18 / 1,561
17.専用ラジオと領都到着
同行者が増えるのは予想外だったけど、これがかなり楽しかった。俺は返事もリアクションもできないけど、ハルとカルツさんの会話から色んなことを知ることができるんだ。
二人とも知識が豊富で話題もコロコロと変わっていくんだけど、ハルの優しい声とカルツさんの穏やかな声で話してると、不思議と聞き入ってしまう。おしゃべりの上手なラジオを聞いてるみたいな感じかな。
「アキトの世界には魔法は存在しなかったそうです」
「そうなんですか?じゃあすこしは知っておいた方が良いですね」
魔法には攻撃魔法と防御魔法、補助魔法がある。攻撃、防御に特化したもの以外は全て補助魔法の分野なんだって。つまり擬態も鑑定も補助魔法ってことだ。
攻撃も防御もきちんと本を使って学んだり、ギルドで講習を受けたりして覚えた方が暴走しないって言ってたから、俺もそうした方が安心だよな。
補助魔法はそうそう暴走することはなくて、発動するかしないかぐらいなんだって。魔力さえ認識できていたら、使えるようになる可能性もあるからと、カルツさんおすすめの補助魔法を話してくれた。
旅する時に一番重宝したのは、浄化魔法だそうだ。体を洗うことができない時にも魔法1つですっきりできるし、汚れた服や皿も綺麗にできる。
それ使えたら、すっごい便利なやつだ。ハルがコツを聞いてくれたんだけど、それぞれの浄化魔法の結果を、きちんと分けて想像する事が大事なんだって。全部綺麗になれではなかなか発動しないらしい。
つまり風呂を想像すれば体が、洗濯機を想像したら服が、食洗器を想像したら皿が綺麗になるって事かな。
じゃあ、俺にいま必要なのは歯ブラシと歯磨き粉だなぁなんて考えていたら、体の中をめぐる魔力が指先から出ていくのを感じた。その瞬間、口の中がやけにさっぱりした。ミントの香りまでする気がするんだけど、今のってもしかしてもしかするのか。
ちらりとハルに目線をうつすと、ハルはじっと俺を見つめて頷いた。
「アキト、今魔力が動いたね」
「ハルさんは魔力まで感知できるんですね」
「ええ、まあ。一人で魔法が使えたんだね、アキト。浄化魔法習得おめでとう」
「おめでとうございます」
嬉しそうにお祝いして二人がかりで誉めてくれたんだけど、人目がありすぎて返事できないのがつらかった。
あと、俺が一番覚えておこうと思ったのは、二人の好物の話だ。
カルツさんは領都なら、南区にあるアジーの串焼き屋と、北区にあるレストランポリッチェのシチューがおすすめだそうだ。
ハルは領都なら白狼亭のステーキ一択だって。
二人とも楽し気に説明してくれるんだけど、串焼きの炭火の風味が、シチューの具が、肉汁あふれるステーキがって、説明だけでもすっごく美味しそうなんだよ。聞いてるだけで、お腹が空いて仕方がない。よし、絶対に3軒とも食べに行くぞと決意と共に店名を覚えた。
話上手な二人の声をラジオ感覚で聞きながら歩き続けると、夕暮れ時には無事に領都に辿り着いた。
領都ってどんなところだろうとこっそり期待していた俺は、正直に言えばちょっとがっかりしてしまった。
トライプールの街の中に入れば高低差があるらしいんだけど、入口のあたりからは遠くに城っぽい尖塔がすこし見えるくらいで、基本的には壁しか見えない。領都トライプールは、ぐるりと石造りの城壁に覆われているとは聞いていたけど、まさかここまで大きい壁とは思ってもみなかったよ。中に入るまでは、観光気分はお預けみたいだ。
更に増えてきた人の流れに乗って行けば、城壁にぽかりと開いた大門が見えてきた。
入口の大門近くには、金属の鎧を来た屈強な男性が数人立っている。手には槍を持っていて、威圧感がすごい。ここに並んでいるのも衛兵さんなんだって。衛兵は街を巡回して市民を守ったり、大門を守る。その一方で、騎士は要所を警備しながら国を守るんだって。
事前に聞いていた通り、領都に入るのにチェックは厳しくないみたいだ。
流れに乗ってそのまま門を通るだけで、名前の確認も身分確認も無しだった。ただ、挙動不審な人は別室に連れて行かれる事もあると聞いていたのでちょっと心配していたが、途中からはぴしっと姿勢を正して立っている衛兵の人に見惚れてしまった。
見つめすぎたのか目があってしまった衛兵さんからは、爽やかな笑顔を頂いてしまったので、俺もにっこり笑い返しておいた。
「あんな憧れを含んだ顔で見られたら、笑顔にもなりますよね」
「アキトは無自覚に愛想をふりまくからな」
二人が何か言ってるけど、そんな顔で見てないと思うんだけどな。
無事に何事もなく通れたんだから俺は気にしないぞ。
二人とも知識が豊富で話題もコロコロと変わっていくんだけど、ハルの優しい声とカルツさんの穏やかな声で話してると、不思議と聞き入ってしまう。おしゃべりの上手なラジオを聞いてるみたいな感じかな。
「アキトの世界には魔法は存在しなかったそうです」
「そうなんですか?じゃあすこしは知っておいた方が良いですね」
魔法には攻撃魔法と防御魔法、補助魔法がある。攻撃、防御に特化したもの以外は全て補助魔法の分野なんだって。つまり擬態も鑑定も補助魔法ってことだ。
攻撃も防御もきちんと本を使って学んだり、ギルドで講習を受けたりして覚えた方が暴走しないって言ってたから、俺もそうした方が安心だよな。
補助魔法はそうそう暴走することはなくて、発動するかしないかぐらいなんだって。魔力さえ認識できていたら、使えるようになる可能性もあるからと、カルツさんおすすめの補助魔法を話してくれた。
旅する時に一番重宝したのは、浄化魔法だそうだ。体を洗うことができない時にも魔法1つですっきりできるし、汚れた服や皿も綺麗にできる。
それ使えたら、すっごい便利なやつだ。ハルがコツを聞いてくれたんだけど、それぞれの浄化魔法の結果を、きちんと分けて想像する事が大事なんだって。全部綺麗になれではなかなか発動しないらしい。
つまり風呂を想像すれば体が、洗濯機を想像したら服が、食洗器を想像したら皿が綺麗になるって事かな。
じゃあ、俺にいま必要なのは歯ブラシと歯磨き粉だなぁなんて考えていたら、体の中をめぐる魔力が指先から出ていくのを感じた。その瞬間、口の中がやけにさっぱりした。ミントの香りまでする気がするんだけど、今のってもしかしてもしかするのか。
ちらりとハルに目線をうつすと、ハルはじっと俺を見つめて頷いた。
「アキト、今魔力が動いたね」
「ハルさんは魔力まで感知できるんですね」
「ええ、まあ。一人で魔法が使えたんだね、アキト。浄化魔法習得おめでとう」
「おめでとうございます」
嬉しそうにお祝いして二人がかりで誉めてくれたんだけど、人目がありすぎて返事できないのがつらかった。
あと、俺が一番覚えておこうと思ったのは、二人の好物の話だ。
カルツさんは領都なら、南区にあるアジーの串焼き屋と、北区にあるレストランポリッチェのシチューがおすすめだそうだ。
ハルは領都なら白狼亭のステーキ一択だって。
二人とも楽し気に説明してくれるんだけど、串焼きの炭火の風味が、シチューの具が、肉汁あふれるステーキがって、説明だけでもすっごく美味しそうなんだよ。聞いてるだけで、お腹が空いて仕方がない。よし、絶対に3軒とも食べに行くぞと決意と共に店名を覚えた。
話上手な二人の声をラジオ感覚で聞きながら歩き続けると、夕暮れ時には無事に領都に辿り着いた。
領都ってどんなところだろうとこっそり期待していた俺は、正直に言えばちょっとがっかりしてしまった。
トライプールの街の中に入れば高低差があるらしいんだけど、入口のあたりからは遠くに城っぽい尖塔がすこし見えるくらいで、基本的には壁しか見えない。領都トライプールは、ぐるりと石造りの城壁に覆われているとは聞いていたけど、まさかここまで大きい壁とは思ってもみなかったよ。中に入るまでは、観光気分はお預けみたいだ。
更に増えてきた人の流れに乗って行けば、城壁にぽかりと開いた大門が見えてきた。
入口の大門近くには、金属の鎧を来た屈強な男性が数人立っている。手には槍を持っていて、威圧感がすごい。ここに並んでいるのも衛兵さんなんだって。衛兵は街を巡回して市民を守ったり、大門を守る。その一方で、騎士は要所を警備しながら国を守るんだって。
事前に聞いていた通り、領都に入るのにチェックは厳しくないみたいだ。
流れに乗ってそのまま門を通るだけで、名前の確認も身分確認も無しだった。ただ、挙動不審な人は別室に連れて行かれる事もあると聞いていたのでちょっと心配していたが、途中からはぴしっと姿勢を正して立っている衛兵の人に見惚れてしまった。
見つめすぎたのか目があってしまった衛兵さんからは、爽やかな笑顔を頂いてしまったので、俺もにっこり笑い返しておいた。
「あんな憧れを含んだ顔で見られたら、笑顔にもなりますよね」
「アキトは無自覚に愛想をふりまくからな」
二人が何か言ってるけど、そんな顔で見てないと思うんだけどな。
無事に何事もなく通れたんだから俺は気にしないぞ。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。