生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
60 / 1,561

59.ゴブリンの拠点

※魔物を倒す描写があります。苦手な方はお気をつけ下さい※

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 集会所から出た俺たちは、人のいない村の中を突っ切っていく。ただ人がいないだけで、村の中には何となく物悲しい雰囲気があった。

「今はできるだけ家にいろって言ってあるんだ」

 そういえば、さっき桟橋で会ったのも体格の良い男性だけだった。

「その方が安全ですもんね」
「シェーラもアキトに挨拶したいって言ってたが、全部終わってからにしろって言ったんだ、悪いな」
「いえ、俺に挨拶に来たせいで何かあった方が嫌ですから」

 素直にそう伝えると、アックスさんもハルも優しく笑ってくれた。



 ナルクアの森へと続く道を進んで行くと、すぐにゴブリンが住み着いたという場所が目視できる場所まで辿り着いた。以前は何もなかった場所に、草と木で作られた傾いた建物が3つ建っていて、木で作られた粗雑な柵で囲われている。

「これ…って」
「本格的に住み着く気だね…拠点ができかけてる」

 思わず漏れた声に、ハルがすかさず答えてくれた。ゴブリンは小さな拠点を作って、それをどんどん拡張していく習性があるらしい。気づくのが遅れた結果、もはや砦と呼べるような拠点が出来たこともあったと言い伝えられているそうだ。

「昨日は建物はまだ途中だったんだが…完成してるな」
「はい」
「きっちり見張りまで立ってる」

 アックスさんが指差した方向を見れば、確かに見張りだろうゴブリンの姿があった。遠目にみるゴブリンは、尖った耳と鉤状に曲がった大きな鼻が目立っている。二足歩行ではあるけれど、これなら人間みたいで魔法を躊躇するなんて事はなさそうだと、俺はこっそりと胸を撫で下ろした。

「今でおそらく10~15体程だろう。拠点が出来たとなるとゴブリンメイジや、ゴブリンシャーマンに進化しているものもいるかもしれない」

 アックスさんのその言葉を聞くなり、ハルはすぐに駆け出していった。気配探知は複数の存在が近くにあると精度が落ちるって言ってたから、たぶん自分の目で偵察しに行ってくれたんだろう。

「群れてはいるけど、連携が取れるわけじゃ無いんだ。俺が突っ込むから、アキトは倒せそうな奴から魔法で削っていってくれるか?」
「はい。村の方へ逃げ出しそうなのがいたらそちらを優先しますね」
「ああ、その方が助かる」

 俺とアックスさんが戦い方の相談をしているうちに、ハルは偵察から戻ってきた。

「大丈夫だ、まだ普通のゴブリンしかいない。数は14体」
「アックスさん、中には普通のゴブリンが14体です」

 あまりに唐突な俺の発言に、アックスさんは驚いたみたいだ。大きく目を見開いて、そのまま固まってしまった。そうだよな。どう考えても、ずっとここにいた俺が、いきなりゴブリンの種類と数を断言するのは怪しさしか無い。

 ハルのくれた情報を早く伝えたくて、言い訳も何も考えずに口にしてしまった。久しぶりにやってしまった感がある。どうしよう何て言えば良いんだろうと必死で考えていると、アックスさんは俺の目をじっと見つめてから頷いてくれた。

「分かった14だな…行くぞ!」
「はいっ!」

 長剣を抜いて駆け出したアックスさんの後ろを走りながら、俺も魔力を練り上げていく。

「アキト、まずはあの建物に火魔法だ」

 アックスさんはすでに見張りを倒して、柵を蹴り壊している。俺はすぐに、ハルが指示した建物に火魔法を放った。一気に燃え上がった建物から、もうもうと煙が上がりだす。

「次は土魔法。あいつを狙って」

 ハルが指差した方向を見れば、弓を構えたゴブリンの姿が目に入ってきた。アックスさんを狙っているゴブリンは、今まさに矢を引き絞ろうとしていた。慌てて発動した土魔法は、見事にゴブリンの額に命中した。

「アキトすごいじゃねぇか!」

 既に数匹のゴブリンに囲まれているけれど、アックスさんはまだまだ余裕みたいだ。俺の魔法を見て感想まで言えるなら心配はなさそうだ。

「次、土魔法で、右の隅にいるやつ」

 ハルから次々に投げられる指示に従って、魔力を練り上げてはひたすら土魔法と火魔法を放ち続けた。狙いを外した時には焦ってしまったけれど、ハルの言葉のおかげでもう一度狙いなおすことも出来た。

 アックスさんもどんどん倒していくから、あっという間に討伐は完了した。

「これで14体目だな」

 念のためとアックスさんと一緒に拠点の中を回ってみたけれど、生き残りはいなかった。

「よし、アキト、この拠点ごと火魔法で燃やしてくれるか」

 アックスさんによれば、ゴブリンは素材にもならないし食用もできないから、倒した後は埋めるか焼くかが基本になるらしい。その処理をしなければ、今度はゴブリンを食べるために違う魔物が現れたりもするんだって。

「アキト、つらいかもしれないけど、必要なことだよ」

 心配そうなハルに小さく頷きを返してから、俺は火魔法のための魔力を練り上げた。



 無事に処理を終わらせると、アックスさんはふうと息を吐いてから地面に座り込んだ。

「アキトはすごかったな」
「え、でも俺よりもアックスさんの方がいっぱい倒してますよね?」

 多分俺が倒したのは6体で、アックスさんが倒したのは8体だ。

「数じゃなくてな、最初に火魔法で攪乱したのもだし、俺を弓で狙ってたやつから倒してくれたりしただろう?」

 誉められても俺は指示通りに動いただけなんだよな。つまりハルの指示がすごかったって事だ。

「アキトの援護が無ければ、怪我はしてた」
「お役に立てたなら良かったです」
「すごく助かったよ、ありがとうな」

 アックスさんの言葉に、少しだけ感じていたもやもやが消えていく気がした。

「それにしても、本当に普通のゴブリン14体しかいなかったな」
「はい」
「………本当に、お前は『精霊が見える人』なのか」

 ぽつりとアックスさんが言った言葉に、驚いてしまった。精霊が見える人って何だろう。俺は幽霊が見える人だけど、精霊は見たことないんだけど。

 そこまで考えてふと思い出した。冒険者ギルドで、こそこそ噂してる人も精霊とか加護とか言ってたな。それってどういう意味かを聞こうとしたけれど、アックスさんは慌てた様子で手を振った。

「あ、いや!答えなくて良いんだ!」
「あの…」
「悪かったな、詮索はしないから安心してくれ!」

 えーと、どうすれば良いんだろう。精霊が見える人って言葉の意味を教えて欲しいんだけど、反省した様子で詮索はしないって言ってる人には聞きにくいよな。後でハルに聞けば良いか。

「よし帰ろう!」
「はい、帰りましょう!」
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。