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1487.【ハル視点】新素材の縄
約束を取り付けた遠征参加者たちが喜ぶなか、ふと気づけば盗賊団の首領イハクもしっかりと拘束された後だった。
「ひとまず拘束は終わりましたが…この後はどうしましょうか?」
ルピカがそう声をかければ、父さんはありがとうと笑顔で返した。
「盗賊団の連行はやはり衛兵に頼みたいな。彼らはプロだから…」
「「「まかせてくださいっ!」」」
数名の衛兵が、誇らし気な顔で元気に叫ぶ。
「よっしゃ、領主様にああまで言われたんだ!衛兵の名にかけて絶対に逃がすなよ!」
背筋をぴんっと伸ばしてはいっと答えているのは、若手の衛兵たちだな。
俺の師匠を含む数人のベテラン組はというと、床に無造作に転がされている盗賊たちをしゃがみこんで観察中だ。
盗賊たちは捕まってからもしばらくはギャーギャーと叫び続けていたんだが、あまりのうるささにどうやら口にも詰め物をされたみたいだ。今はくぐもった声をあげつつ地面に転がりながら、何とか逃げれないかと身をよじっている。
「おおっ!…この縄の結び方すごいな!」
「本当だ。きっちり固定されてる」
「それに…これはかなり頑丈な縄だな」
「お、分かるー?」
嬉しそうにニコニコと笑って答えたのは、冒険者のミルゴだった。
「分かるとも!」
「これはねームレングダンジョンに出てくるエイジトレントの素材を使って、作られた縄なんだ」
「エイジトレントって…あれか?」
「えっと…たしか、動かずに攻撃してくるやつ?」
「そうそう、それで合ってるよ」
「あー…あの厄介な待ち伏せトレントですか」
そう呟いたのは、ファーガス兄さんの隊に所属している隊員だ。ムレングダンジョンに潜る事が多い騎士の中では、どうやら待ち伏せトレントと呼ばれているみたいだ。
たしかにあれは待ち伏せトレントって感じだよねと、ミルゴは楽し気に笑いながら続けた。
「ほらエイジトレントって、ぐんっとツタを伸ばして攻撃に使ってくるでしょ?あのツタを素材として使ってるんだ。あれを切り落としておいて太陽の光でしっかり干してよーく乾かしてから、より合わせたものなんだ」
エイジトレントのツタに素材としての使い道なんてあったのか…と囁き合う声が、色んな方向から聞こえてくる。
うん、その気持ちは分かる。俺もあれはただ面倒な攻撃だとしか思っていなかったからな。素材として持って帰ろうかと考えた事すらなかった。
「知らなかったな…」
「ああ、全く知らなかった」
「いやまあ、俺達もずーっと知らなかったんだけどね?最近になってもしかしたら使えるんじゃないかってひらめいた探索者がいたらしいよ」
その辺りの事はくわしくないけどと苦笑したミルゴの言葉を、横からルピカが補足してくれた。
何でもそのひらめいた探索者から冒険者ギルドに話が来て、ムレングダンジョンに潜る人たちでひとまず素材を集めてみたらしい。そうしてあっという間に職人を捕まえてきて試作品が作られた…と。
その探索者は、凄腕の商人か何かだったんだろうか。とにかく行動が早いな。
「まあまだこれも試作品なんだが…素材を集めた俺達には、使ってみて感想を教えてくれって特別に渡されてるんだよ」
サイクもそう教えてくれた。
なるほど。まだ商品としては出回っていないのか。
「この強度…欲しいな」
「ああ、面倒な捕縛が楽になりそうだ」
「しかも軽い…」
ベテラン衛兵たちの言葉に、騎士や使用人たちも興味を持ったらしい。何人かは移動して縄の確認に向かっている。
父さんはそんな皆の反応を見て、ちらりとリヤンに視線を向けた。何とかしてくれって感じの視線だな。
「あーその縄の製作者には、領主城からも欲しいと言われているとちゃんと伝えておくよ。これは冒険者ギルドのギルマスとしての言葉だ」
ギルマスとして、とまで言うのは珍しいな。リヤンがそう確約してくれるならと、集まっていた参加者たちも仲間がいる場所へといそいそと戻っていく。
そんななか少しだけ空気が緩んだ瞬間を狙って、隙をついて逃げ出そうと立ち上がった盗賊団の男がいた。
両手を後ろ手に縛られているのに、器用なものだな。
まあ数歩も行かない間に、師匠がすかさず足をひっかけたからあっさりと地面に逆戻りしたわけだが。
「まだ逃げるかーよし、足も縛ろう」
「足はこう縛ると、走り難くなるから…」
とりあえず盗賊団の方は、心配はいらなさそうだな。
「ひとまず拘束は終わりましたが…この後はどうしましょうか?」
ルピカがそう声をかければ、父さんはありがとうと笑顔で返した。
「盗賊団の連行はやはり衛兵に頼みたいな。彼らはプロだから…」
「「「まかせてくださいっ!」」」
数名の衛兵が、誇らし気な顔で元気に叫ぶ。
「よっしゃ、領主様にああまで言われたんだ!衛兵の名にかけて絶対に逃がすなよ!」
背筋をぴんっと伸ばしてはいっと答えているのは、若手の衛兵たちだな。
俺の師匠を含む数人のベテラン組はというと、床に無造作に転がされている盗賊たちをしゃがみこんで観察中だ。
盗賊たちは捕まってからもしばらくはギャーギャーと叫び続けていたんだが、あまりのうるささにどうやら口にも詰め物をされたみたいだ。今はくぐもった声をあげつつ地面に転がりながら、何とか逃げれないかと身をよじっている。
「おおっ!…この縄の結び方すごいな!」
「本当だ。きっちり固定されてる」
「それに…これはかなり頑丈な縄だな」
「お、分かるー?」
嬉しそうにニコニコと笑って答えたのは、冒険者のミルゴだった。
「分かるとも!」
「これはねームレングダンジョンに出てくるエイジトレントの素材を使って、作られた縄なんだ」
「エイジトレントって…あれか?」
「えっと…たしか、動かずに攻撃してくるやつ?」
「そうそう、それで合ってるよ」
「あー…あの厄介な待ち伏せトレントですか」
そう呟いたのは、ファーガス兄さんの隊に所属している隊員だ。ムレングダンジョンに潜る事が多い騎士の中では、どうやら待ち伏せトレントと呼ばれているみたいだ。
たしかにあれは待ち伏せトレントって感じだよねと、ミルゴは楽し気に笑いながら続けた。
「ほらエイジトレントって、ぐんっとツタを伸ばして攻撃に使ってくるでしょ?あのツタを素材として使ってるんだ。あれを切り落としておいて太陽の光でしっかり干してよーく乾かしてから、より合わせたものなんだ」
エイジトレントのツタに素材としての使い道なんてあったのか…と囁き合う声が、色んな方向から聞こえてくる。
うん、その気持ちは分かる。俺もあれはただ面倒な攻撃だとしか思っていなかったからな。素材として持って帰ろうかと考えた事すらなかった。
「知らなかったな…」
「ああ、全く知らなかった」
「いやまあ、俺達もずーっと知らなかったんだけどね?最近になってもしかしたら使えるんじゃないかってひらめいた探索者がいたらしいよ」
その辺りの事はくわしくないけどと苦笑したミルゴの言葉を、横からルピカが補足してくれた。
何でもそのひらめいた探索者から冒険者ギルドに話が来て、ムレングダンジョンに潜る人たちでひとまず素材を集めてみたらしい。そうしてあっという間に職人を捕まえてきて試作品が作られた…と。
その探索者は、凄腕の商人か何かだったんだろうか。とにかく行動が早いな。
「まあまだこれも試作品なんだが…素材を集めた俺達には、使ってみて感想を教えてくれって特別に渡されてるんだよ」
サイクもそう教えてくれた。
なるほど。まだ商品としては出回っていないのか。
「この強度…欲しいな」
「ああ、面倒な捕縛が楽になりそうだ」
「しかも軽い…」
ベテラン衛兵たちの言葉に、騎士や使用人たちも興味を持ったらしい。何人かは移動して縄の確認に向かっている。
父さんはそんな皆の反応を見て、ちらりとリヤンに視線を向けた。何とかしてくれって感じの視線だな。
「あーその縄の製作者には、領主城からも欲しいと言われているとちゃんと伝えておくよ。これは冒険者ギルドのギルマスとしての言葉だ」
ギルマスとして、とまで言うのは珍しいな。リヤンがそう確約してくれるならと、集まっていた参加者たちも仲間がいる場所へといそいそと戻っていく。
そんななか少しだけ空気が緩んだ瞬間を狙って、隙をついて逃げ出そうと立ち上がった盗賊団の男がいた。
両手を後ろ手に縛られているのに、器用なものだな。
まあ数歩も行かない間に、師匠がすかさず足をひっかけたからあっさりと地面に逆戻りしたわけだが。
「まだ逃げるかーよし、足も縛ろう」
「足はこう縛ると、走り難くなるから…」
とりあえず盗賊団の方は、心配はいらなさそうだな。
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