71 / 1,561
70.この村は温かい
帰り道に採取したハルお勧めのセウカは、一抱えもある巨大な蛍光青色の実だった。確かにこの大きさなら、3こもあれば村人全員が楽しめるだろうな。
俺の差し入れは、子どもたちはもちろん大人たちにも喜ばれた。
俺も切り分けたのを食べさせてもらったけど、なかの果肉もしっかり蛍光青色だったよ。大人も子どもも全く気にせずに齧りつくんだけど、俺的には見た目の破壊力がすごすぎるけど、目をつむって食べたらほんのり甘くてジューシーでかなり美味しかった。
ただ、その後が大変だったんだ。貰ってばかりは性に合わないと、各お家から料理や野菜、干し肉に干し果物なんかが届いてしまって、テーブルの上がすごいことになった。
「どうしよう…絶対に食べきれない…」
ハルは苦悩する俺の顔を見て、失礼にも思いっきり噴き出した。
「何笑ってるんだよ」
「だってその顔、悲痛すぎるよ、アキト」
「もらったもの捨てたくないだろー」
「魔道収納鞄にしまっておいて、明日も食べたら?食材系はレーブンに渡せば無駄にはならないよ」
「あ、そっか」
ハルに手伝ってもらって、痛みやすいものと痛みにくいものに分けてから、俺はいそいそと鞄の中に食べ物をしまい込んでいく。
アックスさんが今日は晩飯食べにくるかって聞きにきてくれたけど、テーブルの上の料理を見て苦笑しながら帰って行ったよ。
「いただきます」
収納鞄にしまいにくいものから順番に食べすすめていく。トライプールとの違いはやっぱり鮮度なのかな。食べた事のある野菜でも、旨味が濃いんだよね。種類は多いけど、みんな一人で食べるんだからって気遣ってくれたみたいで、俺はなんとか完食することができた。
「アキト、明日はどうする?」
「んー、トライプールに帰りたいな」
自然に帰ると言葉にした自分に、言った本人が驚いてしまった。俺にとって、もう黒鷹亭は帰る場所なんだ。
「分かった。じゃあ明日は朝早くに起こそうか?」
村の仕事を手伝いたいから早く起こして欲しい。わざわざそう口にしなくても、ハルはちゃんと分かってくれた。俺の事を分かってくれてるってだけで、こんなにも嬉しくなってしまう。
「お願いします」
「まかせて」
笑顔のハルにうっかり見惚れそうになった俺は、慌てて目を逸らす。不審に思われないように図鑑を取り出すと、もう一度最初から目を通し始めた。
翌朝は早朝に起こしてもらって、手伝いに参加させてもらった。とは言っても、アックスさんと俺はまだ無理はするなって簡単な作業に回されてしまったけど。アックスさんと二人で苦笑しながら、ゆったりとウカの世話をさせてもらった。
皆でわいわい食べる恒例の朝食の席はにぎやかで、美味しい料理を全力で堪能した。
「アキト、いつまでいるんだ?」
「あ、今日帰ります」
「えー」
「そうなのか?」
「もっと長くいればいいのに」
「寂しくなるな」
そう言って引き留めてくれる皆に、思わず笑顔が漏れた。
「このまま、このむらにすめばいいのにー」
そう言ってくれたのは、すっかり懐いてくれたこどもたちだ。本当にこの村の人たちは温かい。胸の中もほっこりと温かくなった。
「アキトにも色々あるだろうから、無理を言うんじゃないぞ!」
パルン村長の言葉に、皆もそれ以上何も言わなくなった。
「まあ、移住する気になったら、いつでも来ておくれ!」
「おまえのが一番本気じゃないか!」
「ブラン、お前も思ってるくせに」
「まあそうじゃが」
兄弟の言い合いに、俺も村人と一緒になって大きな声をあげて笑った。
食事が終わって、名残惜しそうにしながらも皆が散っていく。人が減ってくると、木の上にいたハルが隣に降りてきた。
「じゃあ行こうか」
ハルの声に頷こうとしたとき、不意に後ろから声がかかった。
「アキト」
そこに立っていたのは、食事中は遠くの席に座っていたイワンだった。
「イワン、おはよ」
「おう、おはよう」
普通に返事を返してくれて、ほっとしてしまった。
「俺の事を気にしてこの村に来なくなるなんて、絶対にやめてくれよ」
「…うん」
「次会う時までには、俺もちゃんと気持ちの整理しとくから…次は友人として会おうな」
告白されたのも初めてなら振ったのも初めてだから、どんな顔をしたら良いのかも分からなかった。イワンだって気まずいだろうに、わざわざ声をかけにきてくれたんだ。
もしハルに告白して振られたとして、気持ちの整理をつけて友達になろうなんて、俺にはとても言えないと思う。きっとイワンもかなり無理をしてくれてるんだと思うけど、その気遣いが嬉しかった。
「絶対また来るから。またね」
「ああ、またな」
最後は笑顔で別れられた事に、ほっとした。全く意味が分からないやりとりだっただろうに、ハルは何も言わずにただ笑顔で俺の隣に立っていてくれた。
「行こうか」
「うん」
俺の差し入れは、子どもたちはもちろん大人たちにも喜ばれた。
俺も切り分けたのを食べさせてもらったけど、なかの果肉もしっかり蛍光青色だったよ。大人も子どもも全く気にせずに齧りつくんだけど、俺的には見た目の破壊力がすごすぎるけど、目をつむって食べたらほんのり甘くてジューシーでかなり美味しかった。
ただ、その後が大変だったんだ。貰ってばかりは性に合わないと、各お家から料理や野菜、干し肉に干し果物なんかが届いてしまって、テーブルの上がすごいことになった。
「どうしよう…絶対に食べきれない…」
ハルは苦悩する俺の顔を見て、失礼にも思いっきり噴き出した。
「何笑ってるんだよ」
「だってその顔、悲痛すぎるよ、アキト」
「もらったもの捨てたくないだろー」
「魔道収納鞄にしまっておいて、明日も食べたら?食材系はレーブンに渡せば無駄にはならないよ」
「あ、そっか」
ハルに手伝ってもらって、痛みやすいものと痛みにくいものに分けてから、俺はいそいそと鞄の中に食べ物をしまい込んでいく。
アックスさんが今日は晩飯食べにくるかって聞きにきてくれたけど、テーブルの上の料理を見て苦笑しながら帰って行ったよ。
「いただきます」
収納鞄にしまいにくいものから順番に食べすすめていく。トライプールとの違いはやっぱり鮮度なのかな。食べた事のある野菜でも、旨味が濃いんだよね。種類は多いけど、みんな一人で食べるんだからって気遣ってくれたみたいで、俺はなんとか完食することができた。
「アキト、明日はどうする?」
「んー、トライプールに帰りたいな」
自然に帰ると言葉にした自分に、言った本人が驚いてしまった。俺にとって、もう黒鷹亭は帰る場所なんだ。
「分かった。じゃあ明日は朝早くに起こそうか?」
村の仕事を手伝いたいから早く起こして欲しい。わざわざそう口にしなくても、ハルはちゃんと分かってくれた。俺の事を分かってくれてるってだけで、こんなにも嬉しくなってしまう。
「お願いします」
「まかせて」
笑顔のハルにうっかり見惚れそうになった俺は、慌てて目を逸らす。不審に思われないように図鑑を取り出すと、もう一度最初から目を通し始めた。
翌朝は早朝に起こしてもらって、手伝いに参加させてもらった。とは言っても、アックスさんと俺はまだ無理はするなって簡単な作業に回されてしまったけど。アックスさんと二人で苦笑しながら、ゆったりとウカの世話をさせてもらった。
皆でわいわい食べる恒例の朝食の席はにぎやかで、美味しい料理を全力で堪能した。
「アキト、いつまでいるんだ?」
「あ、今日帰ります」
「えー」
「そうなのか?」
「もっと長くいればいいのに」
「寂しくなるな」
そう言って引き留めてくれる皆に、思わず笑顔が漏れた。
「このまま、このむらにすめばいいのにー」
そう言ってくれたのは、すっかり懐いてくれたこどもたちだ。本当にこの村の人たちは温かい。胸の中もほっこりと温かくなった。
「アキトにも色々あるだろうから、無理を言うんじゃないぞ!」
パルン村長の言葉に、皆もそれ以上何も言わなくなった。
「まあ、移住する気になったら、いつでも来ておくれ!」
「おまえのが一番本気じゃないか!」
「ブラン、お前も思ってるくせに」
「まあそうじゃが」
兄弟の言い合いに、俺も村人と一緒になって大きな声をあげて笑った。
食事が終わって、名残惜しそうにしながらも皆が散っていく。人が減ってくると、木の上にいたハルが隣に降りてきた。
「じゃあ行こうか」
ハルの声に頷こうとしたとき、不意に後ろから声がかかった。
「アキト」
そこに立っていたのは、食事中は遠くの席に座っていたイワンだった。
「イワン、おはよ」
「おう、おはよう」
普通に返事を返してくれて、ほっとしてしまった。
「俺の事を気にしてこの村に来なくなるなんて、絶対にやめてくれよ」
「…うん」
「次会う時までには、俺もちゃんと気持ちの整理しとくから…次は友人として会おうな」
告白されたのも初めてなら振ったのも初めてだから、どんな顔をしたら良いのかも分からなかった。イワンだって気まずいだろうに、わざわざ声をかけにきてくれたんだ。
もしハルに告白して振られたとして、気持ちの整理をつけて友達になろうなんて、俺にはとても言えないと思う。きっとイワンもかなり無理をしてくれてるんだと思うけど、その気遣いが嬉しかった。
「絶対また来るから。またね」
「ああ、またな」
最後は笑顔で別れられた事に、ほっとした。全く意味が分からないやりとりだっただろうに、ハルは何も言わずにただ笑顔で俺の隣に立っていてくれた。
「行こうか」
「うん」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。