生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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70.この村は温かい

 帰り道に採取したハルお勧めのセウカは、一抱えもある巨大な蛍光青色の実だった。確かにこの大きさなら、3こもあれば村人全員が楽しめるだろうな。

 俺の差し入れは、子どもたちはもちろん大人たちにも喜ばれた。

 俺も切り分けたのを食べさせてもらったけど、なかの果肉もしっかり蛍光青色だったよ。大人も子どもも全く気にせずに齧りつくんだけど、俺的には見た目の破壊力がすごすぎるけど、目をつむって食べたらほんのり甘くてジューシーでかなり美味しかった。

 ただ、その後が大変だったんだ。貰ってばかりは性に合わないと、各お家から料理や野菜、干し肉に干し果物なんかが届いてしまって、テーブルの上がすごいことになった。

「どうしよう…絶対に食べきれない…」

 ハルは苦悩する俺の顔を見て、失礼にも思いっきり噴き出した。

「何笑ってるんだよ」
「だってその顔、悲痛すぎるよ、アキト」
「もらったもの捨てたくないだろー」 
「魔道収納鞄にしまっておいて、明日も食べたら?食材系はレーブンに渡せば無駄にはならないよ」
「あ、そっか」

 ハルに手伝ってもらって、痛みやすいものと痛みにくいものに分けてから、俺はいそいそと鞄の中に食べ物をしまい込んでいく。

 アックスさんが今日は晩飯食べにくるかって聞きにきてくれたけど、テーブルの上の料理を見て苦笑しながら帰って行ったよ。

「いただきます」

 収納鞄にしまいにくいものから順番に食べすすめていく。トライプールとの違いはやっぱり鮮度なのかな。食べた事のある野菜でも、旨味が濃いんだよね。種類は多いけど、みんな一人で食べるんだからって気遣ってくれたみたいで、俺はなんとか完食することができた。

「アキト、明日はどうする?」
「んー、トライプールに帰りたいな」

 自然に帰ると言葉にした自分に、言った本人が驚いてしまった。俺にとって、もう黒鷹亭は帰る場所なんだ。

「分かった。じゃあ明日は朝早くに起こそうか?」

 村の仕事を手伝いたいから早く起こして欲しい。わざわざそう口にしなくても、ハルはちゃんと分かってくれた。俺の事を分かってくれてるってだけで、こんなにも嬉しくなってしまう。

「お願いします」
「まかせて」

 笑顔のハルにうっかり見惚れそうになった俺は、慌てて目を逸らす。不審に思われないように図鑑を取り出すと、もう一度最初から目を通し始めた。



 翌朝は早朝に起こしてもらって、手伝いに参加させてもらった。とは言っても、アックスさんと俺はまだ無理はするなって簡単な作業に回されてしまったけど。アックスさんと二人で苦笑しながら、ゆったりとウカの世話をさせてもらった。

 皆でわいわい食べる恒例の朝食の席はにぎやかで、美味しい料理を全力で堪能した。

「アキト、いつまでいるんだ?」
「あ、今日帰ります」
「えー」
「そうなのか?」
「もっと長くいればいいのに」
「寂しくなるな」

 そう言って引き留めてくれる皆に、思わず笑顔が漏れた。

「このまま、このむらにすめばいいのにー」

 そう言ってくれたのは、すっかり懐いてくれたこどもたちだ。本当にこの村の人たちは温かい。胸の中もほっこりと温かくなった。

「アキトにも色々あるだろうから、無理を言うんじゃないぞ!」

 パルン村長の言葉に、皆もそれ以上何も言わなくなった。

「まあ、移住する気になったら、いつでも来ておくれ!」
「おまえのが一番本気じゃないか!」
「ブラン、お前も思ってるくせに」
「まあそうじゃが」

 兄弟の言い合いに、俺も村人と一緒になって大きな声をあげて笑った。



 食事が終わって、名残惜しそうにしながらも皆が散っていく。人が減ってくると、木の上にいたハルが隣に降りてきた。

「じゃあ行こうか」

 ハルの声に頷こうとしたとき、不意に後ろから声がかかった。

「アキト」

 そこに立っていたのは、食事中は遠くの席に座っていたイワンだった。

「イワン、おはよ」
「おう、おはよう」

 普通に返事を返してくれて、ほっとしてしまった。

「俺の事を気にしてこの村に来なくなるなんて、絶対にやめてくれよ」
「…うん」
「次会う時までには、俺もちゃんと気持ちの整理しとくから…次は友人として会おうな」

 告白されたのも初めてなら振ったのも初めてだから、どんな顔をしたら良いのかも分からなかった。イワンだって気まずいだろうに、わざわざ声をかけにきてくれたんだ。

 もしハルに告白して振られたとして、気持ちの整理をつけて友達になろうなんて、俺にはとても言えないと思う。きっとイワンもかなり無理をしてくれてるんだと思うけど、その気遣いが嬉しかった。

「絶対また来るから。またね」
「ああ、またな」

 最後は笑顔で別れられた事に、ほっとした。全く意味が分からないやりとりだっただろうに、ハルは何も言わずにただ笑顔で俺の隣に立っていてくれた。

「行こうか」
「うん」
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