生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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44.E級へのランクアップ

 急いで帰ってきた俺たちは、夕方には無事に冒険者ギルドへと辿り着いた。

 初めて夕方に依頼報告をすることになった俺は、まずギルドの中にいる人の多さにびっくりしてしまった。酒場はいつでも大盛況なんだけど、ギルドの受付がこんなに混んでるのは初めて見た。依頼報告の受付は、長蛇の列だった。

「ほら、メロウのところは空いてるよ」

 ハルに言われて見てみると、確かにメロウさんの前の列は比較的空いてるみたいだ。なんでだろうと考えながら、いそいそと列に並んだ。

 相変わらずちらちら見られてる気はするけど、害がないなら気にしない事に決めた。

 そのまましばらく待っていると、すぐに俺の番が回ってきた。

「おかえりなさい、アキトさん」
「ただいま帰りました」



 とどこおりなく納品を済ませると、思わずふうと息が漏れた。はー間に合って良かった。今日中に納品しないと依頼失敗になるところだった。

 依頼失敗になってもはっきりしたペナルティは無いみたいなんだけど、失敗した数もちゃんと数えられてて、指名依頼の時とかランクアップ時には参考にされるらしいよ。それなら失敗しないに越したことはないよね。

「本日の納品分で、E級へのランクアップが可能になりましたが、すぐに手続きをされますか?」

 予想通りだったメロウさんの質問に、俺は元気よく答えた。

「はい、お願いします!」

 冒険者ランクを上げるには、基本的には試験が必要なんだ。指定された素材の納品だったり、指定された魔物の討伐だったり、はたまた格上の冒険者との手合わせだったり、その等級によって様々だ。

 でも唯一の例外が、このF級からE級に上がる時。内容の異なる依頼を10個こなしてきちんと納品さえできていれば、試験なしでランクアップできるんだ。

 同じ薬草を10回納品しても駄目だから、いっそ試験があった方が良かったって言う新人もいるらしい。

 俺はハルのおかげで毎回違うものを納品してるから、その点は全く問題なかった。今回のミーヤの花とオルン茸の納品で、ちょうど依頼達成10個目だったんだ。

「ではアキトさん、こちらへどうぞ」

 そう言って立ち上がったメロウさんが向かったのは、登録時にも使ったあの狭い個室だった。

 一瞬だけ何でだろうと思ったけれど、そういえばランクが上がる度に犯罪を犯していないかのチェックが入るって言ってたな。冒険者規則を思い出した俺は、慌ててメロウさんの後を追った。

「ではそちらへどうぞ」

 すすめられた椅子に座ってメロウさんと向かい合う。納品時に渡したままだったギルドカードが、またあの魔道具の中にセットされる。

「あなたは犯罪を犯したことがありますか」
「いいえ」

 魔道具に手をのせて白く輝くのを確認するだけで、ランクアップは無事に完了した。

「ランクアップ、おめでとうございます」
「ありがとうございます」

 メロウさんから返された俺のギルドカードには、ランクEの文字がしっかりと刻まれていた。

「E級おめでとう、アキト」

 お祝いを言ってくれたハルには、目線だけでお礼を返した。

 F級は駆け出しだからまだ冒険者見習いであって、E級からが冒険者を名乗れるんだーなんて言う人もいるんだって。じゃあ、これで俺も堂々と冒険者を名乗れるってことだな。そう思うと嬉しくなってくる。

「アキトさん」
「はい」
「もしよろしければ、あなたに依頼したいことがあるんです。指名依頼です」
「へ?まだおれEランクになったばっかりなんですけど…?」
「分かっております。お話だけでも聞いていただけませんか?」

 困った顔でメロウさんにそう言われると、断れるわけがない。

「話だけなら」
「ありがとうございます。依頼内容は銀月水桃の蜜。期限は1年になります」
「ぎんげつすいとう?」

 繰り返しながらちらっとハルの表情を見れば、滅多に見ないご機嫌そうな笑顔だった。

「アキト、この依頼はぜひ受けよう!俺なら分かるから!」
「あ、じゃあ受けさせてもらいます」

 ハルがそこまで言うなら、受けた方が良い依頼なんだなと俺はあっさり納得した。

「ありがとうございます。ではこれが依頼書です」

 差し出された依頼書には、確かに銀月水桃の蜜と1年後の期日が記されていた。しげしげと依頼書を見つめる俺を、メロウさんが見つめていることにも気づかずに。
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