103 / 1,561
102.絵画のような景色
ちょっとだけ仮眠のつもりで寝落ちた俺だけど、目を覚ますと世界は既に朝だった。
異世界には雨戸や遮光カーテンなんてものは無いから、部屋の明るさでだいたいの時間が分かるんだ。正直に言うとまだ眠いんだけど。でもこの明るさは、確実に朝だ。
「んんー」
寝心地最高のベッドの上で、俺は唸りながらごろんと寝返りを打った。
「アキト、起きたの?」
しぱしぱする目で寝転がったまま部屋の中を見回してみると、ハルは窓近くにあるテーブルの椅子に座っていた。
朝の光が差し込む窓を背に、こっちを見つめて柔らかく微笑む王子様系イケメンの破壊力はもの凄かった。うん、ドキドキしすぎて一瞬で目が覚めたよね。
「起きた!おはよ、ハル」
急いで起き上がった俺に、ハルは穏やかに話かけてくれた。
「おはよう、アキト。やっぱり疲れてたんだね。よく眠れて良かった」
「うん、結構疲れてたみたいだ…飲みに行かなくて良かったよ」
もし飲みに行ってて、そこで寝落ちてたら大問題だもんな。周りにも迷惑をかけただろうし、事前に阻止してくれたハルには感謝しか無い。
「アキト、起きられるならこっちに来ない?外、すごいよ」
楽し気なハルの声につられるように、すぐに立ち上がると窓の方へと近づいていく。まだ寝起きの頭で何も考えずに窓の外を覗き込んだ俺は、その景色に息を呑んだ。
見渡す限りに広がったエメラルドグリーンの海が、朝の光を反射してキラキラと輝いている。寄せてくる波の白がアクセントになっていて、絵画でも見ているかのような美しさだ。思わず圧倒されるような、そんなすごい景色だった。
「わーすご…」
「うん、すごいよね」
これだけ綺麗な景色だったら、いくら見ていても見飽きなさそうだ。
「あれは船かな?」
「ああ、あれは商船だね」
景色を眺めながらのんびりとハルと話していた俺は、不意に昨夜の自分の失態に気づいてしまった。せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、俺、温泉に入ってない!
「あああー!」
気づいた瞬間、思わず叫んでしまった。防音結界があるから部屋の外までは響いてないと思うけど、突然の叫び声にハルはびくっと体を揺らした。びっくりさせてごめん。
「ど、どうしたの、アキト?」
「驚かせてごめん。その、せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、温泉に入らずに寝ちゃったって気づいて…」
「ああ、そういうことか」
慌てて説明すれば、ハルは納得してくれたみたいだ。
「もったいない事しちゃった」
あーほんとに昨日の俺の馬鹿と軽い気持ちで続けた言葉に、何故かハルがしょんぼりと肩を落とした。
「アキト、朝まで起こさなくてごめんね?」
そのあまりに予想外の反応にびっくりしすぎて、俺は焦ってハルを見上げた。謝る必要なんてかけらも無いのに、俺の言い方が悪かったせいでハルに謝らせてしまった。その事実に俺は軽くパニックになった。
「わー違う違う!ごめんなさい!勝手に寝落ちた自分が悪いんだし、疲れてる俺を寝かせてくれようとしたハルの優しさは伝わってるし、ハルが謝る必要なんて全く無いんだよ!!」
必死でそう伝えれば、ハルは大きく目を見開いたまま俺を見つめてきた。
「紛らかしい言い方してごめん。本当にハルを責める気なんてほんのひとかけらも無かったんだよ。残念だったから、昨日の俺の馬鹿って思ってつい愚痴っただけ!」
「そ、そうなんだ?」
俺のあまりの勢いにハルは少し引いてるみたいだけど、これはきっちり伝えておかないと後悔する。
「そう!謝らせてごめんなさい!悪いのは全部俺です!」
「いや、アキトも謝らなくて良いよ。俺も勝手に勘違いしてごめんね?」
ハルはそう言って優しく笑ってくれた。
「ごめ…」
「もう良いってば。あ、じゃあ、今から入るっていうのはどうかな?」
再度謝ろうとした俺の言葉を遮ったハルは、そんな嬉しい提案をしてくれた。
異世界には雨戸や遮光カーテンなんてものは無いから、部屋の明るさでだいたいの時間が分かるんだ。正直に言うとまだ眠いんだけど。でもこの明るさは、確実に朝だ。
「んんー」
寝心地最高のベッドの上で、俺は唸りながらごろんと寝返りを打った。
「アキト、起きたの?」
しぱしぱする目で寝転がったまま部屋の中を見回してみると、ハルは窓近くにあるテーブルの椅子に座っていた。
朝の光が差し込む窓を背に、こっちを見つめて柔らかく微笑む王子様系イケメンの破壊力はもの凄かった。うん、ドキドキしすぎて一瞬で目が覚めたよね。
「起きた!おはよ、ハル」
急いで起き上がった俺に、ハルは穏やかに話かけてくれた。
「おはよう、アキト。やっぱり疲れてたんだね。よく眠れて良かった」
「うん、結構疲れてたみたいだ…飲みに行かなくて良かったよ」
もし飲みに行ってて、そこで寝落ちてたら大問題だもんな。周りにも迷惑をかけただろうし、事前に阻止してくれたハルには感謝しか無い。
「アキト、起きられるならこっちに来ない?外、すごいよ」
楽し気なハルの声につられるように、すぐに立ち上がると窓の方へと近づいていく。まだ寝起きの頭で何も考えずに窓の外を覗き込んだ俺は、その景色に息を呑んだ。
見渡す限りに広がったエメラルドグリーンの海が、朝の光を反射してキラキラと輝いている。寄せてくる波の白がアクセントになっていて、絵画でも見ているかのような美しさだ。思わず圧倒されるような、そんなすごい景色だった。
「わーすご…」
「うん、すごいよね」
これだけ綺麗な景色だったら、いくら見ていても見飽きなさそうだ。
「あれは船かな?」
「ああ、あれは商船だね」
景色を眺めながらのんびりとハルと話していた俺は、不意に昨夜の自分の失態に気づいてしまった。せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、俺、温泉に入ってない!
「あああー!」
気づいた瞬間、思わず叫んでしまった。防音結界があるから部屋の外までは響いてないと思うけど、突然の叫び声にハルはびくっと体を揺らした。びっくりさせてごめん。
「ど、どうしたの、アキト?」
「驚かせてごめん。その、せっかく温泉付きの宿に泊まったのに、温泉に入らずに寝ちゃったって気づいて…」
「ああ、そういうことか」
慌てて説明すれば、ハルは納得してくれたみたいだ。
「もったいない事しちゃった」
あーほんとに昨日の俺の馬鹿と軽い気持ちで続けた言葉に、何故かハルがしょんぼりと肩を落とした。
「アキト、朝まで起こさなくてごめんね?」
そのあまりに予想外の反応にびっくりしすぎて、俺は焦ってハルを見上げた。謝る必要なんてかけらも無いのに、俺の言い方が悪かったせいでハルに謝らせてしまった。その事実に俺は軽くパニックになった。
「わー違う違う!ごめんなさい!勝手に寝落ちた自分が悪いんだし、疲れてる俺を寝かせてくれようとしたハルの優しさは伝わってるし、ハルが謝る必要なんて全く無いんだよ!!」
必死でそう伝えれば、ハルは大きく目を見開いたまま俺を見つめてきた。
「紛らかしい言い方してごめん。本当にハルを責める気なんてほんのひとかけらも無かったんだよ。残念だったから、昨日の俺の馬鹿って思ってつい愚痴っただけ!」
「そ、そうなんだ?」
俺のあまりの勢いにハルは少し引いてるみたいだけど、これはきっちり伝えておかないと後悔する。
「そう!謝らせてごめんなさい!悪いのは全部俺です!」
「いや、アキトも謝らなくて良いよ。俺も勝手に勘違いしてごめんね?」
ハルはそう言って優しく笑ってくれた。
「ごめ…」
「もう良いってば。あ、じゃあ、今から入るっていうのはどうかな?」
再度謝ろうとした俺の言葉を遮ったハルは、そんな嬉しい提案をしてくれた。
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。