104 / 1,490
103.異世界の温泉は
しおりを挟む
ハルの嬉しい提案に、俺は速攻で飛びついた。そうだよ。今から入れば良いんだよ。
ウキウキですぐに着替えを用意しようとしたけど、何故か提案してくれたハル本人に止められてしまった。
「待って、アキト」
「え?」
「この世界の温泉は初めてなんだし、分からないことがあったら困るよね?一度一緒に浴室を見にいかない?」
んーそう言われると確かにそうだな。ハルらしい気遣いに感謝の言葉を伝えつつ、俺たちは二人で一緒に浴室へと向かった。
「ここ?」
「そうだよ」
部屋の壁にあったシンプルなドアを開ければ、そこには脱衣所らしき場所があった。
作り付けの棚には、お洒落なカゴがいくつか並べて置いてある。そこに着替えを入れるんだって。その隣にはタオルとして使うための綺麗な布も、何枚かまとめて置いてあった。連泊の時は受付に持っていけば替えてもらえるらしい。
「ここの説明はそれぐらいかな」
ハルの言葉に頷きながら、俺はもう一つのドアをじっと見つめていた。あのドアの向こうが浴室ってことだよね。ワクワクしながらハルを見上げれば、頷いてから手の動きだけでどうぞと促してくれた。許可がでたので開けたいと思います。俺は弾むような足取りで、もう一つのドアへと近づいていった。
「アキト、嬉しそうだね」
「うん。さっきからワクワクしてる」
そーっとドアを開くと、まず流れる水音が聞こえてくる。
期待に胸を膨らませながら覗き込むと、そこにはカラフルなタイルで彩られた大きな浴槽があった。壁にある魔法陣から流れ続けている乳白色のお湯が、柔らかく水面を揺らしている。
「わー想像以上に温泉っぽい!」
「気に入った?」
「すっごく気に入った!」
浴室内の壁もシンプルな白色なんだけど、浴槽だけは色んな色のタイルが使われてるので目に楽しい。見慣れたシャワーの魔道具もあるから、これで体を流すのかな。
「トルマルの地下に湧いている温泉がいくつかあってね、ここはそこから魔道具を使ってお湯をひいてるんだ」
「魔道具でひいてるの?」
「そうだよ。溢れたお湯はあの床の隅にある魔道具で排水してるんだ」
ハルが指差した所を見てみれば、確かにそこに魔法陣が刻まれたタイルがあった。溢れたお湯は、その魔法陣に吸い込まれていくみたいだ。
ここは浄化以外の手を入れてないのが自慢なんだって。異世界にも源泉かけ流しっていう概念があるんだな。というか、もしかしたらこれも異世界人がもたらしたものだったりするのかな。
備え付けの備品や魔道具の使い方まで、ハルはきっちりと全部説明してくれた。
「これで、分からないことは無いかな?」
「うん、多分無いと思う。ありがと」
「どういたしまして」
部屋に戻ると、ハルはテーブルの椅子にきっちりと座りなおした。
「俺はここで海を見てるから、ゆっくりしてきて」
「うん、じゃあ行ってくるね」
「うん、湯あたりだけはしないように気をつけてね」
優しい声で言ってくれるハルの背中を、思わず俺はじっと見つめてしまった。せっかく温泉がある宿なんだからハルも入れたら良いのにな。
まあ、もし入れたとしても、さすがに一緒に入ろうなんてとても言えないけど。意識してない友人なら気楽に誘えるけど、好きな人と一緒に温泉なんてきっと心臓が持たないもんな。
そんな事をつらつらと考えながら、俺は着替えを抱えて脱衣所へと足を進めた。
この世界に来てからはずっと、浄化魔法とシャワーみたいな魔道具だけでしのいできたから本当に久々の入浴だ。しかも入浴剤とかじゃなくて、源泉かけ流しの温泉だ。これってすごい贅沢だよな。
体をさっと洗ってからすぐに湯舟に浸かると、ふうーと思わず大きな息が漏れた。熱すぎない温度で、俺の好みにぴったりと合ってる。乳白色のお湯は肌ざわりも良くて、自然と笑顔になってしまう。だらしない顔をしてるだろうけど、誰も見てないからまあ良いか。
ああ、どんどん体の力が抜けていく。体の疲れとか色んなものが、お湯に溶けだしてるみたいだ。久しぶりのお風呂が温泉とか、幸せすぎる。
念願の入浴をしみじみと噛み締めながら、俺はのんびりと温泉を堪能した。
ウキウキですぐに着替えを用意しようとしたけど、何故か提案してくれたハル本人に止められてしまった。
「待って、アキト」
「え?」
「この世界の温泉は初めてなんだし、分からないことがあったら困るよね?一度一緒に浴室を見にいかない?」
んーそう言われると確かにそうだな。ハルらしい気遣いに感謝の言葉を伝えつつ、俺たちは二人で一緒に浴室へと向かった。
「ここ?」
「そうだよ」
部屋の壁にあったシンプルなドアを開ければ、そこには脱衣所らしき場所があった。
作り付けの棚には、お洒落なカゴがいくつか並べて置いてある。そこに着替えを入れるんだって。その隣にはタオルとして使うための綺麗な布も、何枚かまとめて置いてあった。連泊の時は受付に持っていけば替えてもらえるらしい。
「ここの説明はそれぐらいかな」
ハルの言葉に頷きながら、俺はもう一つのドアをじっと見つめていた。あのドアの向こうが浴室ってことだよね。ワクワクしながらハルを見上げれば、頷いてから手の動きだけでどうぞと促してくれた。許可がでたので開けたいと思います。俺は弾むような足取りで、もう一つのドアへと近づいていった。
「アキト、嬉しそうだね」
「うん。さっきからワクワクしてる」
そーっとドアを開くと、まず流れる水音が聞こえてくる。
期待に胸を膨らませながら覗き込むと、そこにはカラフルなタイルで彩られた大きな浴槽があった。壁にある魔法陣から流れ続けている乳白色のお湯が、柔らかく水面を揺らしている。
「わー想像以上に温泉っぽい!」
「気に入った?」
「すっごく気に入った!」
浴室内の壁もシンプルな白色なんだけど、浴槽だけは色んな色のタイルが使われてるので目に楽しい。見慣れたシャワーの魔道具もあるから、これで体を流すのかな。
「トルマルの地下に湧いている温泉がいくつかあってね、ここはそこから魔道具を使ってお湯をひいてるんだ」
「魔道具でひいてるの?」
「そうだよ。溢れたお湯はあの床の隅にある魔道具で排水してるんだ」
ハルが指差した所を見てみれば、確かにそこに魔法陣が刻まれたタイルがあった。溢れたお湯は、その魔法陣に吸い込まれていくみたいだ。
ここは浄化以外の手を入れてないのが自慢なんだって。異世界にも源泉かけ流しっていう概念があるんだな。というか、もしかしたらこれも異世界人がもたらしたものだったりするのかな。
備え付けの備品や魔道具の使い方まで、ハルはきっちりと全部説明してくれた。
「これで、分からないことは無いかな?」
「うん、多分無いと思う。ありがと」
「どういたしまして」
部屋に戻ると、ハルはテーブルの椅子にきっちりと座りなおした。
「俺はここで海を見てるから、ゆっくりしてきて」
「うん、じゃあ行ってくるね」
「うん、湯あたりだけはしないように気をつけてね」
優しい声で言ってくれるハルの背中を、思わず俺はじっと見つめてしまった。せっかく温泉がある宿なんだからハルも入れたら良いのにな。
まあ、もし入れたとしても、さすがに一緒に入ろうなんてとても言えないけど。意識してない友人なら気楽に誘えるけど、好きな人と一緒に温泉なんてきっと心臓が持たないもんな。
そんな事をつらつらと考えながら、俺は着替えを抱えて脱衣所へと足を進めた。
この世界に来てからはずっと、浄化魔法とシャワーみたいな魔道具だけでしのいできたから本当に久々の入浴だ。しかも入浴剤とかじゃなくて、源泉かけ流しの温泉だ。これってすごい贅沢だよな。
体をさっと洗ってからすぐに湯舟に浸かると、ふうーと思わず大きな息が漏れた。熱すぎない温度で、俺の好みにぴったりと合ってる。乳白色のお湯は肌ざわりも良くて、自然と笑顔になってしまう。だらしない顔をしてるだろうけど、誰も見てないからまあ良いか。
ああ、どんどん体の力が抜けていく。体の疲れとか色んなものが、お湯に溶けだしてるみたいだ。久しぶりのお風呂が温泉とか、幸せすぎる。
念願の入浴をしみじみと噛み締めながら、俺はのんびりと温泉を堪能した。
520
あなたにおすすめの小説
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
転生執事は氷の公爵令息の心を溶かしたい【短編】
堀川渓
BL
事故で命を落とし、目覚めたそこはーー生前遊んでいた女性向け恋愛ゲームの世界!?
しかも最推し・“氷の公爵令息”セルジュの執事・レナートとして転生していてーー!!
短編/全10話予定
捨てられた花屋のオメガは、雨の日に現れたスパダリ社長に溺愛される~抑制剤をやめたら、運命の番に捕まりました~
水凪しおん
BL
花屋『フルール・リリエン』で働くオメガの藍沢湊は、かつて家柄を理由に番(つがい)に捨てられたトラウマから、アルファを頑なに拒絶して生きてきた。
強力な抑制剤でフェロモンを隠し、ひっそりと暮らす湊。しかしある雨の日、店に現れたIT企業社長のアルファ・橘蓮に見初められてしまう。
「この花、あなたに似ている」
毎日店に通い詰め、不器用ながらも真っ直ぐな愛を注ぐ蓮。その深い森のような香りに、湊の閉ざされた心と、抑え込んでいた本能が揺さぶられ始めて――?
傷ついたオメガ×一途で完璧なスパダリ社長。
雨上がりの紫陽花のように涙に濡れた恋が、あたたかな陽だまりに変わるまでの、救済と溺愛のオメガバース。
※この作品には、性的描写の表現が含まれています。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】この契約に愛なんてないはずだった
なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。
そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。
数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。
身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。
生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。
これはただの契約のはずだった。
愛なんて、最初からあるわけがなかった。
けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。
ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。
これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。
異世界転移した先は陰間茶屋でした
四季織
BL
気が付いたら、見たこともない部屋にいた。そこは和洋折衷の異世界で、俺を拾ってくれたのは陰間茶屋のオーナーだった。以来、俺は陰間として働いている。全くお客がつかない人気のない陰間だけど。
※「異世界に来た俺の話」と同じ世界です。
※謎解き要素はありません。
※ミステリー小説のネタバレのようなものがありますので、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる