサイクが本当の事だと言うなら、元々ここにはその通路しか無かったんだろう。
「つまりあんたらにできる事は、二つしか無ぇんだよ。ひとつめはあそこにいる山のような魔物を全部倒してから、閉ざされてしまった道を自分たちで地道に撤去する事。ふたつめは壁や通路がダンジョンの魔力によって修復されるまで、ただひたすら待つかだ。そうしなければ、あんたらはここから出られねぇんだからなぁ!」
イハクは楽し気に、まるで歌うようにしてそう告げた。絶望しろと言いたげな語り方だったが、ウィル兄さんはいつも通りののんびりとした口調で続けた。
「へーそうなんだー」
「すました顔してんなぁ、おい。ダンジョン内で退路を断たれたんだぞ?もっと焦れよ!つまんねぇな!」
ケッと叫んだイハクに、静かに成り行きを見守っていた父さんが口を開いた。
「特に焦るような事態では無いからな。今回は、長期でここに潜る可能性もあると思っていた。きちんと食材などの備えもしてきているから、何日でも何十日でもここにこもる事ができる」
問題は無いと言いきった父さんに、イハクは顔を歪めた。
「その余裕ぶった顔、ほんっとうに腹立つなぁ…」
低く地を這うような声でそうつぶやいたイハクは、ぼそりとその余裕そうな顔を崩してやると言いながら続けた。
「あんたらの用意がたとえ万全でも、俺の計画には関係ねぇ!俺達がしたかったのは、あんたらの足止めだけだからな」
…足止め?一体何のためにそんな事を?なんだかじわじわと嫌な予感がする。
「話しは変わるんだが、この前俺達が仕入れた商品――おっと、二人の人間の事が分かるか?何故かウマと一緒に逃げやがったやつらだ」
は?仕入れた商品…だと?
イハクが誰の事を言っているのかは、分かりたくないがすぐに理解できてしまった。
勝手にアキトとキースを攫っておいて仕入れと言ってのけたイハクに、怒りと殺意が一気に湧いた。
さすがに俺がうっかり殺気を洩らしたことを、注意してくるような人はいなかった。むしろ俺の家族、騎士、衛兵、使用人たちに至るまで、大勢が殺意を露わにしている。アキトとキースが好かれているのが伝わってくるな。
「おお、怖いなーみんなして殺意を向けてくるなんて」
俺達の顔色が変わった事が嬉しかったのか、参加者たちを順番に見つめながらイハクは満足そうに笑っている。
「あんたらがここまで怒るって事は、何か重要な人物だったのかぁ…惜しい事をしたなー」
ケラケラと笑いながらの言葉に、俺はぎっと奥歯を噛み締めた。
顔に浮かんでいるのはたしかに笑顔なんだが、目が笑っていないからか妙な迫力があるな。名前を覚えていないような素振りを見せたのもわざとだろうし…これはだいぶ怒っていたみたいだ。
威圧感のあるウィル兄さんからのの質問に、部下の盗賊たちは気圧されたかのように一歩後ずさった。
そんな中でイハクだけは、その場から一歩も動かなかった。むしろウィル兄さんの眼をまっすぐに見つめながら、楽し気に笑って口を開いた。
「まさか!あんたらの戦力をそこまで甘くみつもったりしてねぇよ!」
「へー意外な答えだね」
「そうか?魔物寄せはただの時間稼ぎで、本命はあれだからな!」
イハクはそう言うと、魔物が押し寄せてきている入口の方へとすっと視線を向けた。次の瞬間、通路の方から盛大な爆発音が聞こえてきた。
「なっ…爆発っ?」
ウィル兄は慌ててバッと後ろを振り返ったが、戦っている参加者たちには被害が無さそうな事に気付くと肩の力を抜いた。
「…あんたらは転移の罠でここに来たから知らないかもしれないが…ムレングダンジョン内からこの部屋へと向かうためには、必ずあの通路を通る必要があるんだよ」
たしかにこの部屋に繋がっている通路は、盗賊が現れた…今は魔物が湧いてきているあそこだけに見える。
だがいくらそう見えていたとしても、盗賊の首領であるイハクの言葉を無条件で信じるわけにはいかない。
俺はちらりと冒険者の方へと視線を向けたが、目があったサイクはこくりと頷いた。
ムレングダンジョンに詳しいサイクが本当の事だと言うなら、元々ここにはその通路しか無かったんだろう。
「つまりあんたらにできる事は、二つしか無ぇんだよ。ひとつめはあそこにいる山のような魔物を全部倒してから、閉ざされてしまった道を自分たちで地道に撤去する事。ふたつめは壁や通路がダンジョンの魔力によって修復されるまで、ただひたすら待つかだ。そうしなければ、あんたらはここから出られねぇんだからなぁ!」
イハクは楽し気に、まるで歌うようにしてそう告げた。絶望しろと言いたげな語り方だったが、ウィル兄さんはいつも通りののんびりとした口調で続けた。
「へーそうなんだー」
「すました顔してんなぁ、おい。ダンジョン内で退路を断たれたんだぞ?もっと焦れよ!つまんねぇな!」
ケッと叫んだイハクに、静かに成り行きを見守っていた父さんが口を開いた。
「特に焦るような事態では無いからな。今回は、長期でここに潜る可能性もあると思っていた。きちんと食材などの備えもしてきているから、何日でも何十日でもここにこもる事ができる」
問題は無いと言いきった父さんに、イハクは顔を歪めた。
「その余裕ぶった顔、ほんっとうに腹立つなぁ…」
低く地を這うような声でそうつぶやいたイハクは、ぼそりとその余裕そうな顔を崩してやると言いながら続けた。
「あんたらの用意がたとえ万全でも、俺の計画には関係ねぇ!俺達がしたかったのは、あんたらの足止めだけだからな」
…足止め?一体何のためにそんな事を?なんだかじわじわと嫌な予感がする。
「話しは変わるんだが、この前俺達が仕入れた商品――おっと、二人の人間の事が分かるか?何故かウマと一緒に逃げやがったやつらだ」
は?仕入れた商品…だと?
イハクが誰の事を言っているのかは、分かりたくないがすぐに理解できてしまった。
勝手にアキトとキースを攫っておいて仕入れと言ってのけたイハクに、怒りと殺意が一気に湧いた。
さすがに俺がうっかり殺気を洩らしたことを、注意してくるような人はいなかった。むしろ俺の家族、騎士、衛兵、使用人たちに至るまで、大勢が殺意を露わにしている。アキトとキースが好かれているのが伝わってくるな。
「おお、怖いなーみんなして殺意を向けてくるなんて」
俺達の顔色が変わった事が嬉しかったのか、参加者たちを順番に見つめながらイハクは満足そうに笑っている。
「あんたらがここまで怒るって事は、何か重要な人物だったのかぁ…惜しい事をしたなー」
ケラケラと笑いながらの言葉に、俺はぎっと奥歯を噛み締めた。
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