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174.【ハル視点】アコの果実
アコの果実の前にまずは木を探す必要があるため、最初はギザギザの葉を探す所から始まった。この森の厄介な所は、果実や木の実が実っている木が多い事だ。冒険者が少ないからか、どうしても素材で溢れている。
「これも違う」
「違うね」
「トゲトゲだけど裏面のトゲが無いから…これもアコの木じゃない」
「うん、そうだね」
さっきから連続不正解なのにそれでも真面目に探し続けているアキトに、少しぐらいは気分転換をしてもらいたい。そう考えた俺は、ついさっきアキトが違うと断言した木を指差した。
「あ、でもこれは火を通すと甘くなるシュマの果実だよ」
「美味しい?」
「ああ、アキトは好きな味だと思う」
俺には少し甘すぎるけど、アキトは焼き菓子も美味しく食べていたから好きだと思う。
「じゃあいくつか採って行くよ」
期待通り、アキトは嬉しそうにシュマの果実を採取し始めた。鼻歌を歌いそうな雰囲気からして、気分転換は成功したみたいだな。
きちんと採取用袋にしまわれていくシュマの果実を何となく見つめていると、不意にアキトが口を開いた。
「そういえば図鑑には書いてなかったけど、アコの果実って美味しいの?」
その言葉があまりに衝撃的で、俺は大きく目を見開いた。図鑑に記載が無いのは、書く必要が無いぐらい誰もがあの味を知っているからだ。
「アコの果実が…美味しい???」
何とか俺がひねり出せたのは、そんな言葉だけだった。
「えーと、食用可なんだよね?」
「食べてももちろん害はないよ。アコの果実は香りはすごく甘いんだけど…」
そう香りだけはすごく甘いんだ。香りだけは。
「そのまま食べたら後悔するぐらい苦い」
「そうなんだ!あ、でもペースト状にして販売してるなら、ペースト状にしたら苦味が消えるとか?」
アコのペーストを知らないアキトは、無邪気にそう口にした。
そうだったらどれだけ良かったか。ペースト状にしても苦味は減らないどころかむしろ増える。それなのにあの甘い香りは何故か消えないから、余計に頭の中が混乱してしまう。
あのものすごい苦味を思い出した俺は、くしゃりと顔を歪ませた。
「むしろ更に苦くなるよ…思い出しただけでこんな顔になるぐらいにはね」
そんなものがどうして常設依頼なのと聞かれた時には、俺は大いに慌ててしまった。ここでアキトの誤解を解けなかったら、異世界って変わってるななんて思われてしまうかもしれない。そう思った俺は必死に説明をして、何とかアキトを納得させる事に成功した。
「アキトがもし興味があるなら、トライプールの市場で売ってるよ?」
食べてみないかと口にした俺に、アキトは満面の笑みを浮かべて遠慮しますと叫んだ。
この森に来てから数時間が経ってしまったけれど、アキトは飽きた様子もなく集中して作業に取り組んでいる。遠目に一本ずつの木を確認し、第一条件であるギザギザの葉を見つけたら、すかさず近づいていって詳しく調べるという作業の繰り返しだ。
何度も何度も不正解を重ねながら、それでもアキトは楽しそうだ。
「これも違う」
「違うね」
「次行こ、次」
明るくそう言うと、アキトはぐるりと周囲を見渡した。気になる木でもあったのか、アキトはすぐに歩き出した。
ひょいっと目の前にあった葉の裏側を覗き込んだアキトは、そのままその場で固まってしまった。何かあったんだろうかと心配になるぐらい、何の反応も無い。
「アキト、どうかした?」
そっと後ろから声をかければ、アキトは慌てて両手を振ってみせた。
「あ、いや、裏面にうっすらトゲがあったから。心配させてごめん」
ああ、ずっと探していた条件にあてはまったからびっくりしただけか。何も無かったなら良かったと思いつつ、俺もそっと隣に並んで一緒に葉の裏側を確認してみた。
うん、これは第二条件合格だな。きちんとトゲが並んでいる。
アキトはきちんと手袋をはめてから、今度は果実に手を伸ばした。ルセフのキノコ騒動を見たからか、きちんと毒や麻痺への対策を取ったみたいだ。
アキトは一番近くにあった果実をもぎとると、そっと鼻を近づけた。
「すごく甘い香りだ」
嬉しそうなアキトの表情からして、本当に甘い良い香りがしているんだろうな。これで第三条件も合格だ。
アキトはおもむろに果物ナイフを取り出すと、その果実を二つに切り分けた。異世界で言うものくろな世界でも、実際の色が違えば微妙に濃淡は違ってくる。俺が何も指示しなても自分でそこに辿り着いたアキトに、誇らしい気持ちが湧いてくる。
さすがはアキトだと褒めたくて仕方がないけれど、今はアキトの集中の邪魔をすべきではない。俺はぐっと我慢しながら、アキトの横から果実の断面を覗き込んだ。
「果皮と果肉の色が違う」
ああ、本当だ。これで全ての条件が一致したな。
「ハル、これがアコの木だと思う!」
アキトはワクワクしながら、俺の言葉を待っている。
「大正解だよ!さすがアキトだ!」
「やったー!」
「諦めずによく見つかるまで探したね。よくできました」
そう声をかけると、アキトはふにゃりと幸せそうな笑みを見せてくれた。
ようやく見つけたアコの木を、アキトはじっと見上げていた。
「こんなにたくさんあるけど、何個ぐらいなら買い取って貰えるかな?」
「そうだな。あまり多いと逆に買取値段が下がるかもしれないから…30個までならすぐに買い取って貰えるだろう」
「じゃあ30個までにしよう」
アキトは楽しそうに笑いながら、ひとつずつアコの果実を採取し始めた。
「これだけあるなら、一個ぐらい食べてみる?」
俺は悪戯っぽく笑いながら話しかけた。断られるとは分かっているからただの言葉遊びのようなものだ。
「食べてみないよ!」
「じゃあペーストの方にしようか」
「そっちもしない!顔くしゃくしゃになるぐらい苦いんでしょ?」
「苦くない…とはとても言えないな」
そんなくだらない会話をしている間に、無事にアコの果実の採取は完了した。
「これも違う」
「違うね」
「トゲトゲだけど裏面のトゲが無いから…これもアコの木じゃない」
「うん、そうだね」
さっきから連続不正解なのにそれでも真面目に探し続けているアキトに、少しぐらいは気分転換をしてもらいたい。そう考えた俺は、ついさっきアキトが違うと断言した木を指差した。
「あ、でもこれは火を通すと甘くなるシュマの果実だよ」
「美味しい?」
「ああ、アキトは好きな味だと思う」
俺には少し甘すぎるけど、アキトは焼き菓子も美味しく食べていたから好きだと思う。
「じゃあいくつか採って行くよ」
期待通り、アキトは嬉しそうにシュマの果実を採取し始めた。鼻歌を歌いそうな雰囲気からして、気分転換は成功したみたいだな。
きちんと採取用袋にしまわれていくシュマの果実を何となく見つめていると、不意にアキトが口を開いた。
「そういえば図鑑には書いてなかったけど、アコの果実って美味しいの?」
その言葉があまりに衝撃的で、俺は大きく目を見開いた。図鑑に記載が無いのは、書く必要が無いぐらい誰もがあの味を知っているからだ。
「アコの果実が…美味しい???」
何とか俺がひねり出せたのは、そんな言葉だけだった。
「えーと、食用可なんだよね?」
「食べてももちろん害はないよ。アコの果実は香りはすごく甘いんだけど…」
そう香りだけはすごく甘いんだ。香りだけは。
「そのまま食べたら後悔するぐらい苦い」
「そうなんだ!あ、でもペースト状にして販売してるなら、ペースト状にしたら苦味が消えるとか?」
アコのペーストを知らないアキトは、無邪気にそう口にした。
そうだったらどれだけ良かったか。ペースト状にしても苦味は減らないどころかむしろ増える。それなのにあの甘い香りは何故か消えないから、余計に頭の中が混乱してしまう。
あのものすごい苦味を思い出した俺は、くしゃりと顔を歪ませた。
「むしろ更に苦くなるよ…思い出しただけでこんな顔になるぐらいにはね」
そんなものがどうして常設依頼なのと聞かれた時には、俺は大いに慌ててしまった。ここでアキトの誤解を解けなかったら、異世界って変わってるななんて思われてしまうかもしれない。そう思った俺は必死に説明をして、何とかアキトを納得させる事に成功した。
「アキトがもし興味があるなら、トライプールの市場で売ってるよ?」
食べてみないかと口にした俺に、アキトは満面の笑みを浮かべて遠慮しますと叫んだ。
この森に来てから数時間が経ってしまったけれど、アキトは飽きた様子もなく集中して作業に取り組んでいる。遠目に一本ずつの木を確認し、第一条件であるギザギザの葉を見つけたら、すかさず近づいていって詳しく調べるという作業の繰り返しだ。
何度も何度も不正解を重ねながら、それでもアキトは楽しそうだ。
「これも違う」
「違うね」
「次行こ、次」
明るくそう言うと、アキトはぐるりと周囲を見渡した。気になる木でもあったのか、アキトはすぐに歩き出した。
ひょいっと目の前にあった葉の裏側を覗き込んだアキトは、そのままその場で固まってしまった。何かあったんだろうかと心配になるぐらい、何の反応も無い。
「アキト、どうかした?」
そっと後ろから声をかければ、アキトは慌てて両手を振ってみせた。
「あ、いや、裏面にうっすらトゲがあったから。心配させてごめん」
ああ、ずっと探していた条件にあてはまったからびっくりしただけか。何も無かったなら良かったと思いつつ、俺もそっと隣に並んで一緒に葉の裏側を確認してみた。
うん、これは第二条件合格だな。きちんとトゲが並んでいる。
アキトはきちんと手袋をはめてから、今度は果実に手を伸ばした。ルセフのキノコ騒動を見たからか、きちんと毒や麻痺への対策を取ったみたいだ。
アキトは一番近くにあった果実をもぎとると、そっと鼻を近づけた。
「すごく甘い香りだ」
嬉しそうなアキトの表情からして、本当に甘い良い香りがしているんだろうな。これで第三条件も合格だ。
アキトはおもむろに果物ナイフを取り出すと、その果実を二つに切り分けた。異世界で言うものくろな世界でも、実際の色が違えば微妙に濃淡は違ってくる。俺が何も指示しなても自分でそこに辿り着いたアキトに、誇らしい気持ちが湧いてくる。
さすがはアキトだと褒めたくて仕方がないけれど、今はアキトの集中の邪魔をすべきではない。俺はぐっと我慢しながら、アキトの横から果実の断面を覗き込んだ。
「果皮と果肉の色が違う」
ああ、本当だ。これで全ての条件が一致したな。
「ハル、これがアコの木だと思う!」
アキトはワクワクしながら、俺の言葉を待っている。
「大正解だよ!さすがアキトだ!」
「やったー!」
「諦めずによく見つかるまで探したね。よくできました」
そう声をかけると、アキトはふにゃりと幸せそうな笑みを見せてくれた。
ようやく見つけたアコの木を、アキトはじっと見上げていた。
「こんなにたくさんあるけど、何個ぐらいなら買い取って貰えるかな?」
「そうだな。あまり多いと逆に買取値段が下がるかもしれないから…30個までならすぐに買い取って貰えるだろう」
「じゃあ30個までにしよう」
アキトは楽しそうに笑いながら、ひとつずつアコの果実を採取し始めた。
「これだけあるなら、一個ぐらい食べてみる?」
俺は悪戯っぽく笑いながら話しかけた。断られるとは分かっているからただの言葉遊びのようなものだ。
「食べてみないよ!」
「じゃあペーストの方にしようか」
「そっちもしない!顔くしゃくしゃになるぐらい苦いんでしょ?」
「苦くない…とはとても言えないな」
そんなくだらない会話をしている間に、無事にアコの果実の採取は完了した。
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