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1530.【ハル視点】素晴らしい速さ
アキトと俺を背中に乗せたリヒターさんは、大人を二人も乗せているとはとても思えないくらい軽やかに歩き出した。
その足取りに迷いは一切ない。こんな暗闇の中でも、切り株や段差を軽々と飛び越えながら難なく進んでいく。
「こんなに暗いのに、みなさんにはちゃんと見えてるんですか?」
アキトがそう尋ねてくれた時は、よくぞ聞いてくれたと思ったね。俺もすごく気になっていたから。
リヒターさんもロゼさんも、そしてシュリもちゃんと見えてると答えていた。そうなのかと驚いたのは、俺とアキトだけだったようだ。
ウマに詳しいギュームにとっては、それは当たり前の事だったらしい。
「暗さを苦にしないウマは、実はかなり多いんですよ。うちの厩舎にもそれなりの数がいます」
ずっとロゼさんの背中の上で幸せそうな顔をしていたんだが、こういう説明はちゃんとしてくれるんだな。話しすら聞いていないかと思っていたぐらい満面の笑みだったんだが。
「これは人でいうなら簡単な身体強化魔法みたいなものなんだけど、たまにどうしても苦手なやつもいるからなぁ」
「「「身体強化魔法?」」」
当然のように告げられた予想外の言葉に、アキトと俺、それにギュームの声が綺麗に重なった。
「ああ、体内の魔力を使って、目の機能を強化してるって感じだな」
「…それは、初めて聞きました」
感動に打ち震えるギュームに、リヒターさんは不思議そうに答えた。
「おや、そうなのか」
「別に隠しているわけでもないけど、広まってないのねぇ」
「人でも身体強化魔法が使えるものなら、練習すればできるようになるかもしれないぞ」
リヒターさんは楽し気にそう教えてくれた。身体強化魔法か。
「身体強化か…俺もアキトも使えないな」
残念ながら身体強化魔法は遺伝するものだと、ファリーマが言っていたな。
「そうなのか」
「…身体強化って…たしかカーディが使えるって…言ってなかったっけ?」
アキトはいつかそんな話しを聞いた気がするんだけどと、そう続けた。
「ああそういえば言ってたな」
思い出しながら頷けば、アキトはすぐにリヒターさんに声をかけた。
「リヒターさん、友人にこの話を教えても良いですか?」
「ああ、もちろんだ」
「何なら他の人にも広めてくれても良いからね」
どうやらロゼさんも反対するつもりは無いようだ。
「許可ももらえたし、今度カーディに会ったら教えてみようね!」
「ああ、そうだな。魔道具製作のための素材採取には役立つかもしれない。夜しか取れない素材なんてものもあるからね」
カーディさん一人では行かせられないと大騒ぎして、護衛の冒険者まで雇うクリスの姿が、簡単に想像できてしまったな。
その時は身体強化魔法が使える人を雇えと、友人として助言してやるとしよう。
最初はゆっくりと進んでくれていたリヒターさんだが、アキトと俺が全く怖がっていないと気付いてからはどんどん速度をあげ始めた。
「もっと速度をあげても良い?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
すこしでもはやく辿り着きたいからと頷いた途端、このあり得ないほどの速度だ。
しかも驚いた事に、ギュームを乗せたロゼさんと、ついさっきまで眠そうにしていたシュリもその速度に少しも遅れずについてきている。
「シュリ、しばらく離れている間に、走るのが上手くなったわね」
ロゼさんからそう褒められたシュリは、そうかなと不思議そうに答えた。
「なんどか、ひとをのせて、はしったから…かな?」
「まあ、誰を乗せたの?」
「えっとね、友達になったキースと、アキトだよ」
「アキトさん、そうなの?」
「あ、はい。盗賊団から逃げる時に乗せてもらいました」
アキトは嬉しそうに弾む声で、シュリの活躍をあれこれと伝え始めた。シュリを心から尊敬しているのが伝わってくるような話し方に、リヒターさんもロゼさんも嬉しそうに聞き入っていた。
アキトを気に入っているウマが、また増えてしまったのかもしれないな。リヒターさんとロゼさんが相手なら、さすがに嫉妬はしないが。
その足取りに迷いは一切ない。こんな暗闇の中でも、切り株や段差を軽々と飛び越えながら難なく進んでいく。
「こんなに暗いのに、みなさんにはちゃんと見えてるんですか?」
アキトがそう尋ねてくれた時は、よくぞ聞いてくれたと思ったね。俺もすごく気になっていたから。
リヒターさんもロゼさんも、そしてシュリもちゃんと見えてると答えていた。そうなのかと驚いたのは、俺とアキトだけだったようだ。
ウマに詳しいギュームにとっては、それは当たり前の事だったらしい。
「暗さを苦にしないウマは、実はかなり多いんですよ。うちの厩舎にもそれなりの数がいます」
ずっとロゼさんの背中の上で幸せそうな顔をしていたんだが、こういう説明はちゃんとしてくれるんだな。話しすら聞いていないかと思っていたぐらい満面の笑みだったんだが。
「これは人でいうなら簡単な身体強化魔法みたいなものなんだけど、たまにどうしても苦手なやつもいるからなぁ」
「「「身体強化魔法?」」」
当然のように告げられた予想外の言葉に、アキトと俺、それにギュームの声が綺麗に重なった。
「ああ、体内の魔力を使って、目の機能を強化してるって感じだな」
「…それは、初めて聞きました」
感動に打ち震えるギュームに、リヒターさんは不思議そうに答えた。
「おや、そうなのか」
「別に隠しているわけでもないけど、広まってないのねぇ」
「人でも身体強化魔法が使えるものなら、練習すればできるようになるかもしれないぞ」
リヒターさんは楽し気にそう教えてくれた。身体強化魔法か。
「身体強化か…俺もアキトも使えないな」
残念ながら身体強化魔法は遺伝するものだと、ファリーマが言っていたな。
「そうなのか」
「…身体強化って…たしかカーディが使えるって…言ってなかったっけ?」
アキトはいつかそんな話しを聞いた気がするんだけどと、そう続けた。
「ああそういえば言ってたな」
思い出しながら頷けば、アキトはすぐにリヒターさんに声をかけた。
「リヒターさん、友人にこの話を教えても良いですか?」
「ああ、もちろんだ」
「何なら他の人にも広めてくれても良いからね」
どうやらロゼさんも反対するつもりは無いようだ。
「許可ももらえたし、今度カーディに会ったら教えてみようね!」
「ああ、そうだな。魔道具製作のための素材採取には役立つかもしれない。夜しか取れない素材なんてものもあるからね」
カーディさん一人では行かせられないと大騒ぎして、護衛の冒険者まで雇うクリスの姿が、簡単に想像できてしまったな。
その時は身体強化魔法が使える人を雇えと、友人として助言してやるとしよう。
最初はゆっくりと進んでくれていたリヒターさんだが、アキトと俺が全く怖がっていないと気付いてからはどんどん速度をあげ始めた。
「もっと速度をあげても良い?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
すこしでもはやく辿り着きたいからと頷いた途端、このあり得ないほどの速度だ。
しかも驚いた事に、ギュームを乗せたロゼさんと、ついさっきまで眠そうにしていたシュリもその速度に少しも遅れずについてきている。
「シュリ、しばらく離れている間に、走るのが上手くなったわね」
ロゼさんからそう褒められたシュリは、そうかなと不思議そうに答えた。
「なんどか、ひとをのせて、はしったから…かな?」
「まあ、誰を乗せたの?」
「えっとね、友達になったキースと、アキトだよ」
「アキトさん、そうなの?」
「あ、はい。盗賊団から逃げる時に乗せてもらいました」
アキトは嬉しそうに弾む声で、シュリの活躍をあれこれと伝え始めた。シュリを心から尊敬しているのが伝わってくるような話し方に、リヒターさんもロゼさんも嬉しそうに聞き入っていた。
アキトを気に入っているウマが、また増えてしまったのかもしれないな。リヒターさんとロゼさんが相手なら、さすがに嫉妬はしないが。
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