生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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112.気になる幽霊

すみません。1話飛ばしてしまっていたので112話の内容が変わってます。
教えて下さった返信不要の方、ありがとうございました!


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 快調に走ってきた馬車が、徐々に速度を落としていく。

「お、そろそろ休憩かな」
「みたいですね」

 馬車が完全に停まると、みんな慣れた様子でぞろぞろと降りていく。俺も鞄を背負ってすぐに後に続いた。それぞれがバラバラに散っていくのを見ながら、俺は近くの切り株に腰を下ろした。

「ヨウ、お疲れ様」

 不意に聞こえてきた御者さんの声に視線を向ければ、ヨウは嬉しそうに食事を始める所だった。俺も何か食べておくかな。そう思って鞄から干し魚を取り出したら、すごい勢いでハルに止められた。

「アキト、そのままなら良いんだけど、もし火魔法で温めるつもりならもう少し離れた方が良いよ」

 一体何から離れるんだろうと軽く首を傾げれば、ハルはすぐに説明してくれた。何でもウマは近くで魔法を発動すると、攻撃されるかもと身構えるらしい。ヨウを怖がらせるつもりはかけらも無い俺は、急いで少し離れた森の近くまで移動した。

「うん、ここまでくれば大丈夫」

 ハルの許可を得てから、俺は火魔法を発動して干し魚をあぶった。驚いたのはこの距離でも、ヨウが食事を止めてこちらを見た事だ。本当に魔法に反応するんだな。あぶり終わって火が消えると、興味をなくしたように食事を再開していた。

「ハル、教えてくれてありがとう」
「いいんだ。ウマの前では気をつけてね」
「うん、分かった」

 がぶりとかじりついた干し魚は、そのまま食べるよりもやっぱり美味しかった。あーこれライスと一緒に食べたいやつだ。今度、黒鷹亭でライスと一緒に食べてみよう。そんなことを考えていると、ふと森の中に気になる人影が見えた。

「ハル、あの人見える?」
「見える。あれは霊体だな」
「だよね?何か寂しそうで、すごく気になるんだけど」

 女性の霊体は、何をするでもなくただ森の中に佇んでいる。その背中が何だかすごく寂しそうに見えた。

「あの雰囲気からして危険な霊じゃないと思うんだけど…時間が無いから無理かな?」

 出発を遅らせて、馬車の乗客に迷惑をかけたくは無い。どうしようと口にすれば、黙り込んでいたハルはふうと大きく息を吐いた。

「今は休憩中だから、ここで途中下車すると伝えれば時間は問題無いよ」
「あ、そっか!さすがハル」

 この場所からなら、もう徒歩でも今日中に帰れるぐらいの距離なんだって。これで時間の問題は解決だ。すぐに御者さんに声を掛けに行こうとした俺を、ハルは呼び止めた。

「危ない事に関わって欲しくは無いんだけど…俺もアキトの優しさで助けてもらった身だから強くは言えない」

 急にまじめな顔になったハルは、俺の目をじっと見据えてきた。

「もし危険があると思ったら、まずは逃げること。約束できる?」
「うん、約束する」
「じゃあ良いよ。行こう」



 御者さんに近づいた俺は、乗車券を差し出した。

「すみません、俺ここで降ります」
「え、こんな何もないとこで、一人で降りるのかい?」

 心配そうな御者さんに何て言えば良いのか悩んでしまう。ハルがいるから一人じゃないし、そこに幽霊がいて気になるので降りますとは言えないもんな。

「アキト、ちょっと珍しい素材がありそうな森だからって言えば良いんだよ」
「ちょっと珍しい素材がありそうな森だから」
「ああ、そういうことか、冒険者だもんな。気をつけてな」

 御者さんはあっさりとそう答えてくれた。ここまで運んでくれたヨウにもきっちりとお礼を言って、乗客たちにもここで降りることを伝えて回った。

 残念がってくれる人や引き留めてくれる人もいたけど、ちょっと珍しい素材がありそうな森だからと伝えれば、冒険者だもんなと全員が納得してくれたのには驚いた。

 まだ休憩中の皆に手を振って、俺はハルと二人で森に向かって歩き出した。

「なあ、ハル。冒険者だもんなってどういう意味?」
「未知のものがありそうと思ったら、飛び出していくのが冒険者だからな」
「ああ、そういう意味か」
「あの言い訳は色んな場面で使えるぞ」
「分かった、ちゃんと覚えておくね」

 俺は隣を歩くハルを見上げて、悪戯っぽく笑いかけた。
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