138 / 1,561
137.寝る前の大事な準備
じわじわと暗くなっていく野営地の中を、俺はブレイズの持った松明の灯りを頼りに歩いていた。
ブレイズと二人で、魔物避けの設置という大事な仕事を任されたからだ。
当たり前に魔物が存在しているこの世界では、野営をする際には絶対に欠かせないものがある。それが俺が今手にもっている、魔物避けの束だった。
見た目はただの薬草を無造作に束ねたものに見えるんだけど、実は薬師と魔法使いが加工をしたもので、一晩かけてじっくりと燃えるんだって。これを野営地の四隅に配置して火をつければ、ある程度の強さまでの魔物は寄って来れなくなるそうだ。
「そんな便利なものがあるんだ」
「うん、でもあまり広範囲だと効果が薄れるし、移動しながら使ってもあんまり意味が無いらしいよ」
「そうなの?」
そんな便利なものがあるなら、採取中も使えば良いのにって思ったんだけど、やっぱりそれは無理なのか。
「野営地は、広さもだいたい一緒なんだ」
ブレイズに言われて視線を巡らせると、遠くから見守っていたらしいルセフさんが手を振ってくれた。俺たちも二人で手を振り返す。ウォルターさんとファリーマさんは、今はテントの裏側で夕食の後片付け中だから姿は見えなかった。
「それはこの魔物避けのため?」
「うん、だからどの野営地でも、四隅に置けば大丈夫だよ」
ルセフさんが二人で魔物避けを頼むって言ってくれたのは、こうやって俺に学ばせるためだったのかな。ブレイズも張り切って説明してくれていて、なんだか胸がほっこりした。
「ここだね、アキト置いてみて」
ブレイズが指差したのは、少し凹んだ剥き出しの地面だった。分かりやすいように凹ませてくれてるのが、魔物避け置き場なんだって。
魔物避けをそっと地面に置くと、ブレイズは片手に持っていた松明の火を近づけた。無造作に近づけたように見えるのに、端っこだけに火がついているのが不思議でまじまじと見つめてしまう。
「加工の段階で、端にしか火が着かないようになってるんだよ」
ハルがそう教えてくれたので、俺の疑問はあっさりと解消された。
「全然臭くないんだね…?」
思わずそう口にした俺に、ブレイズは楽し気に笑い出した。ハルも遠慮なく声を上げて笑っている。なんだよ、魔物が嫌いな匂いって言うから。
「人には感じ取れない匂いなんだ」
「そうなんだ」
「うん、そんなに臭かったら野営できないよ」
「根性で我慢するのかと思って」
素直な感想だったのに、ブレイズとハルはまた楽しそうに笑い出してしまった。
「ブレイズ、笑ってないで次行くよ」
「ふっ…くく…はーい」
俺はいつまでも笑い続けている二人を置き去りにして、次の隅に向かって歩き出した。
四隅に魔物避けの設置は終わったけれど、これで安心して寝れるというわけでは無い。魔物避けが効かない魔物が、夜のうちにやって来る可能性も0では無い。
「だから、見張りは二人ずつで交代でやるんだ」
「なるほど」
本とかで読んだことのある、寝ずの番ってやつだな。
「今日はアキトも入れて五人だから、俺が一人、アキトとウォルター、ブレイズとファリーマで3組つくるよ」
「待ってくれ、なんで俺とアキトじゃないんだよ!」
食後に時間を取って魔法談義をしたのに、どうやらまだファリーマさんは話したりないみたいだ。
「アキトとお前を組ませたら、周りが目が覚める勢いで話しかけまくるし、思いついたらその場で魔法の実験始めるだろう。だから却下だ」
眼鏡越しの目が笑ってないのを見てとったのか、ファリーマさんはしぶしぶ引き下がった。
「今日はまずアキトとウォルターから頼めるか?次がブレイズとファリーマ、朝飯の仕込みをしたいから俺が最後で良いか?」
「分かった。二時間半で良いのか?」
「ああ、頼んだ」
「あーアキトと話したかったなー明日まだ魔法談義してくれよな?」
「はい、空き時間があれば是非!」
「じゃあ俺も先に寝るね。アキト、また明日」
ブレイズと二人で、魔物避けの設置という大事な仕事を任されたからだ。
当たり前に魔物が存在しているこの世界では、野営をする際には絶対に欠かせないものがある。それが俺が今手にもっている、魔物避けの束だった。
見た目はただの薬草を無造作に束ねたものに見えるんだけど、実は薬師と魔法使いが加工をしたもので、一晩かけてじっくりと燃えるんだって。これを野営地の四隅に配置して火をつければ、ある程度の強さまでの魔物は寄って来れなくなるそうだ。
「そんな便利なものがあるんだ」
「うん、でもあまり広範囲だと効果が薄れるし、移動しながら使ってもあんまり意味が無いらしいよ」
「そうなの?」
そんな便利なものがあるなら、採取中も使えば良いのにって思ったんだけど、やっぱりそれは無理なのか。
「野営地は、広さもだいたい一緒なんだ」
ブレイズに言われて視線を巡らせると、遠くから見守っていたらしいルセフさんが手を振ってくれた。俺たちも二人で手を振り返す。ウォルターさんとファリーマさんは、今はテントの裏側で夕食の後片付け中だから姿は見えなかった。
「それはこの魔物避けのため?」
「うん、だからどの野営地でも、四隅に置けば大丈夫だよ」
ルセフさんが二人で魔物避けを頼むって言ってくれたのは、こうやって俺に学ばせるためだったのかな。ブレイズも張り切って説明してくれていて、なんだか胸がほっこりした。
「ここだね、アキト置いてみて」
ブレイズが指差したのは、少し凹んだ剥き出しの地面だった。分かりやすいように凹ませてくれてるのが、魔物避け置き場なんだって。
魔物避けをそっと地面に置くと、ブレイズは片手に持っていた松明の火を近づけた。無造作に近づけたように見えるのに、端っこだけに火がついているのが不思議でまじまじと見つめてしまう。
「加工の段階で、端にしか火が着かないようになってるんだよ」
ハルがそう教えてくれたので、俺の疑問はあっさりと解消された。
「全然臭くないんだね…?」
思わずそう口にした俺に、ブレイズは楽し気に笑い出した。ハルも遠慮なく声を上げて笑っている。なんだよ、魔物が嫌いな匂いって言うから。
「人には感じ取れない匂いなんだ」
「そうなんだ」
「うん、そんなに臭かったら野営できないよ」
「根性で我慢するのかと思って」
素直な感想だったのに、ブレイズとハルはまた楽しそうに笑い出してしまった。
「ブレイズ、笑ってないで次行くよ」
「ふっ…くく…はーい」
俺はいつまでも笑い続けている二人を置き去りにして、次の隅に向かって歩き出した。
四隅に魔物避けの設置は終わったけれど、これで安心して寝れるというわけでは無い。魔物避けが効かない魔物が、夜のうちにやって来る可能性も0では無い。
「だから、見張りは二人ずつで交代でやるんだ」
「なるほど」
本とかで読んだことのある、寝ずの番ってやつだな。
「今日はアキトも入れて五人だから、俺が一人、アキトとウォルター、ブレイズとファリーマで3組つくるよ」
「待ってくれ、なんで俺とアキトじゃないんだよ!」
食後に時間を取って魔法談義をしたのに、どうやらまだファリーマさんは話したりないみたいだ。
「アキトとお前を組ませたら、周りが目が覚める勢いで話しかけまくるし、思いついたらその場で魔法の実験始めるだろう。だから却下だ」
眼鏡越しの目が笑ってないのを見てとったのか、ファリーマさんはしぶしぶ引き下がった。
「今日はまずアキトとウォルターから頼めるか?次がブレイズとファリーマ、朝飯の仕込みをしたいから俺が最後で良いか?」
「分かった。二時間半で良いのか?」
「ああ、頼んだ」
「あーアキトと話したかったなー明日まだ魔法談義してくれよな?」
「はい、空き時間があれば是非!」
「じゃあ俺も先に寝るね。アキト、また明日」
あなたにおすすめの小説
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
料理の上手さを見込まれてモフモフ聖獣に育てられた俺は、剣も魔法も使えず、一人ではドラゴンくらいしか倒せないのに、聖女や剣聖たちから溺愛される
向原 行人
ファンタジー
母を早くに亡くし、男だらけの五人兄弟で家事の全てを任されていた長男の俺は、気付いたら異世界に転生していた。
アルフレッドという名の子供になっていたのだが、山奥に一人ぼっち。
普通に考えて、親に捨てられ死を待つだけという、とんでもないハードモード転生だったのだが、偶然通りかかった人の言葉を話す聖獣――白虎が現れ、俺を育ててくれた。
白虎は食べ物の獲り方を教えてくれたので、俺は前世で培った家事の腕を振るい、調理という形で恩を返す。
そんな毎日が十数年続き、俺がもうすぐ十六歳になるという所で、白虎からそろそろ人間の社会で生きる様にと言われてしまった。
剣も魔法も使えない俺は、少しだけ使える聖獣の力と家事能力しか取り柄が無いので、とりあえず異世界の定番である冒険者を目指す事に。
だが、この世界では職業学校を卒業しないと冒険者になれないのだとか。
おまけに聖獣の力を人前で使うと、恐れられて嫌われる……と。
俺は聖獣の力を使わずに、冒険者となる事が出来るのだろうか。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
【完結】転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して二年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜
ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。
真面目に生きてきた魔法使いモーネ。
ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。
しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。
回復魔法を使えば何かが増え、
補助魔法を使えば騎士団が浮き、
気づけば庭はプリンになります。
——本人はちゃんとやっています。
巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。
さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。
これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。
お話を追加いたしました。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。