生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

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126.出発準備

「それじゃあ、明日」
「はい、よろしくお願いします」

 ルセフさんの言葉にお辞儀を返すと、穏やかな笑みが返ってきた。

「遅刻するなよー」
「しません!」

 ニヤニヤと笑うウォルターさんのからかいに、俺は即答で答えた。 

「いや、それウォルターにだけは、言う権利ないだろ」

 ファリーマさんのつっこみに、ウォルターさんはえーと声を上げた。

「遅刻はしてないだろ?」
「でも寝坊はしてるよな、しょっちゅう」
「明日も俺が起こすから大丈夫だよ」

 笑顔のブレイズの言葉を聞いてウォルターさんは頼んだと笑い出し、ルセフさんはそんな二人を見つめてふうとため息を吐いた。

「こんな奴らだけど、明日からよろしくな」
「こちらこそ」
「アキト、また明日な!」

 わいわいと見送ってくれる皆に、控え目に手を振って別れた。また明日って言葉が何だかすごく嬉しい。

「面白いチームだね」

 楽しそうなハルの言葉には同意しかないので、俺も小さく頷いた。



 時刻は既に夕方、明日の待ち合わせは早朝だ。依頼のための買い出しが必要無いならと、俺はそのまま黒鷹亭に戻ることに決めた。

「帰ったら色々話したい事もあるからね」

 なんて思わせぶりな事を言うからちょっと緊張しながら部屋に入ったんだけど、ハルが話し出したのは昨日の話ではなかった。いや、まあ、ちょっと落ち着いてきた今になってから、昨日の話を蒸し返されても困るんだけどさ。

「アキトは調査依頼初めてだから、色々覚えておいた方が良い事があるんだ」

 そう切り出したハルは、調査依頼の内容についてはもちろん、チームで行動する際の注意点とか、野宿の仕方とか色んなことを教えてくれた。

 俺の事を考えてわざわざ真面目に説明してくれてるんだから、真面目に聞かないと失礼だ。そう思って質問を挟みながらハルの講義を受けてたら、気づいたらいつもの俺たちの距離感に戻ってた。

 ちょっとぐらい意識して欲しかった気もするけど、気まずくなったり嫌われたりするよりはマシだ。

 チームでの依頼を受けて良かったと、まだ出発前なのに既にそう思ってしまった自分にちょっと笑ってしまった。



「…きて、起きて、アキト」

 ハルの声にうっすらと目を開いた俺は、今日の予定を思い出すなり、慌てて飛び起きた。今日は初めての調査依頼で、しかも初めてのチームでの依頼。何があっても遅刻するわけにはいかない。

「おはよう、アキト」
「ハル、おはよう。今日も起こしてくれてありがとう」

 素直にお礼を言えば、ハルはどういたしましてと柔らかく笑ってくれた。

 食堂での朝食を済ませた俺は、部屋に戻るとまずは冒険者装備を身に着けた。採取手袋もきっちりと魔道収納鞄の横にぶら下げる。

 装備がばっちり整えば、今度は荷物の確認だ。いつもは夜のうちに持ち物を揃えたら、忙しい朝に確認なんてしないんだけど、今日は初めての調査依頼だから念には念を入れたかった。

「ハル、昨日も見たのに、確認ばっかりって思う?」

 ふと気になって、隣に立っているハルにそう聞いてみる。

「思わないよ。初めての依頼ならそれぐらいの緊張感がある方が絶対に良いからね」
「はー緊張感か」
「そうそう。むしろ言われる前に荷物を再確認しているアキトはさすがだと思うよ」

 ほんの思いつきの質問だったのに、満面の笑みで褒めちぎられてしまった。顔から火が出そうだ。これだからハルは困るんだよななんて考えながら、俺は魔道収納鞄に手を入れる。

 この前買い足した採取用の袋はまだたくさんある。ハルに言われて用意した調査の内容を書きとめるための新しいノートもばっちり入っている。

「テントと寝袋も持った?」
「うん、ちゃんと持ったよ」

 忘れ物も無いみたいだし、朝ごはんも食べた。準備万端だ。
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