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1516.お世話係
西の道を選んだ俺達は、一団となって森の中を進んでいく。
俺とハルを乗せたリヒターさんの後ろにはシュリくん、さらにその後ろにはギュームさんを乗せたロゼさんが続く形だ。
それにしても、シュリくんってこんなに速く走れるんだね。
キースくんを乗せて走ってる所は見た事があるけど、その時はここまで速くは走ってなかった。いきなりこんな速度で走ったら、キースくんを怖がらせるかもとか考えて速度をセーブしてくれてたのかな。
シュリくんの優しさを微笑ましく感じていると、周囲の木々が少しずつ減ってきているのに気が付いた。
「そろそろ領主城の森を抜けるよ」
誰にともなくそう告げたハルの声に、リヒターさんはパッと周囲を見回してから答えた。
「おお、なるほど。西の道はここに出るのか。ということは…ここは左側の道かな?」
「ああ、厩舎はそっちで正解だ」
リヒターさんは、どうやら方向感覚がかなり優れているみたいだ。慣れない場所で違う道を通って帰ってきたのに、次の道が予想できるんだから。
「よし、もうすこしだな。頑張れシュリ」
「まだだいじょうぶだよ」
「ロゼは、大丈夫だな?」
「ええ、問題ないわ。ギュームは乗るのが上手だから」
「そう言って頂けると光栄です」
そんなやりとりをしている間に、俺達は領主城の森を完全に抜けた。遠くにはもう厩舎の建物の端っこが見えてきている。
リヒターさんの提案で一気に速度があがってからは、本当にあっという間だったな。
「それにしても…すごく速かったね。安定感のある走りで、楽に運んで貰えて本当に助かったよ。ありがとう」
リヒターさんにお礼を言っているハルの声が、すぐ後ろから聞こえてくる。俺も慌ててありがとうございますと声をかけた。
「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいもんだな。夜に速度をあげすぎると怖いと言われる事もあるんだが、二人は全然動じてなかったよな」
「…そうかな?」
俺もハルと同じくそうかな?って思ったよ。
たしかにハルはずっと落ち着いてたよ。でも俺は、密かに大興奮してたからね。だってこんなに格好良く夜の森を駆け抜けてる姿を、背中に乗った状態で見せてもらえるんだから。
ギュームさんがキラキラした目をしてるのと同じくらい、俺も目が輝いてた気がする。
「二人とも大声で騒がないし、こちらの意図を組んで指示も出さずにいてくれた」
あー…うん。俺も叫んではいなかったな。内心では大騒ぎでも、魔物がいるかもしれない森の中だからって警戒の方に意識がいってた。指示を出さなかったのはハルだけで、俺はそもそも指示を出せないんだけど…ね。
「ハルの道案内も丁寧だったし、しっかりと気配探知もしてくれた。ハルもアキトも良い乗り手だったよ」
「それは良かった」
「ありがとうございます」
お礼を言い合った所で、厩舎の入口が見えてきた。入口の前には数人のお世話係の人たちが立っていて、すぐに近づいてくる俺達に気が付いた。
「帰ってきた!」
「おい、帰ってきたぞ!」
「ギュームたちが帰ってきた!」
建物の中に向かってそう叫べば、バタバタと大勢の人が飛び出してくる。
「シュリ様は?無事か?」
「あ、リヒター様の背にはハロルド様?…え、ハロルド様がなぜそちらからっ!?」
「アキト様も一緒だ!」
「あれ、ギュームは?」
「うわ、ロゼ様の背中で蕩けてる!」
「羨ましいな、ギューム!」
「ずるいぞ!」
おお、何だかすごい勢いだ。
「全員無事だぞ」
リヒターさんがそう答えれば、お世話係の人たちはぴたりと動きを止めた。
「「「無事のお帰り何よりです!」」」
何だろうこの反応と困惑していると、ハルが耳元でそっと囁いて教えてくれた。
「多分、喋るウマを初めてみたんだろう」
「あー…そういう事か」
「みんな、ただいまー」
シュリくんの可愛い挨拶に、お世話係の人たちが揃って歓声をあげた。何だか日常に戻ってきたって感じがするな。
俺とハルを乗せたリヒターさんの後ろにはシュリくん、さらにその後ろにはギュームさんを乗せたロゼさんが続く形だ。
それにしても、シュリくんってこんなに速く走れるんだね。
キースくんを乗せて走ってる所は見た事があるけど、その時はここまで速くは走ってなかった。いきなりこんな速度で走ったら、キースくんを怖がらせるかもとか考えて速度をセーブしてくれてたのかな。
シュリくんの優しさを微笑ましく感じていると、周囲の木々が少しずつ減ってきているのに気が付いた。
「そろそろ領主城の森を抜けるよ」
誰にともなくそう告げたハルの声に、リヒターさんはパッと周囲を見回してから答えた。
「おお、なるほど。西の道はここに出るのか。ということは…ここは左側の道かな?」
「ああ、厩舎はそっちで正解だ」
リヒターさんは、どうやら方向感覚がかなり優れているみたいだ。慣れない場所で違う道を通って帰ってきたのに、次の道が予想できるんだから。
「よし、もうすこしだな。頑張れシュリ」
「まだだいじょうぶだよ」
「ロゼは、大丈夫だな?」
「ええ、問題ないわ。ギュームは乗るのが上手だから」
「そう言って頂けると光栄です」
そんなやりとりをしている間に、俺達は領主城の森を完全に抜けた。遠くにはもう厩舎の建物の端っこが見えてきている。
リヒターさんの提案で一気に速度があがってからは、本当にあっという間だったな。
「それにしても…すごく速かったね。安定感のある走りで、楽に運んで貰えて本当に助かったよ。ありがとう」
リヒターさんにお礼を言っているハルの声が、すぐ後ろから聞こえてくる。俺も慌ててありがとうございますと声をかけた。
「どういたしまして。そう言ってもらえると嬉しいもんだな。夜に速度をあげすぎると怖いと言われる事もあるんだが、二人は全然動じてなかったよな」
「…そうかな?」
俺もハルと同じくそうかな?って思ったよ。
たしかにハルはずっと落ち着いてたよ。でも俺は、密かに大興奮してたからね。だってこんなに格好良く夜の森を駆け抜けてる姿を、背中に乗った状態で見せてもらえるんだから。
ギュームさんがキラキラした目をしてるのと同じくらい、俺も目が輝いてた気がする。
「二人とも大声で騒がないし、こちらの意図を組んで指示も出さずにいてくれた」
あー…うん。俺も叫んではいなかったな。内心では大騒ぎでも、魔物がいるかもしれない森の中だからって警戒の方に意識がいってた。指示を出さなかったのはハルだけで、俺はそもそも指示を出せないんだけど…ね。
「ハルの道案内も丁寧だったし、しっかりと気配探知もしてくれた。ハルもアキトも良い乗り手だったよ」
「それは良かった」
「ありがとうございます」
お礼を言い合った所で、厩舎の入口が見えてきた。入口の前には数人のお世話係の人たちが立っていて、すぐに近づいてくる俺達に気が付いた。
「帰ってきた!」
「おい、帰ってきたぞ!」
「ギュームたちが帰ってきた!」
建物の中に向かってそう叫べば、バタバタと大勢の人が飛び出してくる。
「シュリ様は?無事か?」
「あ、リヒター様の背にはハロルド様?…え、ハロルド様がなぜそちらからっ!?」
「アキト様も一緒だ!」
「あれ、ギュームは?」
「うわ、ロゼ様の背中で蕩けてる!」
「羨ましいな、ギューム!」
「ずるいぞ!」
おお、何だかすごい勢いだ。
「全員無事だぞ」
リヒターさんがそう答えれば、お世話係の人たちはぴたりと動きを止めた。
「「「無事のお帰り何よりです!」」」
何だろうこの反応と困惑していると、ハルが耳元でそっと囁いて教えてくれた。
「多分、喋るウマを初めてみたんだろう」
「あー…そういう事か」
「みんな、ただいまー」
シュリくんの可愛い挨拶に、お世話係の人たちが揃って歓声をあげた。何だか日常に戻ってきたって感じがするな。
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