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1468.到着
足を止めたマチルダさんは、武器と防具の職人との会話を終えても動かなかった。
今は無言のまま、少し離れた所でみんなが戦っているエラバータの巨体を睨んでいる。
たぶんだけどここもかなり苦戦中みたいだから、どうするべきかって考えてるんだと思う。その表情はどこまでも真剣だ。
案内役の騎士さんも、俺も、それに一緒に来てる使用人さんや騎士さんたちも、誰一人としてマチルダさんを急かしたりはしない。
領主代理としてのマチルダさんの判断の、邪魔はしたくないからね。
マチルダさんに声をかけたのは、今まさに戦闘中のみんなだった。
「マチルダ様、ここは我らにおまかせください!」
「自らここにいらっしゃるということは、もっと危機的な場所があるという事ですよね?」
エラバータに切りかかりながらそう声を張り上げた騎士さんたちに、近くにいた冒険者たちもそうだそうだと声を合わせる。
「他の冒険者たちも今こっちに向かってる筈だから、気にしねぇで大丈夫…です!」
「ああ、サブギルマスが張り切ってたから、絶対来…ます!」
冒険者たちは慣れない敬語で、そう叫んだ。
「だからここの心配はいらないよ!」
「まだポーション類も余裕がありますから!」
商人っぽい恰好をした軽装の男性は、笑顔でそう教えてくれる。
「おう!武器もまだまだあるからな!」
「防具だってあるぞー」
わいわいとそう叫んでくれるみんなに、マチルダさんは少し考えてから口を開いた。
「分かりました。みなさま、どうぞご武運を」
よっしゃ行くぞーと叫ぶ声を聞きながら、俺達は歩き出した。
ようやく目的地に辿り着いたんだなと気づいたのは、案内役の騎士さんの言葉とか、戦闘が見えたからとかじゃなかった。
いきなり耳障りな鳴き声が、いくつも重なるようにして聞こえてきたんだ。しかも俺達のいる森の、さらに上空の方からね。
ギェェェというその聞き慣れない声に、その場にいた全員が一瞬で武器を構えた。いつ襲われても良いようにと、既に全員が臨戦態勢だ。
木々に紛れてここからはまだ姿は見えないけど、でもたぶんあれがワイバーンの鳴き声なんだろうな。
「B3はたしかムレングゴーレム、C4はウェルトウルフだったな?」
ここにはまだ俺と領主城から来た使用人さんと騎士さんたちしかいないからか、マチルダさんはいつもの調子でそう尋ねた。
「はい、間違いありません」
ダンジョンに全く詳しくない俺には、名前を聞いてもどんな種類かまでは分からないけど――とりあえずゴーレム種とウルフ種だって事だけは分かった。
「ウェルトウルフは問題ないだろうが、ムレングゴーレムは長引くかもしれないな…それならB3地点からはある程度の距離があり、なおかつ戦闘に適していそうな場所はどこかあるか?」
「はっ、すぐにご案内します」
迷いなく進む騎士さんの背中を追って、俺たちは武器を持ったまま素早く動き出した。
マチルダさんの言う戦闘に適している場所というのは、木々が少ない場所の事らしい。この辺りはどうしても木が密集しているから、ワイバーンも狙いを定めにくいんだって。
まあ木なんてなぎ倒して襲ってくる――なんて事もあるらしいけどね。
今はあちこちで色んな人が魔物と戦ってる最中だから、戦闘のせいでその辺りの木がたくさん折れたりしていると狙われやすくなってしまうそうだ。
マチルダさんが長引くって言ってるゴーレムと戦ってる時に、空からも魔物が来るなんて恐ろしすぎるよね。だからこの案内役の騎士さんは、必死になって報告に来てくれたんだろう。
「この先です」
すこしひそめた声でそう言った騎士さんに、全員が無言のままこくりと頷いた。
慎重に空が見える所まで近づいてみれば、そこには高い所を飛び回っている数頭の細身のワイバーンの姿があった。
俺が想像してたよりも、ドラゴンっぽくは無いな。どちらかというとこうもりみたいな翼の生えた巨大なトカゲみたいだ。
「アキト、いけるか?」
そう言いながら、マチルダさんはじっとまっすぐに俺の目を見つめた。俺ならできると信じてくれているんだなと分かる目だ。
「いけます」
今は無言のまま、少し離れた所でみんなが戦っているエラバータの巨体を睨んでいる。
たぶんだけどここもかなり苦戦中みたいだから、どうするべきかって考えてるんだと思う。その表情はどこまでも真剣だ。
案内役の騎士さんも、俺も、それに一緒に来てる使用人さんや騎士さんたちも、誰一人としてマチルダさんを急かしたりはしない。
領主代理としてのマチルダさんの判断の、邪魔はしたくないからね。
マチルダさんに声をかけたのは、今まさに戦闘中のみんなだった。
「マチルダ様、ここは我らにおまかせください!」
「自らここにいらっしゃるということは、もっと危機的な場所があるという事ですよね?」
エラバータに切りかかりながらそう声を張り上げた騎士さんたちに、近くにいた冒険者たちもそうだそうだと声を合わせる。
「他の冒険者たちも今こっちに向かってる筈だから、気にしねぇで大丈夫…です!」
「ああ、サブギルマスが張り切ってたから、絶対来…ます!」
冒険者たちは慣れない敬語で、そう叫んだ。
「だからここの心配はいらないよ!」
「まだポーション類も余裕がありますから!」
商人っぽい恰好をした軽装の男性は、笑顔でそう教えてくれる。
「おう!武器もまだまだあるからな!」
「防具だってあるぞー」
わいわいとそう叫んでくれるみんなに、マチルダさんは少し考えてから口を開いた。
「分かりました。みなさま、どうぞご武運を」
よっしゃ行くぞーと叫ぶ声を聞きながら、俺達は歩き出した。
ようやく目的地に辿り着いたんだなと気づいたのは、案内役の騎士さんの言葉とか、戦闘が見えたからとかじゃなかった。
いきなり耳障りな鳴き声が、いくつも重なるようにして聞こえてきたんだ。しかも俺達のいる森の、さらに上空の方からね。
ギェェェというその聞き慣れない声に、その場にいた全員が一瞬で武器を構えた。いつ襲われても良いようにと、既に全員が臨戦態勢だ。
木々に紛れてここからはまだ姿は見えないけど、でもたぶんあれがワイバーンの鳴き声なんだろうな。
「B3はたしかムレングゴーレム、C4はウェルトウルフだったな?」
ここにはまだ俺と領主城から来た使用人さんと騎士さんたちしかいないからか、マチルダさんはいつもの調子でそう尋ねた。
「はい、間違いありません」
ダンジョンに全く詳しくない俺には、名前を聞いてもどんな種類かまでは分からないけど――とりあえずゴーレム種とウルフ種だって事だけは分かった。
「ウェルトウルフは問題ないだろうが、ムレングゴーレムは長引くかもしれないな…それならB3地点からはある程度の距離があり、なおかつ戦闘に適していそうな場所はどこかあるか?」
「はっ、すぐにご案内します」
迷いなく進む騎士さんの背中を追って、俺たちは武器を持ったまま素早く動き出した。
マチルダさんの言う戦闘に適している場所というのは、木々が少ない場所の事らしい。この辺りはどうしても木が密集しているから、ワイバーンも狙いを定めにくいんだって。
まあ木なんてなぎ倒して襲ってくる――なんて事もあるらしいけどね。
今はあちこちで色んな人が魔物と戦ってる最中だから、戦闘のせいでその辺りの木がたくさん折れたりしていると狙われやすくなってしまうそうだ。
マチルダさんが長引くって言ってるゴーレムと戦ってる時に、空からも魔物が来るなんて恐ろしすぎるよね。だからこの案内役の騎士さんは、必死になって報告に来てくれたんだろう。
「この先です」
すこしひそめた声でそう言った騎士さんに、全員が無言のままこくりと頷いた。
慎重に空が見える所まで近づいてみれば、そこには高い所を飛び回っている数頭の細身のワイバーンの姿があった。
俺が想像してたよりも、ドラゴンっぽくは無いな。どちらかというとこうもりみたいな翼の生えた巨大なトカゲみたいだ。
「アキト、いけるか?」
そう言いながら、マチルダさんはじっとまっすぐに俺の目を見つめた。俺ならできると信じてくれているんだなと分かる目だ。
「いけます」
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