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51.理論なんて知らなくても
授業は、理論の説明から始まった。魔法の成り立ち、魔力とは何かなどといった説明が次々と出てくる。駆け足で進んでいく興味深い内容をまじめに聞いていた俺に、ドロシーさんは悪戯っぽく笑ってみせた。
「と、普通の授業なら、こんな感じなの」
「普通の授業」
「ええ、でもね、理論なんて知らなくても魔法は使えるものなのよ」
「ドロシーさん、そのやり方は難易度が上がるから良くないと、以前にもお伝えしましたよね?」
教室の隅で書類をめくっていたメロウさんから、鋭い注意が飛んでくる。
「でも、このやり方がアキトには合うかもしれないでしょう?」
「それはまあ確かに」
「もし駄目なら、ちゃんと授業方式に戻すわよ」
そう言い切ったドロシーさんに、メロウさんはしぶしぶといった感じで引き下がった。
「アキト、浄化魔法は使える話をしてみたら?」
「あの、俺…浄化魔法は使えるんです」
「あら、そうなの?」
「そうなんですか?」
「じゃあ、これに使ってみて」
ドロシーさんがポケットから取り出したのは、土汚れのついたハンカチだった。視線が集中するなか、俺は魔力を練り始める。洗濯機を思い描きながら浄化すれば、すぐに綺麗なハンカチに戻った。
「まあ、綺麗におちたわね」
「それよりも、今無詠唱でしたよね?」
「この授業をお願いした理由が、これなんです」
他の人が使った魔法を見て、自分の魔法はおかしいと思った事を伝えると、二人は安心させるように優しく笑ってくれた。
「きっとアキトには魔法の才能があるのよ」
「私の鑑定魔法も、最初からずっと無詠唱ですよ」
「その浄化魔法は、どこで教わったの?」
カルツさんに教わったんだけれど、幽霊に教えてもらいましたとは言えないよな。さてどうしようと考えていると、すぐにハルが答えをくれた。
「商人の自慢げな声が聞こえたとでも言えば良いよ」
「領都を目指してる時に、一番重宝する魔法は浄化魔法だって商人さんが自慢してたのを聞いたんです」
「たしかに浄化魔法は役に立つわね」
「それでやってみたら、できてしまって」
メロウさんは驚いているみたいだけど、ドロシーさんはうんうんと頷いていた。
「分かるわー!私もね、畑に水やりしてた祖父の水魔法を真似したのが、最初の魔法だったわ」
「え、ドロシーさんも?」
「ええ!真似をしようとしてできるようになるのは、才能があればそう珍しいことじゃないわよ!」
断言してくれるドロシーさんの隣で、ハルもこくこくと頷いていた。良かった、これが原因で異世界人バレすることは無さそうだ。
「でもそれなら、本当に私のやり方で良さそうよね。メロウ、訓練場ひとつ借りれるかしら?」
「ええ、今の時間なら空きがあります」
「じゃあ、いきましょ!」
メロウさんが案内してくれた訓練場はバスケットコート程の広さで、壁際には的がいくつも並んでいた。魔法をいくら放っても破壊できないように結界が張られているらしく、その点は心配しなくて大丈夫だと最初に教えてくれた。やっぱりメロウさんは、できる人だな。
俺がメロウさんの説明を聞き終わると、ドロシーさんは笑顔でこちらを振り返った。
「魔法には四大属性というものがあるわ、見てて」
そういうなり、ドロシーさんの前に手のひらほどの大きさの火の玉が浮かび上がった。そのまま前方に置いてある的に向かって素早く飛んでいき、的の中心にぶつかってから消えた。
「これが火魔法よ。さあ、やってみて」
ドロシーさんの無茶ぶりとも言える言葉に、メロウさんはもの言いたげだったけど、ハルは隣で楽しそうに笑っていた。
「大丈夫、アキトならきっとできるよ」
そこまで言われたら、良い所見せたくなるよな。ふんと気合を入れてから、俺は的に向き直った。
火魔法は、ライターの火を想像したらすぐに火が付いた。これを大きくするために、何が必要かなと考えてみる。BBQで使う着火剤とかどうかな。丸い着火剤に火が付くイメージだ。
思った通りの火の玉ができたので、今度はそれを的に向けて投げるところを想像してみる。火の玉は的にかすって背後の壁にぶつかって消えた。当たらなかったけど、もう1回やるべきなのかなと振り返ってみる。
「ふふ…思った通りね!次行くわよ!」
魔法は出せたから、とりあえず次にいくみたいだ。宣言したドロシーさんの前に、今度はつむじ風のような風の塊が現れそのまま的めがけて飛んでいった。的の中心をしっかり捕らえてから消えていく。
「これが風魔法ね」
やってみてと言われた俺は、自分の前の的を見つめて立ち尽くす。火とか水、土ならまだ想像はできるけど、風って何となく想像しにくいんだよな。風、風…扇風機で良いかな。超強力な扇風機の風が集まってるイメージ。
できあがった風の玉は、ドロシーさんのものとは全く違っていた。ドロシーさんのが切り裂くつむじ風なら、俺のはただの風の塊って感じだ。それでも、とりあえず風で玉はできたからと投げてみる。風だからかものすごいスピードで飛んでいったけど、的の後ろの壁に派手にぶつかって消えていった。
良いわねと言ってくれたドロシーさんの前に、続いて浮かび上がったのは手のひらほどの大きさの水の玉だ。素早く飛んでいったその水の玉は、これも的の中心を寸分たがわずに捉えていた。
「これは水魔法」
的に向かって立ちながら、最初に浮かんだ疑問は水魔法の水って飲めるのかな?だった。もし飲めるなら森で迷子になっても、水の確保には困らないよな。今回思い浮かべたのは、お祭りなんかでよくある水の入ったヨーヨーだ。中心ではなかったけど、これはちゃんと的の端っこには当たった。
「アキト、これが最後よ」
今度は空中に土が浮かび上がり、そのまま先のとがったつぶてのようになった。ドロシーさんの放ったつぶてはすごいスピードで的へと飛んでいき、これもまた中心を貫いた。全部ど真ん中とか、すごすぎる。
「これが土魔法ね」
土はすぐに浮かび上がってきたけど、それをつぶてのような形にするのが難しい。形を作ろうとすると、パラパラと崩れてしまう。土だと難しいなら、粘土ならどうだろうと考えてみると、すぐに先のとがったつぶてができた。今回はきちんと狙ってから投げてみたけど、的の中心から少しずれた位置に命中した。
「本当にドロシーさんのやり方で、四大属性を使えるなんて…」
メロウさんは呆然と呟いていたけど、ドロシーさんとハルには褒めちぎられてしまった。
「と、普通の授業なら、こんな感じなの」
「普通の授業」
「ええ、でもね、理論なんて知らなくても魔法は使えるものなのよ」
「ドロシーさん、そのやり方は難易度が上がるから良くないと、以前にもお伝えしましたよね?」
教室の隅で書類をめくっていたメロウさんから、鋭い注意が飛んでくる。
「でも、このやり方がアキトには合うかもしれないでしょう?」
「それはまあ確かに」
「もし駄目なら、ちゃんと授業方式に戻すわよ」
そう言い切ったドロシーさんに、メロウさんはしぶしぶといった感じで引き下がった。
「アキト、浄化魔法は使える話をしてみたら?」
「あの、俺…浄化魔法は使えるんです」
「あら、そうなの?」
「そうなんですか?」
「じゃあ、これに使ってみて」
ドロシーさんがポケットから取り出したのは、土汚れのついたハンカチだった。視線が集中するなか、俺は魔力を練り始める。洗濯機を思い描きながら浄化すれば、すぐに綺麗なハンカチに戻った。
「まあ、綺麗におちたわね」
「それよりも、今無詠唱でしたよね?」
「この授業をお願いした理由が、これなんです」
他の人が使った魔法を見て、自分の魔法はおかしいと思った事を伝えると、二人は安心させるように優しく笑ってくれた。
「きっとアキトには魔法の才能があるのよ」
「私の鑑定魔法も、最初からずっと無詠唱ですよ」
「その浄化魔法は、どこで教わったの?」
カルツさんに教わったんだけれど、幽霊に教えてもらいましたとは言えないよな。さてどうしようと考えていると、すぐにハルが答えをくれた。
「商人の自慢げな声が聞こえたとでも言えば良いよ」
「領都を目指してる時に、一番重宝する魔法は浄化魔法だって商人さんが自慢してたのを聞いたんです」
「たしかに浄化魔法は役に立つわね」
「それでやってみたら、できてしまって」
メロウさんは驚いているみたいだけど、ドロシーさんはうんうんと頷いていた。
「分かるわー!私もね、畑に水やりしてた祖父の水魔法を真似したのが、最初の魔法だったわ」
「え、ドロシーさんも?」
「ええ!真似をしようとしてできるようになるのは、才能があればそう珍しいことじゃないわよ!」
断言してくれるドロシーさんの隣で、ハルもこくこくと頷いていた。良かった、これが原因で異世界人バレすることは無さそうだ。
「でもそれなら、本当に私のやり方で良さそうよね。メロウ、訓練場ひとつ借りれるかしら?」
「ええ、今の時間なら空きがあります」
「じゃあ、いきましょ!」
メロウさんが案内してくれた訓練場はバスケットコート程の広さで、壁際には的がいくつも並んでいた。魔法をいくら放っても破壊できないように結界が張られているらしく、その点は心配しなくて大丈夫だと最初に教えてくれた。やっぱりメロウさんは、できる人だな。
俺がメロウさんの説明を聞き終わると、ドロシーさんは笑顔でこちらを振り返った。
「魔法には四大属性というものがあるわ、見てて」
そういうなり、ドロシーさんの前に手のひらほどの大きさの火の玉が浮かび上がった。そのまま前方に置いてある的に向かって素早く飛んでいき、的の中心にぶつかってから消えた。
「これが火魔法よ。さあ、やってみて」
ドロシーさんの無茶ぶりとも言える言葉に、メロウさんはもの言いたげだったけど、ハルは隣で楽しそうに笑っていた。
「大丈夫、アキトならきっとできるよ」
そこまで言われたら、良い所見せたくなるよな。ふんと気合を入れてから、俺は的に向き直った。
火魔法は、ライターの火を想像したらすぐに火が付いた。これを大きくするために、何が必要かなと考えてみる。BBQで使う着火剤とかどうかな。丸い着火剤に火が付くイメージだ。
思った通りの火の玉ができたので、今度はそれを的に向けて投げるところを想像してみる。火の玉は的にかすって背後の壁にぶつかって消えた。当たらなかったけど、もう1回やるべきなのかなと振り返ってみる。
「ふふ…思った通りね!次行くわよ!」
魔法は出せたから、とりあえず次にいくみたいだ。宣言したドロシーさんの前に、今度はつむじ風のような風の塊が現れそのまま的めがけて飛んでいった。的の中心をしっかり捕らえてから消えていく。
「これが風魔法ね」
やってみてと言われた俺は、自分の前の的を見つめて立ち尽くす。火とか水、土ならまだ想像はできるけど、風って何となく想像しにくいんだよな。風、風…扇風機で良いかな。超強力な扇風機の風が集まってるイメージ。
できあがった風の玉は、ドロシーさんのものとは全く違っていた。ドロシーさんのが切り裂くつむじ風なら、俺のはただの風の塊って感じだ。それでも、とりあえず風で玉はできたからと投げてみる。風だからかものすごいスピードで飛んでいったけど、的の後ろの壁に派手にぶつかって消えていった。
良いわねと言ってくれたドロシーさんの前に、続いて浮かび上がったのは手のひらほどの大きさの水の玉だ。素早く飛んでいったその水の玉は、これも的の中心を寸分たがわずに捉えていた。
「これは水魔法」
的に向かって立ちながら、最初に浮かんだ疑問は水魔法の水って飲めるのかな?だった。もし飲めるなら森で迷子になっても、水の確保には困らないよな。今回思い浮かべたのは、お祭りなんかでよくある水の入ったヨーヨーだ。中心ではなかったけど、これはちゃんと的の端っこには当たった。
「アキト、これが最後よ」
今度は空中に土が浮かび上がり、そのまま先のとがったつぶてのようになった。ドロシーさんの放ったつぶてはすごいスピードで的へと飛んでいき、これもまた中心を貫いた。全部ど真ん中とか、すごすぎる。
「これが土魔法ね」
土はすぐに浮かび上がってきたけど、それをつぶてのような形にするのが難しい。形を作ろうとすると、パラパラと崩れてしまう。土だと難しいなら、粘土ならどうだろうと考えてみると、すぐに先のとがったつぶてができた。今回はきちんと狙ってから投げてみたけど、的の中心から少しずれた位置に命中した。
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