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99.トルマルの夕日
屋台の食べ物を食べられる場所まで案内された俺は、買ったばかりのお酒を持ったまま立ち尽くしていた。
「アキト?どうかしたの?」
突然立ち止まって大きく目を見開いて固まった俺に、ハルは心配そうに顔を覗き込みながら声をかけてくれた。
いや、だってさ、屋台のものを食べて良いテーブルと椅子があるんだって聞いて想像するのって、フードコートとか大学の食堂とかじゃない?俺の想像力が貧困なだけ?
それなのに何でもないような顔をして連れてこられたのが、海にせりだすように作られた雰囲気の良いウッドデッキみたいな場所なんだよ。お勧めのデートスポットとして話題になってそうな、そんな場所がいきなり目の前にあらわたんだから、少しぐらい動揺させて欲しい。
「大丈夫?」
「あ、ごめん。綺麗すぎてびっくりしただけ…」
「ああ、それなら良かった」
安心したと言いたげなハルを、思わずじっと見つめてしまった。今の俺の反応を見て面白がってないって事は、サプライズでも悪戯でも無かったって事だ。つまりここはハルにとっては普通の場所なんだろうか。
そっと辺りの様子を伺ってみると、一人で食べてる人も男女問わずにいるし、子ども連れの家族の姿もある。雰囲気だけで判断した俺が間違ってたみたいだ。
「好きな所に座って良いみたいだよ?どこにする?」
優しく聞いてくれるハルをちらりと見てから、俺は一人客のおじさん近くのテーブルを選んだ。椅子に座れば目の前には海が広がっていて、絶景だ。
「綺麗な場所だよね」
隣に座った穏やかなハルの声に、俺もこっそりと小声で返事を返す。これだけ賑やかなら、少しくらい返事しても大丈夫だろう。
「うん、綺麗だね」
ぼーっと海を眺めてしまいそうな場所だけど、まずは腹ごしらえだ。いそいそと鞄の中からさっき買ったばかりの料理を取り出していく。
買ってる時は思わなかったけど、並べてみると思ったよりも量が多そうだ。一人でこれだけの量が食べられるかなと、少しだけ心配になった。
結論から言うと、余裕で全部食べれてしまった。お腹が空いてたのもあるけど、久しぶりに食べる海の幸がおいしすぎたんだよね。
大振りな貝は噛めば噛むほど味があって幸せだったし、魚は骨まで食べられるのを選んだからワイルドに齧りついた。混ぜご飯…混ぜライス?も塩がメインのシンプルな味付けだったんだけど、青じそっぽい味のハーブと焼いた魚をから出る旨味で十分に美味しかった。
「よく食べたねー」
「どれも美味しかったよ」
「それは良かった。あ、アキト見て」
ハルの声に視線を上げれば、海へと沈んでいく夕陽が目に飛び込んできた。オレンジ色に染まった夕空と、海面に反射した夕陽がゆらゆらと揺れるその光景があまりに綺麗で、お酒の入ったカップを握りしめたまま見入ってしまった。
完全に日が沈んでしまうと、各テーブルに置いてあった謎の丸いものが淡く光りだした。ああ、これって照明だったんだ。間接照明のような淡い光だ。
物珍しそうに照明をつついている俺に、ハルは笑顔を洩らした。
「ここの夕日も綺麗だけど、俺が一番好きなのはトライプールの高台から見る夕日なんだ」
高台なんてあったっけと思わず首を傾げれば、ハルはすぐに察して説明してくれた。
俺はまだ行ったことがないけど、トライプールの領主城は高台の上に建ってるんだって。もちろん城は関係者以外は立ち入り禁止らしいんだけど、そのお城の前にある綺麗な広場は一般市民にも解放されてて人気があるらしい。
「そこに色とりどりの花が植えられた花壇があってね」
「花壇?」
「そう。その花壇の所から見るとトライプールの街全体が夕日の色に染まってね、言葉を失うぐらい綺麗だったんだ」
どこか懐かしそうにそう話すハルに、少しだけ胸が痛んだ。その忘れられないほど綺麗な光景を、ハルは一体誰と一緒に見たんだろう。やっぱり生前の恋人とかなのかな。考えないようにしてきたけど、ハルはこれだけ見た目も格好良くて、中身も優しくて気遣いの出来る人だ。モテないわけが無いんだよな。
「アキト、もし興味があれば…今度一緒に行ってみない?」
「え、俺と?」
「うん、アキトと見たいと思ったんだけど、駄目かな?」
照れくさそうに笑いつつ誘ってくれたハルに、胸がぎゅっとなった。そんなつもりで誘ってくれたわけじゃないって分かってるけど、このお誘いはちょっと嬉しい。
「行きたい!」
「良かった…いつか休みの日に行ってみようか」
俺はふわふわした気分で、大きく頷いた。
「アキト?どうかしたの?」
突然立ち止まって大きく目を見開いて固まった俺に、ハルは心配そうに顔を覗き込みながら声をかけてくれた。
いや、だってさ、屋台のものを食べて良いテーブルと椅子があるんだって聞いて想像するのって、フードコートとか大学の食堂とかじゃない?俺の想像力が貧困なだけ?
それなのに何でもないような顔をして連れてこられたのが、海にせりだすように作られた雰囲気の良いウッドデッキみたいな場所なんだよ。お勧めのデートスポットとして話題になってそうな、そんな場所がいきなり目の前にあらわたんだから、少しぐらい動揺させて欲しい。
「大丈夫?」
「あ、ごめん。綺麗すぎてびっくりしただけ…」
「ああ、それなら良かった」
安心したと言いたげなハルを、思わずじっと見つめてしまった。今の俺の反応を見て面白がってないって事は、サプライズでも悪戯でも無かったって事だ。つまりここはハルにとっては普通の場所なんだろうか。
そっと辺りの様子を伺ってみると、一人で食べてる人も男女問わずにいるし、子ども連れの家族の姿もある。雰囲気だけで判断した俺が間違ってたみたいだ。
「好きな所に座って良いみたいだよ?どこにする?」
優しく聞いてくれるハルをちらりと見てから、俺は一人客のおじさん近くのテーブルを選んだ。椅子に座れば目の前には海が広がっていて、絶景だ。
「綺麗な場所だよね」
隣に座った穏やかなハルの声に、俺もこっそりと小声で返事を返す。これだけ賑やかなら、少しくらい返事しても大丈夫だろう。
「うん、綺麗だね」
ぼーっと海を眺めてしまいそうな場所だけど、まずは腹ごしらえだ。いそいそと鞄の中からさっき買ったばかりの料理を取り出していく。
買ってる時は思わなかったけど、並べてみると思ったよりも量が多そうだ。一人でこれだけの量が食べられるかなと、少しだけ心配になった。
結論から言うと、余裕で全部食べれてしまった。お腹が空いてたのもあるけど、久しぶりに食べる海の幸がおいしすぎたんだよね。
大振りな貝は噛めば噛むほど味があって幸せだったし、魚は骨まで食べられるのを選んだからワイルドに齧りついた。混ぜご飯…混ぜライス?も塩がメインのシンプルな味付けだったんだけど、青じそっぽい味のハーブと焼いた魚をから出る旨味で十分に美味しかった。
「よく食べたねー」
「どれも美味しかったよ」
「それは良かった。あ、アキト見て」
ハルの声に視線を上げれば、海へと沈んでいく夕陽が目に飛び込んできた。オレンジ色に染まった夕空と、海面に反射した夕陽がゆらゆらと揺れるその光景があまりに綺麗で、お酒の入ったカップを握りしめたまま見入ってしまった。
完全に日が沈んでしまうと、各テーブルに置いてあった謎の丸いものが淡く光りだした。ああ、これって照明だったんだ。間接照明のような淡い光だ。
物珍しそうに照明をつついている俺に、ハルは笑顔を洩らした。
「ここの夕日も綺麗だけど、俺が一番好きなのはトライプールの高台から見る夕日なんだ」
高台なんてあったっけと思わず首を傾げれば、ハルはすぐに察して説明してくれた。
俺はまだ行ったことがないけど、トライプールの領主城は高台の上に建ってるんだって。もちろん城は関係者以外は立ち入り禁止らしいんだけど、そのお城の前にある綺麗な広場は一般市民にも解放されてて人気があるらしい。
「そこに色とりどりの花が植えられた花壇があってね」
「花壇?」
「そう。その花壇の所から見るとトライプールの街全体が夕日の色に染まってね、言葉を失うぐらい綺麗だったんだ」
どこか懐かしそうにそう話すハルに、少しだけ胸が痛んだ。その忘れられないほど綺麗な光景を、ハルは一体誰と一緒に見たんだろう。やっぱり生前の恋人とかなのかな。考えないようにしてきたけど、ハルはこれだけ見た目も格好良くて、中身も優しくて気遣いの出来る人だ。モテないわけが無いんだよな。
「アキト、もし興味があれば…今度一緒に行ってみない?」
「え、俺と?」
「うん、アキトと見たいと思ったんだけど、駄目かな?」
照れくさそうに笑いつつ誘ってくれたハルに、胸がぎゅっとなった。そんなつもりで誘ってくれたわけじゃないって分かってるけど、このお誘いはちょっと嬉しい。
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「良かった…いつか休みの日に行ってみようか」
俺はふわふわした気分で、大きく頷いた。
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