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13.【ハル視点】バラーブ村を満喫するアキト
森を歩きながら、たくさん話をした。森の歩き方や、食べられる果物や木の実、採取した方が良い素材の話だ。こちらの世界での常識なども、すこしずつ伝えて行く。
俺からすれば数か月ぶりに成立する会話だ。嬉しさから話しすぎたかと途中で心配になったが、アキトは楽しそうに質問を挟んでくれるので考えないことにした。
元の世界では学生だったと聞いたので少し心配していたが、アキトは思った以上に体力があった。歩き続けられる学生はこの世界でも、そう多くない。よく歩いてくれるので、予定通り夕方にはバラーブ村に辿り着けそうだ。
感心しつつも、たまには休憩も挟んだ。ジウプの果実が食べられると知った時は、かなり驚いていた。すすめるとあっさりと口にして、果汁が全身に染みるとかなんだか変な事を言っていた。初めて聞いた表現だが、異世界では普通なんだろうか。
休憩後には採取もしながら進むことになった。採取するものは、かなり悩みながら選び抜いた。
「そこにあるナーパ草は、にがいけど簡易な回復薬として使えるんだ」
「へー回復薬」
「だから村で売るならこれは喜ばれる…そうだな、5束くらいは引き取ってもらえると思うから、摘んでいこうか」
ナーパ草はあの村の年寄りが好む薬草…というか、めったに手に入らないにがみのある野菜扱いだ。珍味とでも言うべきだろうか。他の村よりも高値でひきとってくれるし、何よりナーパ草は軽い。もっと高値で買い取ってもらえる一抱えもあるキノコも見えていたが、細身のアキトにあまり重いものを持たせるのも気が引けた。重さを考えながら採取するものを選んだのは初めてで、自分でも似合わないことをしていると笑ってしまった。
「あ、あれってさっき食べたジウプの実だよな?」
アキトから言い出してくれたおかげで、ジウプの果実はあっさりと採取するものに決まった。もしアキトが言い出さなければ、何とかお願いするもらうつもりだったから助かった。
森に入る前にあの村に立ち寄った時、妊娠したばかりだったミウナをみかけた。うまく隠していたが、既に少し具合が悪そうに見えた。
産まれてくるこどもが魔力を多く持っている場合、親の魔力が高ければ良いが、そうでなければ魔力を吸われて苦しむことになる。魔力を含んでいるジウプの果実さえあれば乗り越えるのは簡単だが、加工すると効果が消える上に、栽培もできない。日持ちもせいぜい2週間程度と何ともやっかいな果実だ。
もし症状があれから悪化せずに落ち着いていたとしても、きっと念のためと買い取ってはくれるだろうからアキトに損はない筈だ。
ブラン爺もアックスも優しい人だし、きっと裏表の無いアキトは気に入られるだろうとは思っていた。だから、それほど心配はしていなかったけれど。
想像以上にあっさりと、アキトはバラーブ村に受け入れられた。
お金と引き換えじゃなくて良いから妊婦さんに食べさせてあげてと言い出した時は、俺も驚いてしまった。そんな口約束程度でやりとりしていては、いつか絶対痛い目を見る。世界には善人もいれば悪人もいるんだと教え込みたくなる。とはいえ、この村ならと考えてしまった俺も、その時はあまり強くは言えなかったけれど。
アキトはベッドに入るなり、すぐに眠ってしまった。あれだけの距離を歩き通したんだから、疲れていて当然だ。
眠る必要が無い俺は、今のうちに領都までの道の危険度を確認しに行くことにした。護衛の任務の時には必ずやっていた、事前調査だ。
すぐに影響が出そうな距離に危険な魔物も、盗賊の姿も無いのを確認する。これで明日は安心して領都まで案内できそうだ。
明け方には村まで戻ってきた俺は、そっと部屋へと戻った。アキトは寝息をたてながら気持ち良さそうに眠っていた。
牧畜をになうバラーブ村は朝が早い。少しでも手伝いをした方が村の人も助かるのだが、俺は眠るアキトを起こせずにいた。
いつもまっすぐに合わせられる目が隠れているだけで、何だか幼く見えるのだ。幸せそうに眠るアキトをいつ起こすべきか悩んだ俺は、とりあえず村人が出てくるまでは寝かせてやろうと再度外に出た。
集会所の横に立っていた大木に登って、木の上から辺りを見下ろす。
「あんな顔で寝られたら、起こせないよなぁ」
一人二人と増えていく村人の姿に、そろそろ起こしに行くかと決意して立ち上がった時、集会所の扉が開いた。どうやら自分で起きだして、自分の意思で手伝おうと出てきたようだ。
「おはようございます」
「ああ、おはよう、アキト」
「おはよう、あんたが旅人さんか」
初めて来た、しかも若い旅人が自主的に手伝いに出てくる事はめったに無い。村人たちも嬉しそうに迎え入れていた。動物の世話やたまごの回収に励むアキトを見ているだけでも楽しかった。作業が終わると朝食にも誘われたようで、もうすっかり馴染んでいるようだ。
ただ、ひとつだけ問題があった。
作業中から思いっきりイワンに口説かれていたことだ。イワンは良い奴ではあるが、何となく面白くなかった。もっともアキトは全く気づいていなかったようだ。領都に行ったら会いたいとまで言われたのに、知人が増えて嬉しいなんてはっきり言ってしまったのには、周りに姿が見えないのを良い事に爆笑してしまった。
集会所に帰ってきたアキトは、楽しかったとはしゃいで報告してくれた。本当に嬉しそうに話してくれるのを、全部見ていたとは言えず笑ってごまかす。
「あ、そういえばさ。弟なのに妊娠中ってどういう意味だ?」
「は?」
「あ、珍しい顔」
思わず真顔でアキトを見返してしまった。その質問の意味が分からない。妊娠が分からないなんて事はないだろう。弟が妊娠するなんておかしいと言うような言い方だ。何が聞きたいのかが分からない。質問を返そうとしたら、外から声が聞こえてきた。
「アキトー来たぞー」
「ごめん、話は後で」
「分かった」
アックスの声のおかげで、話は先に延ばされた。俺は一体何を聞かれたんだ?アキト相手に性の知識を教えないといけないのか?ぐるぐると考えながら、俺はひとり立ち尽くした。
俺からすれば数か月ぶりに成立する会話だ。嬉しさから話しすぎたかと途中で心配になったが、アキトは楽しそうに質問を挟んでくれるので考えないことにした。
元の世界では学生だったと聞いたので少し心配していたが、アキトは思った以上に体力があった。歩き続けられる学生はこの世界でも、そう多くない。よく歩いてくれるので、予定通り夕方にはバラーブ村に辿り着けそうだ。
感心しつつも、たまには休憩も挟んだ。ジウプの果実が食べられると知った時は、かなり驚いていた。すすめるとあっさりと口にして、果汁が全身に染みるとかなんだか変な事を言っていた。初めて聞いた表現だが、異世界では普通なんだろうか。
休憩後には採取もしながら進むことになった。採取するものは、かなり悩みながら選び抜いた。
「そこにあるナーパ草は、にがいけど簡易な回復薬として使えるんだ」
「へー回復薬」
「だから村で売るならこれは喜ばれる…そうだな、5束くらいは引き取ってもらえると思うから、摘んでいこうか」
ナーパ草はあの村の年寄りが好む薬草…というか、めったに手に入らないにがみのある野菜扱いだ。珍味とでも言うべきだろうか。他の村よりも高値でひきとってくれるし、何よりナーパ草は軽い。もっと高値で買い取ってもらえる一抱えもあるキノコも見えていたが、細身のアキトにあまり重いものを持たせるのも気が引けた。重さを考えながら採取するものを選んだのは初めてで、自分でも似合わないことをしていると笑ってしまった。
「あ、あれってさっき食べたジウプの実だよな?」
アキトから言い出してくれたおかげで、ジウプの果実はあっさりと採取するものに決まった。もしアキトが言い出さなければ、何とかお願いするもらうつもりだったから助かった。
森に入る前にあの村に立ち寄った時、妊娠したばかりだったミウナをみかけた。うまく隠していたが、既に少し具合が悪そうに見えた。
産まれてくるこどもが魔力を多く持っている場合、親の魔力が高ければ良いが、そうでなければ魔力を吸われて苦しむことになる。魔力を含んでいるジウプの果実さえあれば乗り越えるのは簡単だが、加工すると効果が消える上に、栽培もできない。日持ちもせいぜい2週間程度と何ともやっかいな果実だ。
もし症状があれから悪化せずに落ち着いていたとしても、きっと念のためと買い取ってはくれるだろうからアキトに損はない筈だ。
ブラン爺もアックスも優しい人だし、きっと裏表の無いアキトは気に入られるだろうとは思っていた。だから、それほど心配はしていなかったけれど。
想像以上にあっさりと、アキトはバラーブ村に受け入れられた。
お金と引き換えじゃなくて良いから妊婦さんに食べさせてあげてと言い出した時は、俺も驚いてしまった。そんな口約束程度でやりとりしていては、いつか絶対痛い目を見る。世界には善人もいれば悪人もいるんだと教え込みたくなる。とはいえ、この村ならと考えてしまった俺も、その時はあまり強くは言えなかったけれど。
アキトはベッドに入るなり、すぐに眠ってしまった。あれだけの距離を歩き通したんだから、疲れていて当然だ。
眠る必要が無い俺は、今のうちに領都までの道の危険度を確認しに行くことにした。護衛の任務の時には必ずやっていた、事前調査だ。
すぐに影響が出そうな距離に危険な魔物も、盗賊の姿も無いのを確認する。これで明日は安心して領都まで案内できそうだ。
明け方には村まで戻ってきた俺は、そっと部屋へと戻った。アキトは寝息をたてながら気持ち良さそうに眠っていた。
牧畜をになうバラーブ村は朝が早い。少しでも手伝いをした方が村の人も助かるのだが、俺は眠るアキトを起こせずにいた。
いつもまっすぐに合わせられる目が隠れているだけで、何だか幼く見えるのだ。幸せそうに眠るアキトをいつ起こすべきか悩んだ俺は、とりあえず村人が出てくるまでは寝かせてやろうと再度外に出た。
集会所の横に立っていた大木に登って、木の上から辺りを見下ろす。
「あんな顔で寝られたら、起こせないよなぁ」
一人二人と増えていく村人の姿に、そろそろ起こしに行くかと決意して立ち上がった時、集会所の扉が開いた。どうやら自分で起きだして、自分の意思で手伝おうと出てきたようだ。
「おはようございます」
「ああ、おはよう、アキト」
「おはよう、あんたが旅人さんか」
初めて来た、しかも若い旅人が自主的に手伝いに出てくる事はめったに無い。村人たちも嬉しそうに迎え入れていた。動物の世話やたまごの回収に励むアキトを見ているだけでも楽しかった。作業が終わると朝食にも誘われたようで、もうすっかり馴染んでいるようだ。
ただ、ひとつだけ問題があった。
作業中から思いっきりイワンに口説かれていたことだ。イワンは良い奴ではあるが、何となく面白くなかった。もっともアキトは全く気づいていなかったようだ。領都に行ったら会いたいとまで言われたのに、知人が増えて嬉しいなんてはっきり言ってしまったのには、周りに姿が見えないのを良い事に爆笑してしまった。
集会所に帰ってきたアキトは、楽しかったとはしゃいで報告してくれた。本当に嬉しそうに話してくれるのを、全部見ていたとは言えず笑ってごまかす。
「あ、そういえばさ。弟なのに妊娠中ってどういう意味だ?」
「は?」
「あ、珍しい顔」
思わず真顔でアキトを見返してしまった。その質問の意味が分からない。妊娠が分からないなんて事はないだろう。弟が妊娠するなんておかしいと言うような言い方だ。何が聞きたいのかが分からない。質問を返そうとしたら、外から声が聞こえてきた。
「アキトー来たぞー」
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