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177.ハルに告げたい言葉
人の体って不思議なものだ。ついさっきまで気づいてすらいなかったのに、傷を自覚した途端に痛みが襲い掛かってくるんだから。
「っ…」
「アキトっ、しっかりして!まずは止血しよう!」
必死なハルの声を聞きながら、俺は震えの止まらない自身の手をちらりと見た。怪我のショックからか、手の震えがどうしても止められないし思ったように動かせそうに無い。こんな手じゃ、傷口を圧迫する事も出来ないじゃないか。
「手が動かないのか?」
ハルの質問に、俺は小さく頷きを返す。
「はやく血を止めないと」
ハルの視線は俺の太ももの傷に、まっすぐに向かっていた。その視線に釣られるようにちらりと傷口を見てみれば、じわじわと血が溢れ続けているのが見えた。
このまま血が出続けたら命に関わるかもしれないな。こんな事態なのに何故か冷静な頭の一部で、そんな事を考える。
「俺の手では止血も出来ない!アキト、動いてくれっ!」
今にも泣き出しそうな顔をしたハルが、悲痛な声で叫んだ。そんなことを言わせてごめんな。必死で動こうとしてみたけど、やっぱり手は動かせないみたいだ。
「無理みたいだ」
「嫌だ!アキト!」
人けの無い場所だから、偶然の助けさえも期待できそうにない。
これはもう駄目かもしれない。
素直にそう思った。もしここで死んだら、俺も幽霊になれるのかな。そしたらハルに触れられるようになったりは――しないよな。お互いに実体がないんだから、会話はできても触れ合える筈が無い。
確かに痛みを感じているのに、こうやって思考を巡らせる事ができるのは一種の興奮状態だからなんだろうか。それとも現実逃避だろうか。
「アキト…」
切ない声で名前を呼ばれただけで胸が痛んだ。幽霊になれば、たとえ触れ合う事は出来なくても、ハルと一緒にいる事はできるかな。そう考えた時にふと気づいてしまった。
俺が幽霊になってもこの世界にいられる保証なんて、どこにも無いじゃないか。俺はこの世界に迷い込んで来たんだから、霊体になった途端に元の世界に戻される可能性だってある。
そう考えてぞっとした。これほど悲しんでくれているハルを置いて、自分の霊体だけがもし元の世界に帰ってしまったら一体どうすれば良いんだろう。
異世界に来たきっかけも分かってないのに、もう一度こっちの世界に来る方法なんてきっと見つけられない。そうなってしまったら、俺はもうハルに二度と会えなくなる。
死ぬ事よりも、ハルに会えなくなる事の方が怖いと思った。
「早く止血しないと!」
「ハル」
かすれた声でそう呼びかければ、ハルはそっと俺の顔を覗き込んでくれた。
「アキト…?」
ああ、ハルの綺麗な紫色の瞳に俺が映っている。表情が今にも泣き出しそうなのがとてもつらい。
「言いたい事があるんだ」
「ああ、何だ?」
「俺さ、ハルの事がずっと好きだったんだよ」
「え…」
「恋愛対象って…意味で」
もしこれが映画のワンシーンだったら、何でこいつはこんな場面で告白するんだよって画面に向けて突っ込みを入れるだろう。せめてもうちょっとぐらいは状況を整えてから、改めて告白しろよって言いたくなると思う。
でもさ、ハルに二度と会えなくなるかもって思ったら、せめて伝えておきたくなったんだ。俺の気持ちを、ハルには知っていて欲しい。
「…っ…俺もアキトの事が好きだよ!」
「ほんと…?」
「ああ、幽霊なのに俺がアキトの恋人になりたいとずっと思ってたぐらい、アキトの事が大好きだ!」
ハルは優しいから、俺に合わせてくれただけかもしれない。そう一瞬頭を過ったけど、ハルはそんな残酷な事をする人じゃない。好意が無かったらありがとうって笑って、気持ちだけでも受け取ってくれるような人だ。
「嬉しい」
「俺も嬉しいよ…アキト、頼むから」
「何?」
「…頼むからっ死なないでっ!」
悲痛な声に胸がぎゅっと締め付けられた。
「っ…」
「アキトっ、しっかりして!まずは止血しよう!」
必死なハルの声を聞きながら、俺は震えの止まらない自身の手をちらりと見た。怪我のショックからか、手の震えがどうしても止められないし思ったように動かせそうに無い。こんな手じゃ、傷口を圧迫する事も出来ないじゃないか。
「手が動かないのか?」
ハルの質問に、俺は小さく頷きを返す。
「はやく血を止めないと」
ハルの視線は俺の太ももの傷に、まっすぐに向かっていた。その視線に釣られるようにちらりと傷口を見てみれば、じわじわと血が溢れ続けているのが見えた。
このまま血が出続けたら命に関わるかもしれないな。こんな事態なのに何故か冷静な頭の一部で、そんな事を考える。
「俺の手では止血も出来ない!アキト、動いてくれっ!」
今にも泣き出しそうな顔をしたハルが、悲痛な声で叫んだ。そんなことを言わせてごめんな。必死で動こうとしてみたけど、やっぱり手は動かせないみたいだ。
「無理みたいだ」
「嫌だ!アキト!」
人けの無い場所だから、偶然の助けさえも期待できそうにない。
これはもう駄目かもしれない。
素直にそう思った。もしここで死んだら、俺も幽霊になれるのかな。そしたらハルに触れられるようになったりは――しないよな。お互いに実体がないんだから、会話はできても触れ合える筈が無い。
確かに痛みを感じているのに、こうやって思考を巡らせる事ができるのは一種の興奮状態だからなんだろうか。それとも現実逃避だろうか。
「アキト…」
切ない声で名前を呼ばれただけで胸が痛んだ。幽霊になれば、たとえ触れ合う事は出来なくても、ハルと一緒にいる事はできるかな。そう考えた時にふと気づいてしまった。
俺が幽霊になってもこの世界にいられる保証なんて、どこにも無いじゃないか。俺はこの世界に迷い込んで来たんだから、霊体になった途端に元の世界に戻される可能性だってある。
そう考えてぞっとした。これほど悲しんでくれているハルを置いて、自分の霊体だけがもし元の世界に帰ってしまったら一体どうすれば良いんだろう。
異世界に来たきっかけも分かってないのに、もう一度こっちの世界に来る方法なんてきっと見つけられない。そうなってしまったら、俺はもうハルに二度と会えなくなる。
死ぬ事よりも、ハルに会えなくなる事の方が怖いと思った。
「早く止血しないと!」
「ハル」
かすれた声でそう呼びかければ、ハルはそっと俺の顔を覗き込んでくれた。
「アキト…?」
ああ、ハルの綺麗な紫色の瞳に俺が映っている。表情が今にも泣き出しそうなのがとてもつらい。
「言いたい事があるんだ」
「ああ、何だ?」
「俺さ、ハルの事がずっと好きだったんだよ」
「え…」
「恋愛対象って…意味で」
もしこれが映画のワンシーンだったら、何でこいつはこんな場面で告白するんだよって画面に向けて突っ込みを入れるだろう。せめてもうちょっとぐらいは状況を整えてから、改めて告白しろよって言いたくなると思う。
でもさ、ハルに二度と会えなくなるかもって思ったら、せめて伝えておきたくなったんだ。俺の気持ちを、ハルには知っていて欲しい。
「…っ…俺もアキトの事が好きだよ!」
「ほんと…?」
「ああ、幽霊なのに俺がアキトの恋人になりたいとずっと思ってたぐらい、アキトの事が大好きだ!」
ハルは優しいから、俺に合わせてくれただけかもしれない。そう一瞬頭を過ったけど、ハルはそんな残酷な事をする人じゃない。好意が無かったらありがとうって笑って、気持ちだけでも受け取ってくれるような人だ。
「嬉しい」
「俺も嬉しいよ…アキト、頼むから」
「何?」
「…頼むからっ死なないでっ!」
悲痛な声に胸がぎゅっと締め付けられた。
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