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16.木登り
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フリーズから復活するなり、カルツさんは怒涛のように感謝の言葉を述べ続けた。怖いくらいの勢いのカルツさんを二人がかりで何とかなだめてから、遺品の場所を聞き出した。
案内されるままについていくと、湖から少し離れた場所に立つ大きな木に辿り着いた。高さで言うと、2階建ての家の屋根くらいかな。
「この木の途中、あの枝分かれした辺りに、小動物の巣になっていた穴があります」
「え、小動物の巣から取るの?」
それはちょっと抵抗があると言おうとすると、カルツさんは即座に否定してきた。かつては巣だった場所ではあるが、もっと良い巣がみつかったのか今は使われてないらしい。
「しかし、登るのは危なくないか?」
「そうなんです」
心配そうなハルの前で、俺はパパっとブーツと靴下を脱ぎ捨てる。
「大丈夫、木登りなら自信がある」
言い切った俺に、ハルだけじゃなくカルツさんまで心配顔だ。
まったく期待されてないな。こうなったら論より証拠と、助走をつけて木に飛びついた。驚いている二人を置き去りにするすると登っていくと、あっさり穴は見つかった。
中をのぞいて、本当に何もいないのを確認してから手を入れる。奥の方に入っていたのは、手のひらぐらいの大きさの巾着袋だ。形はアックスさんに貰った、俺の財布にちょっと似てる。
「これかな?」
「はい、それです!」
独り言のつもりが、真後ろから声がしてびっくりしてしまった。
「カルツさん、アキトを驚かさないでください。落ちたらどうするんです」
思わず体を揺らした俺を見たハルから、カルツさんに注意が飛ぶ。
必死で謝るカルツさんと、説教しているハルを木の上に置いて、今度は下へと降りていく。地面に辿り着いてから見上げると、二人はひょいっと飛び降りてきた。実体が無いと楽だね。
一応ちゃんと確認してもらうべきかなと、とってきた巾着をカルツさんに見せる。さっきは気づかなかったけれど、裏面に複雑な文様が刺繍されていた。
「ああ、カルツさんはスラテール商会の人でしたか」
文様を見たハルは、ある商会の名前を口にした。どうやら、商会の一員であることを証明するための文様を刺繍してあるらしい。
ハルの言葉に、カルツさんは今日一番の満面の笑みを浮かべる。
「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
笑顔の意味が分からなかった俺は、素直に聞いてみた。
「見たところ、ハルさんはまだ霊になってそれほど経っていないのでしょう?」
「はい、まだ数か月です」
「そのあなたがスラテール商会の名を知っているなら、それは商会が今まで無事に続いているということですから」
理由を聞けば納得だった。カルツさんの残した商会を、今でも続けてくれている家族を思ったのか。
「あの、カルツさんって、移動できるんですか?」
「その遺品と一緒になら、移動できます」
「じゃあ、今までは移動できなかったんですね」
心残りの物の側から動けなくなる霊は、実は一定数いる。珍しいことではないけど、カルツさんは20年も家族の様子を見に行くこともできなかったって事だ。
「じゃあ、一緒に行こうか」
言いながら、リュックの奥底に魔道収納袋をしまい込んだ。高値の入れ物に高価なものが入ってるとか、考えると恐ろしいからな。落とさないように一番下だ。
「あの、中身は見なくて良いのですか?」
「見ても意味ないから、見なくて良いです」
「しかし」
「アキトは、こういう奴です」
「よし、行くよー二人とも!」
なぜか俺一人と幽霊二人で、領都を目指すことになりました。
案内されるままについていくと、湖から少し離れた場所に立つ大きな木に辿り着いた。高さで言うと、2階建ての家の屋根くらいかな。
「この木の途中、あの枝分かれした辺りに、小動物の巣になっていた穴があります」
「え、小動物の巣から取るの?」
それはちょっと抵抗があると言おうとすると、カルツさんは即座に否定してきた。かつては巣だった場所ではあるが、もっと良い巣がみつかったのか今は使われてないらしい。
「しかし、登るのは危なくないか?」
「そうなんです」
心配そうなハルの前で、俺はパパっとブーツと靴下を脱ぎ捨てる。
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「これかな?」
「はい、それです!」
独り言のつもりが、真後ろから声がしてびっくりしてしまった。
「カルツさん、アキトを驚かさないでください。落ちたらどうするんです」
思わず体を揺らした俺を見たハルから、カルツさんに注意が飛ぶ。
必死で謝るカルツさんと、説教しているハルを木の上に置いて、今度は下へと降りていく。地面に辿り着いてから見上げると、二人はひょいっと飛び降りてきた。実体が無いと楽だね。
一応ちゃんと確認してもらうべきかなと、とってきた巾着をカルツさんに見せる。さっきは気づかなかったけれど、裏面に複雑な文様が刺繍されていた。
「ああ、カルツさんはスラテール商会の人でしたか」
文様を見たハルは、ある商会の名前を口にした。どうやら、商会の一員であることを証明するための文様を刺繍してあるらしい。
ハルの言葉に、カルツさんは今日一番の満面の笑みを浮かべる。
「なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
笑顔の意味が分からなかった俺は、素直に聞いてみた。
「見たところ、ハルさんはまだ霊になってそれほど経っていないのでしょう?」
「はい、まだ数か月です」
「そのあなたがスラテール商会の名を知っているなら、それは商会が今まで無事に続いているということですから」
理由を聞けば納得だった。カルツさんの残した商会を、今でも続けてくれている家族を思ったのか。
「あの、カルツさんって、移動できるんですか?」
「その遺品と一緒になら、移動できます」
「じゃあ、今までは移動できなかったんですね」
心残りの物の側から動けなくなる霊は、実は一定数いる。珍しいことではないけど、カルツさんは20年も家族の様子を見に行くこともできなかったって事だ。
「じゃあ、一緒に行こうか」
言いながら、リュックの奥底に魔道収納袋をしまい込んだ。高値の入れ物に高価なものが入ってるとか、考えると恐ろしいからな。落とさないように一番下だ。
「あの、中身は見なくて良いのですか?」
「見ても意味ないから、見なくて良いです」
「しかし」
「アキトは、こういう奴です」
「よし、行くよー二人とも!」
なぜか俺一人と幽霊二人で、領都を目指すことになりました。
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