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207.目が幸せ
昨日は結局、夕食の時間以外はほとんどハルに会えなかった。書類仕事に鍛錬にと忙しそうなハルが何とか作ってくれた貴重な時間に、外出して良いかなんてとても聞けなかった。
今日は何をしようかなと考えながら起き上がると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
寝巻代わりにつかっているだぼっとした服だけど、どうせ俺に与えられた部屋まで訪問する人なんて、ハルとケルビン、先生にディエゴぐらいだ。そんな軽い気持ちで答えた俺は、ドアを開けたハルを見て息を飲んだ。
「おはよう、アキト」
いつもは無造作に下ろしているだけのふわっとした金髪が、片方だけ上げてセットしてある。片耳が見えているだけの変化で、驚くほどに男らしさが増している。
しかも着ている服がまたすごい。これぞファンタジーって感じの、かっちりした騎士団の服だ。立てえりの黒い上着には、きらびやかな金色の刺繍が所々に施されていて高級感が漂っている。腰の辺りはベルトできゅっとしぼられていて、くびれた腰が強調されている。
「…アキト?」
「………かっこいい」
見惚れていた俺がうっかり口にしたその言葉は、きっちりハルに聞こえてしまったみたいだ。ハルは嬉しそうに笑ってから、俺に近づいてくる。
「今日も起こすつもりだったのに、用意に手間取って…起こせなくてごめんね」
「え、いや、そんなの…」
ハルがいなくなってから自分で起きれなくて大変だったって教えてから、ハルは何故か張り切って俺を起こしにきてくれるようになった。自分で起きれなくなると困るって言った俺に、ハルは優しい笑顔でそうなってくれたら嬉しいって言ったんだ。
「じゃあ、改めておはよう、アキト」
「おはよ、ハル」
言いながらもついつい見つめてしまう俺に、ハルは楽しそうに笑っている。
「髪型もかっこいいし、服もすごい似合ってる。その服って…?」
「ああ、これは騎士団の儀礼用の軍服だよ」
うん、だと思ってた。これで私服だよって言われたらびっくりするよね。じゃなくて俺が聞きたいのはなんでそんな恰好をしてるのかって事なんだけどな。いやでも儀礼用って事は戦闘用のもあるって事?そっちも是非見てみたい。ついそんな事を考えていた俺に、ハルは優しく笑って口を開いた。
「今日は一つ大事な儀式があるんだ」
そうなんだと頷いた俺に、ハルは少し言い難そうにしながらも続けた。
「会場には入れないから遠くからになるんだけど…見学はできるから、来てくれる?」
「もちろん!」
そんな嬉しいお誘いをしてもらったら、即答でOKするよね。だってこんなに格好良いハルをじっくり見てて良いって言ってもらったようなものだからね。
俺の服装は冒険者衣装で良いと言われたから、バラ―ブ村で貰ったあのお気に入りのチュニックを着て身支度を済ませた。
「ハル、その服で朝ごはん食べるの?」
「そうだよ。…食堂に行ったら、きっと驚くと思うよ」
悪戯っぽく笑った顔があまりに以前のハルと同じで、俺は上機嫌で頷きながら立ち上がった。
この数日ですっかり馴染んでしまった食堂の入口前で、俺は言葉も無く立ち尽くしていた。見渡す限り全ての騎士が、ハルと同じ服を着てるんだよ。
この前差し入れを持ってきてくれた騎士も、魔法について教えてくれって突撃してきた騎士も、廊下でお菓子をくれた騎士も、本部に来た日に門番をしていた騎士も、皆ばっちりと騎士服を着てる。異世界っていうかファンタジーっていうか、とにかく非日常感がすごい。
「うわー壮観!」
「やっぱり驚いたね」
「おう、やっと来たか」
既に食事を始めていたケルビンも、団長だからか飾りの多い軍服を漢らしく着こなしている。
「二人とも、おはよう」
「ああ、おはよう」
「おはよ。ケルビンも軍服すごく似合ってるね」
「おう、ありがとな」
冒険者風の服かラフな私服ぐらいしか見た事がなかったけど、こういうかっちりとした服を着るとイメージが変わるんだな。
「そういう服を着てると、ちゃんと団長に見えるよ」
思わずこぼれた本音に、ハルがブ八ッと噴き出した。
「お前なぁ…まあいいか、ここ座れよ」
誘われるままに腰を下ろせば、今日の食事当番の騎士さんがいそいそと俺とハルの分の料理を運んできてくれた。
普通の騎士は列に並んで食事を受け取るから、俺もそれで良いって言ったんだけど断られたんだよね。団長と副団長、そして客人の分は食事担当者が運ぶものなんだって。ちなみにハルは今は役職無しなんだけど、元副団長だからか是非運ばせてくれって元部下の人たちから直談判されてたよ。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「いえ、これも私の仕事ですから」
運んできてくれて騎士さんにお礼を言えば、にっこりと笑みが返ってきた。
テーブルの上に置かれた大きなお皿に視線を向ければ、そこにはパンと野菜に果物、さらには焼いたお肉がどどんと並んでいる。
そうそう、騎士団では朝から普通に肉料理が出るんだ。ウィンナーとかハム程度ならまだ分かるけど、そうじゃなくてステーキみたいなのとかローストビーフみたいなのとか、とにかくがっつり肉料理が並ぶ。
最初はまあびっくりしたんだけど、あまりに美味しいからもう気にしない事にした。
「それで、今日の儀式って?」
「…ハロルド、まだ話してないのか?」
「話す時間がなかっただけだ」
呆れた顔のケルビンに、ハルはあっさりとそう返すと俺に向かって口を開いた。
「今日は俺の特別任務の任命式なんだよ」
今日は何をしようかなと考えながら起き上がると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
寝巻代わりにつかっているだぼっとした服だけど、どうせ俺に与えられた部屋まで訪問する人なんて、ハルとケルビン、先生にディエゴぐらいだ。そんな軽い気持ちで答えた俺は、ドアを開けたハルを見て息を飲んだ。
「おはよう、アキト」
いつもは無造作に下ろしているだけのふわっとした金髪が、片方だけ上げてセットしてある。片耳が見えているだけの変化で、驚くほどに男らしさが増している。
しかも着ている服がまたすごい。これぞファンタジーって感じの、かっちりした騎士団の服だ。立てえりの黒い上着には、きらびやかな金色の刺繍が所々に施されていて高級感が漂っている。腰の辺りはベルトできゅっとしぼられていて、くびれた腰が強調されている。
「…アキト?」
「………かっこいい」
見惚れていた俺がうっかり口にしたその言葉は、きっちりハルに聞こえてしまったみたいだ。ハルは嬉しそうに笑ってから、俺に近づいてくる。
「今日も起こすつもりだったのに、用意に手間取って…起こせなくてごめんね」
「え、いや、そんなの…」
ハルがいなくなってから自分で起きれなくて大変だったって教えてから、ハルは何故か張り切って俺を起こしにきてくれるようになった。自分で起きれなくなると困るって言った俺に、ハルは優しい笑顔でそうなってくれたら嬉しいって言ったんだ。
「じゃあ、改めておはよう、アキト」
「おはよ、ハル」
言いながらもついつい見つめてしまう俺に、ハルは楽しそうに笑っている。
「髪型もかっこいいし、服もすごい似合ってる。その服って…?」
「ああ、これは騎士団の儀礼用の軍服だよ」
うん、だと思ってた。これで私服だよって言われたらびっくりするよね。じゃなくて俺が聞きたいのはなんでそんな恰好をしてるのかって事なんだけどな。いやでも儀礼用って事は戦闘用のもあるって事?そっちも是非見てみたい。ついそんな事を考えていた俺に、ハルは優しく笑って口を開いた。
「今日は一つ大事な儀式があるんだ」
そうなんだと頷いた俺に、ハルは少し言い難そうにしながらも続けた。
「会場には入れないから遠くからになるんだけど…見学はできるから、来てくれる?」
「もちろん!」
そんな嬉しいお誘いをしてもらったら、即答でOKするよね。だってこんなに格好良いハルをじっくり見てて良いって言ってもらったようなものだからね。
俺の服装は冒険者衣装で良いと言われたから、バラ―ブ村で貰ったあのお気に入りのチュニックを着て身支度を済ませた。
「ハル、その服で朝ごはん食べるの?」
「そうだよ。…食堂に行ったら、きっと驚くと思うよ」
悪戯っぽく笑った顔があまりに以前のハルと同じで、俺は上機嫌で頷きながら立ち上がった。
この数日ですっかり馴染んでしまった食堂の入口前で、俺は言葉も無く立ち尽くしていた。見渡す限り全ての騎士が、ハルと同じ服を着てるんだよ。
この前差し入れを持ってきてくれた騎士も、魔法について教えてくれって突撃してきた騎士も、廊下でお菓子をくれた騎士も、本部に来た日に門番をしていた騎士も、皆ばっちりと騎士服を着てる。異世界っていうかファンタジーっていうか、とにかく非日常感がすごい。
「うわー壮観!」
「やっぱり驚いたね」
「おう、やっと来たか」
既に食事を始めていたケルビンも、団長だからか飾りの多い軍服を漢らしく着こなしている。
「二人とも、おはよう」
「ああ、おはよう」
「おはよ。ケルビンも軍服すごく似合ってるね」
「おう、ありがとな」
冒険者風の服かラフな私服ぐらいしか見た事がなかったけど、こういうかっちりとした服を着るとイメージが変わるんだな。
「そういう服を着てると、ちゃんと団長に見えるよ」
思わずこぼれた本音に、ハルがブ八ッと噴き出した。
「お前なぁ…まあいいか、ここ座れよ」
誘われるままに腰を下ろせば、今日の食事当番の騎士さんがいそいそと俺とハルの分の料理を運んできてくれた。
普通の騎士は列に並んで食事を受け取るから、俺もそれで良いって言ったんだけど断られたんだよね。団長と副団長、そして客人の分は食事担当者が運ぶものなんだって。ちなみにハルは今は役職無しなんだけど、元副団長だからか是非運ばせてくれって元部下の人たちから直談判されてたよ。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
「いえ、これも私の仕事ですから」
運んできてくれて騎士さんにお礼を言えば、にっこりと笑みが返ってきた。
テーブルの上に置かれた大きなお皿に視線を向ければ、そこにはパンと野菜に果物、さらには焼いたお肉がどどんと並んでいる。
そうそう、騎士団では朝から普通に肉料理が出るんだ。ウィンナーとかハム程度ならまだ分かるけど、そうじゃなくてステーキみたいなのとかローストビーフみたいなのとか、とにかくがっつり肉料理が並ぶ。
最初はまあびっくりしたんだけど、あまりに美味しいからもう気にしない事にした。
「それで、今日の儀式って?」
「…ハロルド、まだ話してないのか?」
「話す時間がなかっただけだ」
呆れた顔のケルビンに、ハルはあっさりとそう返すと俺に向かって口を開いた。
「今日は俺の特別任務の任命式なんだよ」
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