82 / 1,561
81.【ハル視点】串焼き屋ではメロウも一緒に
マーゴット商会の建物から出たアキトは、そのまま早歩きで路地まで移動した。見送りに出てきていたジェイデンから見えない所まで移動してから、ようやくふうと息を吐く。
「あー疲れた…」
「何がそんなに疲れたんだい?楽しそうに見えたけど」
「うん、楽しかったけど…年上の人に敬語で丁寧に対応されるのがさ、慣れてないから」
アキトの住んでいた国には身分制度は無いと以前言っていたな。店員であっても軽い敬語で対応されるものだから、あそこまで丁寧な対応だと緊張するそうだ。
「ああ、そうなのか。こればっかりは慣れだろうね。でも、アキトが気に入る本があって良かったよ」
「うん、読むの楽しみ!」
本を読むことを想像してか、ニコニコ笑顔のアキトはとても可愛かった。
「よし、じゃあそろそろ、アジーの串焼き屋に向かおうか」
「待ってましたー」
アジーの串焼き屋の前に辿り着いた時、アキトの興奮は最高潮だった。マーゴット商会にはあれほど緊張するのに、この建物は大丈夫なんだな。大きさも同じぐらいなんだが、アキトの判断基準はどこなんだろう。派手か地味かなんて話なんだろうか。
「ただこのお店は、注文の仕方がちょっと変わってるんだ」
店内に入る前にと説明すれば、アキトはふふと柔らかく笑い出した。何がそんなに面白かったのかが分からず、俺は不思議そうな顔でアキトを見つめた。
アキトは俺の視線に気づくと、あとでと口を動かして答えてくれた。
「「「いらっしゃいませー」」」
「アジーの串焼き屋にようこそ!」
活気あふれる店内を見渡したアキトは、楽し気にメニューを見て選びだす。
「お勧めはやっぱり串焼きだけど、ここは肉の種類が3種類、味付けも3種類あるんだ。全部食べたいならこの全種セットにして、後は小ぶりのパンを追加する人が多いかな」
しばらく悩んでいたアキトは、すぐに列の後ろに並んだ。決めるのが早いなと感心しながら、追加で注文もできると伝えれば嬉しそうな笑顔が返ってきた。
アキトは結局俺が勧めた串焼きの全種セットに、野菜串とパンを追加、酒を一杯だけ注文したようだ。焼きたての串焼きを見ているアキトがあまりに幸せそうに笑うから、俺は完全に気を抜いていた。街中だから危険は無いと思っていたというのもあるが、メロウに気づかなかった原因はアキトの可愛さのせいだ。
「こんにちは、やっぱりアキトさんでしたか」
「あれ、メロウさん、こんにちは」
「アキトさんもこのお店がお好きだったんですね」
「いえ、それが初めてなんです。せっかく休みだしと思って」
「なるほど。私も今日はお休みなんですよ。もしよろしければ、ご一緒しても良いですか?」
すぐにぜひと返すだろうと思っていた俺は、まっすぐにぶつかったアキトの視線に驚いてしまった。良いかな?と言いたげな視線に、俺は笑顔で許可を出した。今日は二人でおでかけしようと言ったから、わざわざ俺の意見を聞いてくれたんだろうな。こういうところが、たまらなく好きだ。
アキトの食べっぷりはもちろん知っていたけれど、メロウがこれほど食べるなんて知らなかった。そういえば顔を合わせる事は多かったけれど、一緒に食事をする機会なんて無かったな。
二人は美味しいと笑い合ったり、楽しそうにあれこれと話しながら食べ進めていく。周りの席からも視線が集まっているが、嫌な視線では無さそうだ。
「パンにすこし切れ込みを入れて、この串を挟んで食べるのも美味しいですよ」
「うわー絶対美味しいやつですね!やってみます」
「はい、ぜひ」
メロウの提案した食べ方に、アキトの後ろの席に座っていた客達は顔を見合わせた後、ひとりの客が席を立った。おそらくパンを追加するためだろう。
メロウはそれに気づいて楽しそうに笑っているが、アキトは全く気付かずに肉を挟んだパンにかぶりついていた。
「美味しいっ!この食べ方すっごく美味しいです!」
「でしょう?」
二人の食べっぷりと影響されている周りの対比を楽しんでいるうちに、二人はあっという間に綺麗に食べつくしてしまった。
ちらちらとメニューの方を見ているアキトは、まだ食べれると言いたげだなと見つめていれば、メロウは申し訳無さそうに話し始めた。
深刻そうな顔に一体何事かと身構えてしまったけれど、アキトが昇格試験を受けれるようになったという話だった。そうか、もう5種類の魔物退治が終わったんだな。
「納品されたあの素材に驚いてしまったせいで、伝えるのを忘れてしまったんです。私の失態です。申し訳ありませんでした」
頭を下げようとするメロウを、アキトはさっと手で止めた。
「いえ、そんなに気にしなくて大丈夫ですから」
「ありがとうございます。それで、ランクアップはすぐにされますか?」
メロウの質問に、アキトはちらりと俺の方を見た。
「ランクアップは受けれるようになったらすぐに受けたら良いよ。もし合格できなくても何度でも挑戦はできるからね」
虚空を見て固まるアキトを見ても、メロウはもう俺の鑑定をしようとはしなかった。銀月水桃の蜜を納品した事で、精霊が見える事はメロウの中では確定事項になったんだろう。
「メロウさん、できればすぐに受けたいです」
「EからDランクへの昇格試験は、5日おきに実施されています」
「あ、そうなんですか」
「次はちょうど明日なので、折角ここで会えたなら伝えておきたいなと思ったんです。突然こんなところでこんな話をしてすみません」
なるほど。それでこんな人目の多いところで話題に出したのか。
とはいえ、メロウは配慮もきちんとしていた。銀月水桃の蜜と言わずにあの素材と言ったことだ。これならギルドの受付と冒険者が一緒にいるくらいに、周りには思われているだろう。
「それでわざわざ教えてくださったんですね、ありがとうございます」
「いえ、手違いがあったせいでご迷惑をかけるよりは…と思っただけですから」
「じゃあ明日、試験を受けに行って良いですか?」
「はい、試験は11時から、当日参加で大丈夫ですので、受付でお声がけください」
「わかりました!」
メロウはふうと肩の力を抜くと、追加の料理を頼もうかと提案した。アキトは満面の笑みでその提案に飛びついた。
ということは、明日は冒険者ギルドで昇給試験を受けるって事だな。明日の朝は何時に起こそうかと考えながら、俺は真剣にメニューを相談している二人の姿を見つめていた。
「あー疲れた…」
「何がそんなに疲れたんだい?楽しそうに見えたけど」
「うん、楽しかったけど…年上の人に敬語で丁寧に対応されるのがさ、慣れてないから」
アキトの住んでいた国には身分制度は無いと以前言っていたな。店員であっても軽い敬語で対応されるものだから、あそこまで丁寧な対応だと緊張するそうだ。
「ああ、そうなのか。こればっかりは慣れだろうね。でも、アキトが気に入る本があって良かったよ」
「うん、読むの楽しみ!」
本を読むことを想像してか、ニコニコ笑顔のアキトはとても可愛かった。
「よし、じゃあそろそろ、アジーの串焼き屋に向かおうか」
「待ってましたー」
アジーの串焼き屋の前に辿り着いた時、アキトの興奮は最高潮だった。マーゴット商会にはあれほど緊張するのに、この建物は大丈夫なんだな。大きさも同じぐらいなんだが、アキトの判断基準はどこなんだろう。派手か地味かなんて話なんだろうか。
「ただこのお店は、注文の仕方がちょっと変わってるんだ」
店内に入る前にと説明すれば、アキトはふふと柔らかく笑い出した。何がそんなに面白かったのかが分からず、俺は不思議そうな顔でアキトを見つめた。
アキトは俺の視線に気づくと、あとでと口を動かして答えてくれた。
「「「いらっしゃいませー」」」
「アジーの串焼き屋にようこそ!」
活気あふれる店内を見渡したアキトは、楽し気にメニューを見て選びだす。
「お勧めはやっぱり串焼きだけど、ここは肉の種類が3種類、味付けも3種類あるんだ。全部食べたいならこの全種セットにして、後は小ぶりのパンを追加する人が多いかな」
しばらく悩んでいたアキトは、すぐに列の後ろに並んだ。決めるのが早いなと感心しながら、追加で注文もできると伝えれば嬉しそうな笑顔が返ってきた。
アキトは結局俺が勧めた串焼きの全種セットに、野菜串とパンを追加、酒を一杯だけ注文したようだ。焼きたての串焼きを見ているアキトがあまりに幸せそうに笑うから、俺は完全に気を抜いていた。街中だから危険は無いと思っていたというのもあるが、メロウに気づかなかった原因はアキトの可愛さのせいだ。
「こんにちは、やっぱりアキトさんでしたか」
「あれ、メロウさん、こんにちは」
「アキトさんもこのお店がお好きだったんですね」
「いえ、それが初めてなんです。せっかく休みだしと思って」
「なるほど。私も今日はお休みなんですよ。もしよろしければ、ご一緒しても良いですか?」
すぐにぜひと返すだろうと思っていた俺は、まっすぐにぶつかったアキトの視線に驚いてしまった。良いかな?と言いたげな視線に、俺は笑顔で許可を出した。今日は二人でおでかけしようと言ったから、わざわざ俺の意見を聞いてくれたんだろうな。こういうところが、たまらなく好きだ。
アキトの食べっぷりはもちろん知っていたけれど、メロウがこれほど食べるなんて知らなかった。そういえば顔を合わせる事は多かったけれど、一緒に食事をする機会なんて無かったな。
二人は美味しいと笑い合ったり、楽しそうにあれこれと話しながら食べ進めていく。周りの席からも視線が集まっているが、嫌な視線では無さそうだ。
「パンにすこし切れ込みを入れて、この串を挟んで食べるのも美味しいですよ」
「うわー絶対美味しいやつですね!やってみます」
「はい、ぜひ」
メロウの提案した食べ方に、アキトの後ろの席に座っていた客達は顔を見合わせた後、ひとりの客が席を立った。おそらくパンを追加するためだろう。
メロウはそれに気づいて楽しそうに笑っているが、アキトは全く気付かずに肉を挟んだパンにかぶりついていた。
「美味しいっ!この食べ方すっごく美味しいです!」
「でしょう?」
二人の食べっぷりと影響されている周りの対比を楽しんでいるうちに、二人はあっという間に綺麗に食べつくしてしまった。
ちらちらとメニューの方を見ているアキトは、まだ食べれると言いたげだなと見つめていれば、メロウは申し訳無さそうに話し始めた。
深刻そうな顔に一体何事かと身構えてしまったけれど、アキトが昇格試験を受けれるようになったという話だった。そうか、もう5種類の魔物退治が終わったんだな。
「納品されたあの素材に驚いてしまったせいで、伝えるのを忘れてしまったんです。私の失態です。申し訳ありませんでした」
頭を下げようとするメロウを、アキトはさっと手で止めた。
「いえ、そんなに気にしなくて大丈夫ですから」
「ありがとうございます。それで、ランクアップはすぐにされますか?」
メロウの質問に、アキトはちらりと俺の方を見た。
「ランクアップは受けれるようになったらすぐに受けたら良いよ。もし合格できなくても何度でも挑戦はできるからね」
虚空を見て固まるアキトを見ても、メロウはもう俺の鑑定をしようとはしなかった。銀月水桃の蜜を納品した事で、精霊が見える事はメロウの中では確定事項になったんだろう。
「メロウさん、できればすぐに受けたいです」
「EからDランクへの昇格試験は、5日おきに実施されています」
「あ、そうなんですか」
「次はちょうど明日なので、折角ここで会えたなら伝えておきたいなと思ったんです。突然こんなところでこんな話をしてすみません」
なるほど。それでこんな人目の多いところで話題に出したのか。
とはいえ、メロウは配慮もきちんとしていた。銀月水桃の蜜と言わずにあの素材と言ったことだ。これならギルドの受付と冒険者が一緒にいるくらいに、周りには思われているだろう。
「それでわざわざ教えてくださったんですね、ありがとうございます」
「いえ、手違いがあったせいでご迷惑をかけるよりは…と思っただけですから」
「じゃあ明日、試験を受けに行って良いですか?」
「はい、試験は11時から、当日参加で大丈夫ですので、受付でお声がけください」
「わかりました!」
メロウはふうと肩の力を抜くと、追加の料理を頼もうかと提案した。アキトは満面の笑みでその提案に飛びついた。
ということは、明日は冒険者ギルドで昇給試験を受けるって事だな。明日の朝は何時に起こそうかと考えながら、俺は真剣にメニューを相談している二人の姿を見つめていた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。