生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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1489.【ハル視点】決断

 なるほどと小さく呟いて黙り込んだ父さんの前で、マルクは急かすでもなく静かに答えを待っている。ダンジョン内での使用実績は無いが、魔道具の性能自体には自信がある。そんな感じだな。

 いったいどんな判断をするのかが気になっているのは、俺だけでは無い。当然周囲の視線も、父さんに集中している。

「どうするー?」

 黙ったままの父さんに、ウィル兄がそう声をかける。

「ぜひ使わせてもらいたいな」
「安全性は保証できませんが…」

 念を押すようにそう尋ねるマルクに、父さんはあっさりと答えた。

「もしその爆発で床が抜けたら階層を移動すれば良いし、壁が壊れたらそこから脱出できるからそちらも問題ない」
「…確かにそうだな」
「ああ、そうですね」
「どちらにしても状況は変わりますし」
「さすがにあの規模の爆発でもびくともしない床は残ると思うけどなー」

 わいわいと盛り上がり始める周囲の会話に、一瞬だけ目を見開いたマルクは次の瞬間には楽し気に声をあげて笑い出した。

「マルク、ちょっと!そ、そんなに笑うなんて…失礼じゃないっ?」

 慌てた様子のコーデリアが、冒険者たちの所から走って飛び出して来るなりそう声をかけた。

「ああ、ごめんね、コーデリア。あの、みなさんも、すみません」
「いや、気にしていないよ」

 みんなを代表して、父さんがそう答える。

 実際に誰も気にしていないだろうからな。それに今の笑いは、別に遠征参加者たちを馬鹿にしてるとかそういう雰囲気では無さそうだった。

 マルクは大きく深呼吸をすると、口を開いた。

「そんな危険な物を使うわけが無いだろう。そう言われるかと思いながらも、一応提案だけでもするつもりだったんです。なのにあっさりと採用された上に、反対意見すら無い。あまりに予想外すぎて笑ってしまいました」

 ああ、なるほど。それで笑ったのか。

「魔道具技師として全力を尽くしますね」

 そう答えたマルクは、キリッと引き締まった表情を浮かべている。

「マルク殿、ありがとう」
「いえ」
「よし、それじゃあ魔道具を設置するのはどこで、俺達はどこまで退避すれば良いんだ?」

 使うのが魔道具なら、魔道具技師であるマルクに聞くのが一番早い。そう考えたのだろうファーガス兄さんが、すぐさまそう尋ねる。

「設置する場所は…あの盗賊団がつぶしたあっちの瓦礫の少し手前ぐらいですね」

 発動にはすこし距離があった方が良いのでと言うなり、マルクはスタスタと無造作に部屋の中を歩き出す。全員が見守るなか部屋の半ば程度でぴたりと足を止めると、そこで口を開いた。

「退避は…この部屋のこの辺りよりこちら側にいてもらえれば、爆風などの影響は無いでしょう」

 手で方向を指定しながらそう断言したマルクの言葉を聞いて、指定された辺りより向こう側にいた参加者たちが慌てた様子で一斉に動き出した。

 折角倒した魔物を、爆風の影響がある範囲に置いておくわけにはいかないからな。素材だって、無駄な傷が増えれば当然買取価格は安くなる。

 魔物を倒していた参加者たちは、手分けして魔導収納鞄へとしまい始めている。

「設置の手伝いは必要だろうか?」
「あ、もしよければ、俺が手伝おうかー?」

 父さんの声かけに、ウィル兄が手先は器用な方だよーと笑顔で名乗りをあげる。

「いえ、設置作業は一人でも大丈夫ですので、お気持ちだけ頂いておきますね。ただ…コーデリア、廊下の辺りに罠が無いかは見てくれる?」
「ええ、言われなくてもそのつもりよ。絶対に必要な作業よね。あいつらが他にも何か仕掛けてる可能性はあるもの」
「うん。しつこいぐらい疑ってかかった方が良いよね」
「瓦礫を動かした後も、どこかに罠がある可能性があるから油断はできないわよ」

 飛び出してきた流れでマルクの隣にいたコーデリアが、真剣な表情でそう答える。

「その辺りはまずは瓦礫を壊せてから考えよう」
「それもそうね」

 うんうんと頷きあう二人を見て、父さんは頼もしいなと笑顔を見せた。
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