生まれつき幽霊が見える俺が異世界転移をしたら、精霊が見える人と誤解されています

根古川ゆい

文字の大きさ
135 / 1,561

134.理論派と感覚派

 頼まれた通りに火魔法を使っただけなのに、予想外の不思議な反応をされた俺は、小さく首を傾げた。今は焚火のパチパチという音と、ブレイズの手を叩く音だけが周りに響いている。

「あの」

 声を出そうとした瞬間、俺の両肩ががっしりと掴まれた。

「アキト!」

 気づけば目の前にいたのは、ファリーマさんだった。あれ、テントを組み立ててるから手が離せないって言ってたのに、なんでここに立ってるんだろう。ちらりと見てみれば、組み立て途中のテントは手放され地面に倒れこんでいた。

「今の火魔法はどういう計算式で放ったのか、俺に教えてくれないか?」
「計算はしてませんけど」
「なんだって!?計算してないって事は、アキトは感覚派なのか?」
「はい、そうです」

 ファリーマさんは俺の返事を聞くなり、目の色を変えて更に詰め寄ってきた。顔の距離が近い。

「俺は理論派だから魔力量を計算して威力を変えてるんだけど、感覚派の人は一体どうやって威力を変えてるんだい?」

 わくわくと楽しそうなファリーマさんからそっと視線をずらして、俺は困った顔をしてハルに意見を求めた。説明する事自体は別に良いんだけど、ドロシーさんに教えてもらった事を勝手に人に話して良いものなのかが分からない。

「感覚派じゃないと意味が無いから広まってないだけで、特に隠されてる理論なわけじゃ無いから話しても大丈夫だよ」

 にっこり笑顔でそう言い切ってもらえたから、俺は安心して口を開いた。

「俺みたいな感覚派は、想像するものによって威力を変えてます」
「想像…えーと、例えば?」
「火魔法だったら、種火、焚火、かがり火って感じですね」
「はーなるほど!ちょっと俺もやってみて良いか?」

 そう言うなりファリーマさんは俺の両肩から手を離すと、じっと焚火を見つめながら集中し始めた。見た目では分からないけど、きっと今ファリーマさんは魔力を練り上げてるんだろうな。さっきハルは感覚派以外には意味が無いって言ってたけど、どんな結果になるんだろう。

「待て、魔法馬鹿」

 どんな結果になるのか興味深く見守っていたけど、ルセフさんがさっと止めに入った。

「何だよ、今良い所なのに!」
「おまえには他にやる事があるだろうが!あの途中で放置した俺のテントを、ちゃんと組み立てて来い」
「は?今やるべき事なんて魔法の実験しかないだろ!感覚派の奴ってかなり珍しいんだよ?その考え方を知れたんだから、実験しないと駄目だろ!」

 実験がしたいんだとこどものように駄々をこねるファリーマさんを、ルセフさんはくいっと眼鏡を押し上げて冷ややかな目で睨みつけた。

「…ファリーマ、晩飯はいらないって事か?」
「う……あーもう分かったよ。すぐやります!」

 不本意そうな顔をしながらも、ファリーマさんはテントを組み立てに戻っていった。

「アキト、火ありがとうな」
「あ、えーとどういたしまして」
「あと魔法馬鹿がすまない。つっこんだ事を聞いたな」
「いえ、俺もちょっと理論派の人がそのやり方を知ったらどうなるのか気になって、見入っちゃってました」
「嫌じゃないなら良かった。迷惑じゃなければ晩飯後にでもかまってやってくれ」

 苦笑と共に告げられた言葉で、不意に気づいた。止めに入ってくれたのって、テントとか食事の準備とかが理由なわけじゃなかったんだ。俺が嫌だと思ってないか確認するために、止めに入ってくれたんだ。すごい人だな。

「気遣いありがとうございます」

 ルセフさんは照れくさそうに手を振った。

「じゃあ俺は料理に取り掛かるから、ブレイズと座っててくれて良いからな」
「手伝える事があったら言ってくださいね」
「ああ、今日はもう下ごしらえまでしてあるから、また頼むわ」
「はいっ!」
感想 377

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される

向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。 アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。 普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。 白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。 そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。 剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。 だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。 おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。 俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。 ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

美形×平凡の子供の話

めちゅう
BL
 美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか? ────────────────── お読みくださりありがとうございます。 お楽しみいただけましたら幸いです。 お話を追加いたしました。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください

わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。 まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!? 悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。