生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
16 / 1,561

15.拾得物の扱い

 おじさんは我に返ると、穏やかに話し出した。

「失礼しました。20年もここで待ち続けていた、見えて話せる人がいることに驚いてしまって…私の名前はカルツといいます」
「アキトです」
「ハルです」
「その、届けてほしいのは私の遺品なんです」
「遺品というと具体的には何ですか?」

 ハルはカルツさんをまっすぐにみつめて尋ねた。

「……魔道収納袋…です」

 すごく言い難そうに告げてくれたけど、まずその物が何か分かりません。

「ハル、それって何?」
「時間経過の無い、たくさんのものが入る魔道具の一種…だな」

 それっていわゆるマジックバッグか。ゲームとかではよくある、たくさんのアイテムを軽々運べるやつ。小説なんかだと、身軽に旅ができる便利アイテム認定されてるよな。そんな便利なものが存在してる世界なんだ、ここ。

「待ってください、魔道収納袋を知らないんですか?」

 魔道収納袋は一般常識レベルの知識なのか。怪訝そうなおじさんに、ハルは無表情のままちらりとこっちを見た。あの表情はかなり焦ってるんだろうな。何と言えばごまかせるか、すごく考えてくれてるのが分かる。

「ああ、俺、異世界人ですから」
「アキト!良いのか?」
「霊だったら俺以外の人には話せないし、利用されようが無いから良いんじゃない?」
「そうですか。異世界から来たんですか…それは大変でしたね」

 話を聞くなりそう言ってくれるカルツさんは、やっぱり悪い人じゃないと思うし。

「まあ大変でしたけど、ハルっていう頼れる仲間も出来ましたし」

 正直、ハルがいなかったらあの森からさえ出れた気はしないんだけど。

「そうですか、それは良かった」

 安心したと言いたげなカルツさんと笑い合う。

「それで、その魔道収納袋を、どこの誰に届けたいんですか?」
「領都トライプールに住んでいる私の家族に」

 領都に住む家族に遺品を届けたい。きっとそれがこの人の心残りなんだろう。旅装って事は、多分旅の途中で亡くなったんだな。これはきっちり届けてあげたい。

「その…とても言い難いんですが、交渉しても良いでしょうか?」

 いきなり交渉って何の話だろうと不思議に思ったが、当然の事だと頷いているハルの様子を見て開きかけた口を閉じる。

「異世界の方ならご存じないかと思いますが、魔道収納袋はかなりの高値で取引されるものですし、これは中身も入った状態です」

 だから何?と首を傾げれば、頼れるハルの助言が来た。

「落とし物は、基本的に拾った人のものになるんだ」
「は?……なんだよその拾得物10割ルール!」
「しゅ?る?アキト、また異世界語が出てるよ」
「あ、ごめん」

 拾得物もルールも駄目か。ルールとか普通に口から出る単語だもんな、気を付けよう。

「それさ…盗難された時は?拾ったものと違いが分からないだろ?」
「そこは鑑定魔法で分かるよ」
「へーそうなんだ」

 鑑定魔法さん、便利ー。

 ただ鑑定魔法は結構な魔力を使うから、普通の人なら1日に数回使える程度。冒険者は戦闘時に必要な魔力を残しておくからそもそもあまり使わないんだって。

 ちなみに衛兵さんのところにはお抱えの鑑定魔術師が複数いるから、犯罪関係の時は優先的に鑑定してもらえるんだって。

「でも落とし物って、落とされてすぐに拾ったらどうなるの?」
「失くしてから1年以内なら衛兵が間に立って交渉してくれたりもするな」

 だいたいは落とし物の1割程度のお金で解決するんだって。それぐらいなら、まあ分からなくも無い制度だ。

「ご理解頂けたようなら、続けますね」

 ハルが俺に詳しい説明をしてくれている間、カルツさんはただ静かに待ってくれていた。説明を遮って話しださないあたりにカルツさんの性格が出てるな。

「つまり私にこの遺品の権利はありません。ですので、この遺品を届けて欲しいのは、ただの私のわがままなんです」

 頷いているハルの様子からして、この世界ではそういう認識なんだな。

「家族に届けるのは魔道収納袋か中身、どちらかだけで良いんです。何とか頼めないでしょうか?」
「いや、まるっと全部届けますよ?」
「難しいのは分かっていますが、私は家族の…今なんと?」
「まるっと全部届けます」

 カルツさんはまたしてもフリーズしてしまった。何だかよく固まる人だよな。どうしようとハルを見れば、俺がそう言うのを分かってたみたいな顔をしていた。

 何だか恥ずかしくなったので、笑ってごまかしておいた。
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。